令和6年(2024年)能登半島地震の関連情報

令和6年(2024年)能登半島地震の関連情報

2024年2月26日 更新
2024年1月3日 開設

 令和6年1月1日16時10分に石川県能登地方でマグニチュード(M)7.6(気象庁暫定値)の「令和6年能登半島地震」が発生しました。発震機構は北西―南東方向に圧縮軸を持つ逆断層型で、この地域では一般的なタイプです。今回の地震では、石川県の志賀町で震度7を観測するとともに、沿岸域では津波も観測され、広い範囲で被害が生じました。

 能登半島北東部では、2020年12月ごろから活発な群発地震が続いており、2021年9月16日(M5.1)2022年6月19日(M5.4)2023年5月5日(M6.5)にも局所的な被害を起こす地震が発生していました。今回の地震はこれらの地震の規模をはるかに上回る大地震でした。

関連する産総研の地質情報はこちら

第九報 2024年能登半島地震の緊急調査報告(陸域に出現した地表変状の現地調査) [2024年2月26日]

第八報 2024年能登半島地震に伴う斜面崩壊の崩壊箇所と地形・地質との関係(予察) [2024年2月16日]

第七報 能登半島地震で発生した能登半島北東部の斜面崩壊発生地域の地質概説 [2024年1月25日]

第六報 2024年能登半島地震の緊急調査報告(津波の浸水状況調査) [2024年1月25日]

第五報 能登半島北部沿岸域の構造図と令和6年(2024年)能登半島地震の余震分布 [2024年1月15日]

第四報 2024年能登半島地震の緊急調査報告(海岸の隆起調査) [2024年1月11日]

第三報 AIによる自動検測に基づく2024年能登半島地震の余震分布 [2024年1月4日]

第二報 長期的な隆起を示す海成段丘と2024年能登半島地震の地殻変動 [2024年1月4日]

第一報 [2024年1月3日]

地震発生域周辺の活断層

活断層・火山研究部門 宮下由香里・岡村行信・今西和俊・吾妻 崇

 産業技術総合研究所地質調査総合センターは、工業技術院地質調査所時代から、日本周辺海域における海域地質調査を実施してきました。とくに、日本海においては、1985年から15年間をかけて5万 km以上に達する測線で海底面以下の反射断面データを取得しました。さらに、2007年以降は、沿岸海域の活断層も調査してきました。これらのデータは、日本海における大規模地震に関する調査検討会(2014)で、最大クラスの津波断層モデルを作成する際に活用されました。

 ここでは、これらの知見をふまえて、能登半島周辺海域の活断層をみていきます。

 日本海における活断層の分布については、岡村(2019)にまとめられています。それによると、今回の地震が起こった海域は、富山湾から連続する富山トラフ(富山深海長谷)を境にして、活断層の分布の特徴が異なるとされています(図1)。

 富山トラフよりも西側、すなわち能登半島周辺では、半島北岸の5〜10 km沖に海岸線と平行な方向の活動的な逆断層が断続的に分布しています。それらは西から東へ、20 km前後の長さを持つ、門前沖セグメント、猿山岬沖セグメント、輪島沖セグメント、珠洲沖セグメントに区分されています(図2、図3)。すべての断層は南側が隆起する南傾斜の逆断層で、中新世の日本海拡大時に形成された正断層が再活動したものです。今回の地震は、これらの断層が活動した可能性があります。

 能登半島の東端より北東側の海域には、余震分布の北側に沿う断層(珠洲沖セグメントとその延長部の断層)と、余震分布の南東側に分布する断層があります(図1、図2)。余震分布の北側に沿う断層は、先に述べたように南傾斜ですが、余震分布の南東側に分布する断層は北西傾斜を示します。今回の地震の余震分布とこれらの断層面との正確な対応関係は、現段階では分かっていません。

 富山トラフより東側では、北東−南西から南北走向の活断層が密集して連続する断層の集中域が存在します。富山湾北東側の断層の北東延長部は、2007年中越沖地震を引き起こしました。佐渡島周辺の断層の集中域は、北方の青森県西方沖(図の範囲外)まで、約350 kmほど連続する長大な断層の集中域です。

図1 能登半島周辺海域の活断層と2024年1月1日の地震(オレンジ色の星)とその余震の震央分布.

図1 能登半島周辺海域の活断層と2024年1月1日の地震(オレンジ色の星)とその余震の震央分布.海域の紫色の活断層トレースは,岡村(2019)に,赤色の活断層トレースは,活断層データベースに基づく.基図は,20万分の1海底地質図及び日本シームレス地質図V2.震源は防災科学技術研究所Hi-netの自動震源処理結果(2024/1/1 00:00〜2024/1/2 08:59,深さ20 km以浅)で,メカニズム解は防災科学技術研究所のF-net解を示す.
余震分布の北側に沿う断層群は南傾斜,余震分布東部の南東側(富山トラフの文字がある付近)の断層は北西傾斜を示す.

図2 能登半島北岸沖の活断層と2024年1月1日の地震の震央(オレンジ色の星).

図2 能登半島北岸沖の活断層と2024年1月1日の地震の震央(オレンジ色の星).基図は,井上・岡村(2010)を一部改変.震源位置は防災科学技術研究所による自動震源位置.参考に,気象庁一元化カタログによる2007年3月25日能登半島地震(M6.9),2021年9月16日の地震(M5.1),2022年6月19日の地震(M5.4),2023年5月5日(M6.5)の震央を黒星、赤星,青星, 緑星で示す.

図3 能登半島の海陸シームレス地質図と震央の分布.

図3 能登半島の海陸シームレス地質図と震央の分布.基図は,井上ほか(2010)及び尾崎(2010).メカニズム解は防災科学技術研究所のF-net解を示す.震央は図2と同じ.

文献

    • 井上卓彦・岡村⾏信(2010)能登半島北部周辺 20万分の1海域地質図及び説明書.海陸シームレス地質情報集,「能登半島北部沿岸域」.数値地質図S-1,産総研地質調査総合センター,https://www.gsj.jp/data/coastal-geology/GSJ_DGM_S1_2010_01_b_sim.pdf
    • 井上卓彦・尾崎正紀・岡村⾏信(2010)能登半島北部域20万分の1海陸シームレス地質図及び地質断⾯図.海陸シームレス地質情報集,「能登半島北部沿岸域」.数値地質図S-1,産総研地質調査総合センター,https://www.gsj.jp/data/coastal-geology/GSJ_DGM_S1_2010_03_a.pdf
    • 日本海における大規模地震に関する調査検討会(2014) https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/daikibojishinchousa/
    • 岡村⾏信・⽵内圭史・上嶋正⼈・佐藤幹夫・森尻理恵・駒沢正夫・広島俊夫・宮崎純⼀(1994)20万分の1佐渡島南方海底地質図,地質調査所(現 産総研地質調査総合センター)
    • 岡村⾏信・⽵内圭史・上嶋正⼈・佐藤幹夫(1995)20万分の1佐渡島北方海底地質図,地質調査所(現 産総研地質調査総合センター)
    • 岡村行信・森尻理恵・土谷信之・佐藤幹夫・宮崎純一・山崎俊嗣・上嶋正人・木川栄一・石原丈実(1996)20万分の1粟島周辺海底地質図,地質調査所(現 産総研地質調査総合センター)
    • 岡村⾏信(2002)20万分の1能登半島東⽅海底地質図,産総研地質調査総合センター
    • 岡村⾏信(2007)20万分の1能登半島⻄⽅海底地質図,産総研地質調査総合センター
    • 岡村⾏信(2019)⽇本海における活断層の分布と今後の課題,地震第2輯,71,185-199.
    • 尾崎正紀(2010)能登半島北部20万分の1地質図及び説明書.海陸シームレス地質情報集,「能登半島北部沿岸域」.数値地質図S-1,産総研地質調査総合センター,https://www.gsj.jp/researches/project/coastal-geology/results/s-1.html

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