令和5年(2023年)10月鳥島近海の地震に関する情報



令和5年(2023年)10月鳥島近海の地震に関する情報

 鳥島近海では、2023年10月2日からまとまった地震活動が観測され、3日から6日にかけてマグニチュード(M)6.0を超える地震が4回発生しました。現時点での最大は5日に発生したM6.5の地震であり、八丈島八重根で30cmの津波が観測されました。さらに、9日の5時25分頃には、規模が小さく震源が決められないものの、太平洋側の広い範囲で津波が観測される地震が発生しました。

2023年10月鳥島近海の地震発生域付近の地質学的特徴

2023年10月23日 開設

活断層・火山研究部門 岡村行信・今西和俊

 伊豆-小笠原弧には伊豆大島から硫黄島まで約1200 kmの間に、数多くの活火山が形成されている。それらの活火山の背弧側には、正断層の活動によって沈降帯が形成されていることがあり、背弧リフトと呼ばれている(西村・湯浅、1991)。伊豆-小笠原弧では、地質調査所(現産業技術総合研究所地質調査総合センター)が1984-1989年に総合調査を、ハワイ大学が海底マッピング調査(1984年)およびマルチチャンネル反射探査(1987年)などを実施してきた。それらの成果の一つとして、『スミスリフト及び鳥島リフト海底地質図(Brown et al., 1988)』(図1)が出版されている。2023年10月鳥島近海の地震の震央はこの地質図の南縁付近に位置する。同地質図によると、震央は鳥島の南西沖に北北西-南南東方向の正断層群によって形成された鳥島リフトに含まれるように見える。リフトは東西両側の正断層の変位によって形成され(図2)、その内外には大小の火山が分布していることも示されている。今回の地震の震源メカニズム解は東北東-西南西方向に張力軸を持つ正断層型または横ずれ型であり、地質図に示される正断層群の特徴と調和的である。

図1 スミスリフト及び鳥島リフト海底地質図(Brown <i>et al.

図1 スミスリフト及び鳥島リフト海底地質図(Brown et al., 1988)の南部の拡大図と震央分布。
赤丸は気象庁一元化震源(2023/10/1~2023/10/8、M≧3、深さ0~150 km)でM6以上を太丸で示す。
10月9日は同日8時40分の気象庁発表資料に基づく。
青丸はUSGSの地震カタログ(2023/10/1~2023/10/9、M≧4.3、深さ0~20 km)の震央位置。
本図に示す地質図の範囲を左上の地図の赤枠で示す。海底地形はBecker et al. (2009)による。

図2 北緯30度付近の鳥島リフトを東西に横断する反射断面。位置は図1に示す。

図2 北緯30度付近の鳥島リフトを東西に横断する反射断面。位置は図1に示す。
リフトの東西両側に正断層が発達して、その間が沈降している。
リフト内には東への傾斜が下位層ほど大きくなる堆積層が観察でき、海底面にも断層変位が認められ、活断層であることを示唆している。

引用文献

  • Becker, J. J., D. T. Sandwell, W. H. F. Smith, J. Braud, B. Binder, J. Depner, D. Fabre, J. Factor, S. Ingalls, S-H. Kim, R. Ladner, K. Marks, S. Nelson, A. Pharaoh, R. Trimmer, J. Von Rosenberg, G. Wallaceand P. Weatherall (2009) Global Bathymetry and Elevation Data at 30 Arc Seconds Resolution: SRTM30_PLUS, Marine Geodesy, 32:4, 355-371.
  • Brown, G.・村上文敏・西村 昭・Taylor, B.・湯浅真人(1988)スミスリフト及び鳥島リフト海底地質図(20万分の1),海洋地質図 no.31,地質調査所.
  • 気象庁(2023)令和5年10月9日05時25分頃の鳥島近海地震について,
    https://www.jma.go.jp/jma/press/2310/09a/kaisetsu202310090840.pdf(2023年10月12日確認)
  • 西村 昭・湯浅真人(1991)伊豆・小笠原弧のスミスリフト-海洋性島弧における背弧リフトの形成の一例-,地球科学,45,333-344.

問い合わせ先

産総研地質調査総合センター