2014年 11月 14日西之島上空観察報告

 2014年11月14日,中日新聞社機(おおたか二世)および読売新聞社機(みらい)による西之島取材に同行し,上空から噴火活動を観察した.現地滞在時間は中日機が 10:45~11:34(観察者:中野俊),読売機が12:24~13:09(観察者:下司信夫),上空を旋回して目視観察および写真・ビデオ撮影を行った.

 海上保安庁10月16日観察報告と同じく火口は1ヶ所で(写真1),約1年前の噴火地点とほぼ同じ位置である.顕著な火砕丘が成長し,その頂部には明瞭な摺鉢状の火口が形成され,火口底中心部では赤熱したマグマヘッドが確認できた(写真2).火口では数秒から10数秒おきに火山灰を含む灰色~淡褐色の噴煙とともに,時折,最大径1mを超えるスパターを噴出するストロンボリ式噴火が継続しており,活発な噴火活動が継続している(写真3写真4).噴出の激しいときには,高さ100~200m程度までスパターが飛散し,その一部は赤熱していることが確認できた.火口から青白い火山ガスが放出されている時も確認できることがあった(写真2).雲底のため噴煙高度は不明だが,最大でも1,500m以下.

 溶岩流は火口から北側にのみ流出している.長さ1kmにも達する長い溶岩トンネルを形成して表面下を流動していると考えられ,先端はいくつにも分岐して溶岩流の海水への流入箇所は10か所以上である(写真5).枝分かれして海岸部に達している北西から北東海岸では海水と接触する部分では白色の湯気が激しく立ち上っている.溶岩流表面には赤熱した部分は認められないが,溶岩トンネル流下中の表面高温部は黒色,ある程度冷却した溶岩流の表面が赤褐色となっている(写真6).

 南側の海岸線では溶岩の新たな流出は認められない(写真7).波浪による海食によって,すでに数10m海岸線が後退している場所がある浸食された溶岩流先端部では塊状部が断崖をなし,それらの間には砂礫浜が形成している(写真8).礫浜の発達は,新島の海岸線のほぼ全域に認められる.

 中央部にある火砕丘の高さは優に100mを超え,中日新聞社機の操縦士によると460フィート.火砕丘の底径は400m程度,火口直径は数十mである.

 旧西之島は,南北約300m,東西約200mの領域が残存しており(写真9),10/16の海保観察時とほぼ同じである.目立った埋め立ては進行していない.中日機からの観察時にはなかったが,読売機からの観察時には旧島上で枯れ草の延焼が認められた(写真10).

今後の見通し

 1973-74年噴火と同様,直径1.2km程度の西之島火山の山頂火口内で噴火が継続しており,今回の噴火ですでにこの火口は埋積され,溶岩流は火口縁を越えて流出している.溶岩の流入により新たに陸地が拡大している北側は平坦な浅海が広がっている領域であることから,今後もしばらくは新島の拡大が続くだろう.

 火砕丘周辺は広く溶岩で覆われており,最も近い海岸線までは500m離れている.噴火活動に大きな変化がなくこのまま噴火が続く限り,噴火口付近への海水の進入によるマグマ水蒸気爆発の可能性はほとんどないだろう.海岸での溶岩流入部では小規模な爆発の可能性は常にあるが,現在の溶岩の流入量を考えるとその規模は極めて限定的.

  なお,以下の写真中の方位はおおよその方位を示し,正確ではない.

2014年11月14日、中日新聞社の社機に同乗して小笠原西之島火山の噴火活動を上­空から撮影。(YouTube 産総研チャンネル)

写真1:火口はほぼ島の中央に位置する1ヶ所のみ.周囲には濃色の海水変色域は認められない.(中日機,11:04撮影)

 

写真2:火砕丘の火口は直径数十m(黄色矢印の内側).火口内で灼熱したマグマ頂部(白矢印)を確認.青白い火山ガスを放出している.(中日機,11:26撮影)

 

写真3:火山灰混じりの噴煙と飛散するスパター.(読売機,12:49撮影)

 

写真4:スパターの着弾する火砕丘斜面.黄色矢印は溶岩トンネルの天井部に開いた穴からの火山ガス.(読売機,12:50撮影)

 

写真5:島の北部では十ヶ所以上で溶岩流が海水に接触し,さかんに湯気が上がる(黄色矢印).(中日機,11:01撮影)

 

写真6:溶岩トンネルから抜けた溶岩流出口(矢印の位置).(中日機,11:26撮影) 

 

写真7:島の南部では新たな溶岩流は確認できない.(中日機,11:32撮影) 

 

写真8:溶岩流先端が浸食・後退し,数m高の断崖になり(赤矢印),それらの間には礫浜が形成されている(青矢印).(中日機,11:02撮影)

 

写真9:残された旧島(2ヶ所).黒い筋は流動中の溶岩流で,左上の矢印地点で溶岩トンネルを抜け,旧島に乗り上げかかっている. (中日機,11:33撮影)

 

写真10:旧島上で観察された枯れ草の延焼.写真9の溶岩流先端から燃え広がった.12:58には鎮火していた.1が溶岩流末端,2の黒色部は焼け跡,3は延焼中の炎の先端.(読売機,12:40撮影)

 

 観察にあたり東京新聞・中日新聞社,および読売新聞社に便宜を図っていただいた.記して感謝します.

作成日:2014/ 11/ 19