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霧島山新燃岳の噴火情報

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霧島山新燃岳2025年噴火に関する調査結果

活断層・火山研究部門
更新:2025年7月17日
開設:2025年6月27日

 産総研 地質調査総合センター(GSJ)では霧島山新燃岳の2025年6月22日からの噴火に対応し、気象庁から送付された火山灰試料の観察を迅速に実施するとともに、6月26日から現地調査チームを派遣しました。

 今回の噴火に関する調査解析結果は、火山調査研究推進本部等へ随時報告するとともに、このページで紹介します。調査は、気象庁、現地関係者、他研究機関や大学等とも協力の上で進めております。なお、記載された内容は今後の調査研究の進展により修正・変更することがあります。

火山ガス観測のドローンから撮影された7月3日の火口の様子(噴煙が火口縁上5000 mまで上がった直後14時ころ。新燃岳東側上空より)

火山ガス観測のドローンから撮影された7月3日の火口の様子
(噴煙が火口縁上5000 mまで上がった直後14時ころ。新燃岳東側上空より)

目次

 

今回の噴火の概要

霧島山新燃岳では、2025年6月22日に2018年6月27日以来となる7年ぶりの噴火が発生し、その後も噴火は継続しています(7月16日現在)。地震回数や火山ガスの放出量も多い状態で経過しているため、活発な状態が続いていると考えられます。

噴出物構成粒子の特徴解析

7月2〜4日噴火の火山灰構成粒子の鉱物・ガラス化学組成(火山調査研究推進本部への提出資料より抜粋)

 産総研の現地調査で7月2〜4日に採取された火山灰に少量含まれる、マグマ物質の可能性がある新鮮な黒色〜暗褐色ガラス片(DG粒子)を電子線プローブマイクロアナライザで観察・分析したところ、光学顕微鏡でガラス質に見える粒子の内部に大量の微結晶が晶出していることがわかりました。また、含まれる鉱物・ガラスの化学組成は1716〜2018年噴火の噴出物とほぼ同じであることがわかりました。

7月2日の火山灰に含まれるDG粒子の反射電子像

7月2日の火山灰に含まれるDG粒子の反射電子像。
Plは斜長石、Pxは輝石(直方輝石)、Gはガラス(赤い波線で囲んだ部分)。
DG粒子は流動的に伸ばされた形状をしており、光学顕微鏡下においてはガラス質に見えるが、
断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果,内部には微細な結晶が多数晶出しており、ガラスは僅かであることが判明した。

7月2〜4日噴火の火山灰(火山調査研究推進本部への提出資料より抜粋)

 産総研の現地調査で7月2〜4日に採取された火山灰粒子の観察の結果、構成粒子は基本的には6月22日以降の火山灰と同様でしたが、7月2日にはマグマ物質の可能性がある新鮮な黒色〜暗褐色ガラス片が増加しました。しかし、7月3日と4日には減少しています。今後はマグマ物質の可能性がある粒子の解析と、火山灰構成粒子の時間変化の把握が必要です。

7月2日に採取された新燃岳火山灰に含まれる光沢を有し発泡痕をもつ黒色〜暗褐色のガラス片(DG)。

7月2日に採取された新燃岳火山灰に含まれる光沢を有し発泡痕をもつ黒色〜暗褐色のガラス片(DG)。
(a):流動的に伸ばされた形状をしている。(b):斜長石斑晶を包有している。
(c):赤色酸化した岩片(矢印)を包有している。(d):直方輝石 斑晶を包有している。(e):試料に含まれる DG 粒子の典型例。

6月22日噴火の火山灰(火山調査研究推進本部への提出資料より抜粋)

 気象庁により6月22日に西諸県郡高原町にて採取された試料が産総研に送付され、顕微鏡を用いて構成粒子の種類やその割合を解析しました(写真2)。
 今回の噴出物を構成する粒子のほとんどは黒色や灰色の岩片からなり、これらは主に新燃岳の火口内を埋めている2011年や2018年の溶岩の破片だと考えられます。また、少量の白色岩片や白色物質で充填された黒色や暗褐色のガラス片も見られ、これらは火山体の地下や近傍の変質部に由来するものだと考えられます。今後も新燃岳の動向を注視して、噴出物の構成粒子の変化を見ていくことが重要です。

2025年6月22日に気象庁により宮崎県西諸県郡高原町において採取された火山灰の構成粒子写真。

2025年6月22日に気象庁により宮崎県西諸県郡高原町において採取された火山灰の構成粒子写真。
(略称については資料「新燃岳2025年6月22日噴火の火山灰構成粒子の特徴」を参照)

現地調査報告(速報)

 継続する噴火の規模の把握や噴出物の変化を追うために、産総研地質調査総合センターでは6月26日から現地に職員を派遣し、噴出物の分布調査や採取を実施しています。各地点における降灰量の定面積定量結果は噴火による全降灰量の推定のための基礎データとなります。
 また、7月3日〜7日には、ドローンを用いた火山ガス観測を実施しました。その結果、観測時の火山ガスはマグマから脱ガスした後に地下水や熱水系の影響も受けた活動の特徴を持つことがわかりました。ドローンによる火口周辺の撮影により新しい火孔の位置も明らかになり、7月6日の飛行中には爆発的噴火も捉えられました。

7月6日撮影 (火山調査研究推進本部への提出資料より抜粋)

ドローンで観察した7月6日13時57分頃の爆発的噴火の様子(山頂火口南縁上空より

ドローンで観察した7月6日13時57分頃の爆発的噴火の様子(山頂火口南縁上空より)。
(a)-(j) 13 時 57 分 00 秒から 13 時 58 分 30 秒にかけての 10 秒ごとのスナップショット。
山頂火口南東部の火孔から黒色の噴煙が噴き出し、斜面に沿って横へ流れていったあと上昇していく様子が目前で捉えられた。

7月4〜5日撮影(火山調査研究推進本部への提出資料より抜粋)

写真判読により推定した新しい火孔の位置(青線:7月3日まで活動していた火孔列、赤線:7月4日に新たに形成された火孔列、赤丸:新しい単独の火孔の位置)基図にGoogle Mapを使用

写真判読により推定した新しい火孔の位置。
(青線:7月3日まで活動していた火孔列、赤線:7月4日に新たに形成された火孔列、赤丸:新しい単独の火孔の位置)
基図にGoogle Mapを使用。

写真判読により推定した新しい火孔の位置(青線:7月3日まで活動していた火孔列、赤線:7月4日に新たに形成された火孔列、赤丸:新しい単独の火孔の位置)

ドローン観測による7月5日11時頃の火口の様子。
火口外の南斜面に周囲よりやや高温(約50℃以上)が認められる(黒丸)。 上:可視画像、下:熱赤外画像。
※火口=直径約800mで火口内溶岩が埋めている領域、火孔=噴煙が出ている局所的な噴出口、として用語を使い分けています。

7月3日撮影

新湯三叉路での降灰状況(16時ころ)新湯三叉路での降灰状況(16時ころ)

新湯三叉路での降灰状況(16時ころ)


6月26〜28日撮影

新燃岳の噴煙。2025年6月28日17時37分頃撮影

新燃岳の噴煙。2025年6月28日17時37分頃撮影

降灰調査の様子(6月26日)

降灰調査の様子(6月26日)

高千穂河原での降灰状況(6月28日)

高千穂河原での降灰状況(6月28日)

火山調査研究推進本部資料

産総研から火山調査研究推進本部に提出した資料を公開しました。

関連情報

産総研 地質調査総合センターでは、霧島火山に関して、以下の関連情報を公開しています。

 

更新履歴

  • 2025年7月17日:「今回の噴火の概要」、「噴出物構成粒子の特徴解析」、「現地調査報告(速報)」を更新。
  • 2025年7月15日:「火山調査研究推進本部資料」1件を掲載。
  • 2025年7月14日:「火山調査研究推進本部資料」2件を掲載。
  • 2025年7月10日:「火山調査研究推進本部資料」1件を掲載。
  • 2025年7月8日:「火山調査研究推進本部資料」3件を掲載。
  • 2025年7月7日:「火山調査研究推進本部資料」2件を掲載。
  • 2025年7月4日:「現地調査報告(速報)」を更新。
  • 2025年7月3日:「今回の噴火の概要」、「噴出物構成粒子の特徴解析」、「現地調査報告(速報)」、「関連情報」、「火山調査研究推進本部資料」を掲載。
  • 2025年7月2日:「火山調査研究推進本部資料」を掲載。
  • 2025年6月27日:ページ開設、「火山調査研究推進本部資料」を掲載。

問い合わせ先

産総研地質調査総合センター