地質調査総合センター

令和8年(2026年)熊本地震の関連情報

令和8年(2026年)熊本地震の関連情報

2026年7月30日 開設

 令和8年7月28日16時27分に熊本県熊本地方でマグニチュード(M)7.1(気象庁暫定値)の「令和8年熊本地震」が発生しました。発震機構は東北東–西南西方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型で、この地域では一般的なタイプです。今回の地震では、熊本県宇城市・氷川町で震度7を観測するなど、広い範囲で被害が生じました。
 産総研地質調査総合センターでは、地震の発生を受けて、組織的な対応を取るため「緊急調査対応本部」を設置しました。地質調査総合センターでは、本ウェブサイトを通じてこの地震に関する研究情報を発信してまいります。
 第一報として、地震調査研究推進本部第433回地震調査委員会(臨時会)に提出した資料を基にした解説を掲載します(図1は一部改訂)。

布田川断層帯・日奈久断層帯の分布および構造区分と2026年熊本地震の本震・余震分布

活断層・火山研究部門
宮下由香里、吾妻 崇、堀川晴央、大上隆史

 産総研地質調査総合センターは、平成28年(2016年)熊本地震後に、文部科学省の委託業務として「平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査(代表:九州大学)」を分担して実施しました。地形、地質、古地震調査と採取した試料の年代測定結果に基づき、布田川断層帯・日奈久断層帯の古地震履歴を明らかにするとともに、日奈久断層帯の高野–白旗区間/日奈久区間境界および日奈久区間/八代海区間の改定案を示しました。
 図1は、活断層トレースと令和8年(2026年)熊本地震の本震・余震分布を重ねたものです。7月29日時点での余震分布は、高野–白旗区間と日奈久区間の西側に沿って分布しています。このことは、両区間が北西傾斜であることと整合的です。
 また、前出の委託業務の一環として、日奈久断層帯の3か所(甲佐町白旗山出、宇城市小川町南部田、八代市川田町西)でボーリング調査とトレンチ調査を、海域では音波探査データの再解析とボーリング調査を行いました。これらの結果、明らかになった古地震履歴(図2)と地質構造などに基づいて、日奈久断層帯の区間分けを見直す案を提案しました。

図1 布田川断層帯・日奈久断層帯の分布および構造区分と調査地点

図1 布田川断層帯・日奈久断層帯の分布および構造区分と調査地点
文部科学省研究開発局・国立大学法人九州大学(2019)の図1を一部改変・加筆。地形図は地理院地図(https://maps.gsi.go.jp/)に、活断層トレースは産業技術総合研究所の活断層データベース(https://gbank.gsj.jp/activefault/)に基づく。ただし、八代海区間および宇土半島北岸区間の活断層トレースは、それぞれ文部科学省研究開発局・国立大学法人九州大学(2019)、文部科学省研究開発局・国立研究開発法人産業技術総合研究所(2026/公表予定)に基づく。白矢印は、地震調査研究推進本部地震調査委員会(2013)による区間境界。本震の位置(星)は、国立研究開発法人防災科学技術研究所、気象庁、九州大学、鹿児島大学の波形データを用い、3次元速度構造モデル(Katsumata and Nishimiya, 2025)に基づいて決定した。

図2 日奈久断層帯の古地震履歴のまとめ

図2 日奈久断層帯の古地震履歴のまとめ
文部科学省研究開発局・国立大学法人九州大学(2019)の図212。縦軸は暦年較正年代、横軸は調査地を示す。産総研は、山出、南部田、川田町西、津奈木沖地点で調査を実施した。縦方向の黒実線は、地震調査研究推進本部地震調査委員会(2013)による区間境界、縦方向の赤線および赤一点破線は産総研が提案した区間境界。他地点の出所については、文部科学省研究開発局・国立大学法人九州大学(2019)を参照されたい。

2026年熊本地震の余震分布

活断層・火山研究部門
堀川晴央

 大地震に引き続いて生じる余震活動は、本震で破壊した領域を知る大きな手がかりとなります。これには、大地震が発生して間もない余震の分布を知ることが重要です。ここでは、2026年熊本地震の余震分布の解析結果を紹介いたします。
 解析の流れは
1)観測された地震記録から、PhaseNetモデル(Zhu and Beroza, 2019; Naoi et al., 2024)を用いて、P波やS波の到達時刻を個々の観測点で読み取る
2)多数の到達時刻の読み取り値に対して、PyOcto(Münchmeyer et al., 2024)を用いて、もっともらしい読み取り値の組み合わせを探し出す
3)前のステップで得られた読み取り値の組み合わせから、3次元速度構造モデル(Katsumata and Nishimiya, 2025)を使って正確に震源の位置を決める
という3つのステップを踏んで進めました。
 得られた結果を地図上に示したもの(図3a)と、断面をとったもの(図3b)とで示します。300個強の余震の位置が決まりました。
 地図上に示した結果を見ると、余震が北北東–南南西に並んでいることがわかります。赤い星の位置から始まった本震の破壊は、概ねこの余震分布の範囲まで広がったと考えられます。
 断面は、地図上に表示したときに見られる余震の並びに直行する方向にとり、4つのブロックに分けて検討しました(図3b)。断面をとった方向は、概ね北西–南東方向(正確に記すと、北から時計回りに125度の方向を正とする方向)です。断面図内の余震の並びを見ると、右上から左下に並んでいる傾向、つまり、北西に向かって余震が深くなる分布が全ての断面図で見て取れます。また、北北東側のA、Bという2つのブロックでは、余震の分布がより集中して分布していることがわかります。
 Bの断面にある本震の破壊開始点(星印)の深さは約15 kmで、余震分布の最深部にあたることが読み取れます。
 余震の深さ分布は、地震がどの深さまで起こりうるのかの手がかりとなります。この図からは、一番北北東側のAでは、他のブロックよりも余震が浅いところ(概ね10 kmまで)でしか起こっていないことが読み取れます。一方、他のブロックでは深さ15 km前後まで余震が広がっています。こうした違いが地震の起こり方とどう関係しているのかを調べるのが今後の課題の一つです。

図3 (a) 2026年熊本地震の本震(赤星)と余震(青丸)を地図上に示したもの(震央分布図)。(b) 2026年熊本地震の本震(赤星)と余震(青丸)の深さ方向の断面をとって示したもの。ブロックの位置は(a)を参照のこと。

図3 (a) 2026年熊本地震の本震(赤星)と余震(青丸)を地図上に示したもの(震央分布図)。
(b) 2026年熊本地震の本震(赤星)と余震(青丸)の深さ方向の断面をとって示したもの。ブロックの位置は(a)を参照のこと。

2026年熊本地震の震源周辺における応力場

活断層・火山研究部門
内出 崇彦

 産総研地質調査総合センターでは、地震発生に関わる地殻応力場の研究を進めており、当総合センターや他機関の成果を地殻応力場データベースにまとめています。Uchide et al. (2022)により求められた地殻応力場は、今回の令和8年熊本地震の横ずれ断層型の発震機構解によく合ったものでした(図4左)。かかっている応力により断層がずれ動きやすいかどうか(地震が発生しやすいかどうか)を示すスリップテンデンシーの値も、日奈久断層日奈久区間と、隣接する八代海区間では高く、断層がずれ動きやすい応力場だったことがわかります(図4右)。つまり、今回の令和8年熊本地震は、これまでの研究で知られていた応力場に合った形で発生したと言えます。

図4 (左)応力軸方位と(右)各活断層のスリップテンデンシー(Uchide <i>et al.,</i> 2022)。スリップテンデンシーの計算に用いた断層モデルは、防災科研J-SHISによる。

図4 (左)応力軸方位と(右)各活断層のスリップテンデンシー(Uchide et al., 2022)。
スリップテンデンシーの計算に用いた断層モデルは、防災科研J-SHISによる。

2016年熊本地震による地殻内せん断ひずみエネルギー変化との関係

活断層・火山研究部門
野田朱美

 地震が発生するには地殻内に蓄積したせん断ひずみエネルギーが必要であるため、地震発生メカニズムの理解のためには、地殻内せん断ひずみエネルギーの分布を明らかにすることが重要です。せん断ひずみエネルギーの増加は、断層をすべらせようとするせん断応力が平均的に増加することを意味しており、地震活動を促進すると考えられます。
 Noda et al. (2020) は、2016年熊本地震の断層モデルから計算した応力変化と背景応力場の情報を組み合わせることにより、2016年熊本地震によって地殻内に生じたせん断ひずみエネルギー変化の分布を推定しました(図5左列)。このせん断ひずみエネルギー変化の分布図に、2026年7月28日16:27に発生したMj7.1の地震(黄色の星印)と同日17:08のMj 6.1の地震(緑色の星印)の震央を重ねて表示しました(図5右列)。今回発生した地震は、2016年熊本地震によってせん断ひずみエネルギーが増加した領域(赤色)に位置しています。この対応関係は、2016年熊本地震によって地震の発生しやすさが高まったと考えられる領域で、今回の地震が発生した可能性を示唆しています。

図5 2016年熊本地震による地殻内せん断ひずみエネルギー変化と2026年熊本地震の関係
左列:2016年熊本地震による地殻内せん断ひずみエネルギー変化の分布(Noda <i>et al.,</i> 2020を改変)。地殻の有効摩擦係数μ_effを0.1と仮定して推定した結果を示す。赤がエネルギー増加、青がエネルギー減少を示す。
右列:左列の分布と2026年熊本地震の震央との比較。黄色と緑色の星印は、それぞれ2026/07/28 16:27 (Mj 7.1)と2026/07/28 17:08 (Mj 6.1)の地震の震央(気象庁一元化震源・暫定値)を示す。

図5 2016年熊本地震による地殻内せん断ひずみエネルギー変化と2026年熊本地震の関係
左列:2016年熊本地震による地殻内せん断ひずみエネルギー変化の分布(Noda et al., 2020を改変)。地殻の有効摩擦係数μ_effを0.1と仮定して推定した結果を示す。赤がエネルギー増加、青がエネルギー減少を示す。
右列:左列の分布と2026年熊本地震の震央との比較。黄色と緑色の星印は、それぞれ2026/07/28 16:27 (Mj 7.1)と2026/07/28 17:08 (Mj 6.1)の地震の震央(気象庁一元化震源・暫定値)を示す。

謝辞

防災科学技術研究所のHi-net 、気象庁、九州大学、鹿児島大学の観測点での地震波形データを利用しました。

文献

  • 地震調査研究推進本部地震調査委員会(2013)布田川断層帯・日奈久断層帯の評価(一部改訂),https://www.jishin.go.jp/main/chousa/13feb_chi_kyushu/k_11.pdf
  • Katsumata, A. and Nishimiya, T. (2025) Three-dimensional velocity structure model for hypocenter determination in and around the Japanese Islands. Earth, Planets and Space, 77, 115, doi:10.1186/s40623-025-02243-4.
  • 文部科学省研究開発局・国立大学法人九州大学(2019)平成28年度熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査 平成28〜30年度 成果報告書,https://www.jishin.go.jp/database/project_report/kumamoto_sogochousa/kumamoto_sogochousa-h28-h30/
  • 文部科学省研究開発局・国立研究開発法人産業技術総合研究所(2026/公表予定)活断層評価の高度化・効率化のための調査手法の検証 令和6年度成果報告書,https://www.jishin.go.jp/database/project_report/koudoka_kenshou/にて公表予定
  • Münchmeyer, J. (2024) PyOcto: A high-throughput seismic phase associator. Seismica, 3, doi:10.26443/seismica.v3i1.1130.
  • Naoi, M., Tamaribuchi, K., Shimojo, K., Katoh, S., and Ohyanagi, S. (2024) Neural phase picker trained on the Japan meteorological agency unified earthquake catalog. Earth, Planets and Space, 76, 150, doi:10.1186/s40623-024-02091-8.
  • Noda, A., Saito, T., Fukuyama, E., Terakawa, T., Tanaka, S., and Matsu'ura, M. (2020) The 3-D spatial distribution of shear strain energy changes associated with the 2016 Kumamoto earthquake sequence, southwest Japan. Geophysical Research Letters, 47, e2019GL086369. doi:10.1029/2019GL086369.
  • Uchide, T., Shiina, T., and Imanishi, K. (2022) Stress map of Japan: Detailed nationwide crustal stress field inferred from focal mechanism solutions of numerous microearthquakes. Journal of Geophysical Research: Solid Earth, 127, e2022JB024036, doi:10.1029/2022JB024036.
  • Zhu, W., and Beroza, G. C. (2019) PhaseNet: a deep-neural-network-based seismic arrival-time picking method. Geophysical Journal International, 216, 261–273, doi:10.1093/gji/ggy423.

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