阿蘇火山中岳2021年

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阿蘇火山中岳2021年噴火情報
The 2021 eruption of the Nakadake crater, Aso Volcano

活断層・火山研究部門
更新:2021年11月12日
開設:2021年10月22日

 2021年10月20日午前11時43分、熊本県の阿蘇火山中岳で噴火が発生しました。噴火に伴い火砕流が発生したほか、火口から南東方向に降灰がありました。
 産総研地質調査総合センターでは、噴火規模の推定や噴火推移把握のため、噴出物の分布等の現地調査等を他研究機関等と協力して実施しました。また、噴出物の構成物の特徴の解析を実施しました。
 今回の噴火に関する調査解析結果は、火山噴火予知連絡会等へ随時報告するとともに、本ウェブサイトを通じて一元的に発信して参ります。なお、記載された内容は今後の調査研究の進展により修正・変更することがあります。

今回の噴火概要
Summary of the eruption

 阿蘇火山の中岳第一火口で2021年10月20日11時43分(気象庁発表)に噴火が発生しました。噴火に伴い多数の火山岩塊が火口周辺に投出され、また火砕流が主に北側斜面および南西斜面にそって流下しました。気象庁によれば噴煙は火口上約3500mまで上昇し、南~南東方向に流れました。その後、11時50分ごろまでには噴煙は灰白色のものになりました。火口北側に堆積した噴出物からは、13時過ぎまで白色の蒸気が上昇しているのが目撃されました。
 なお、気象庁によれば今回の噴火に先立つ10月14日にも小規模な噴火が発生しています。

噴出物の分布調査
Field survey of the tephra distribution

 産総研地質調査総合センターでは、噴火翌日の10月21日および22日に現地に職員を派遣し噴出物の分布調査を実施しました。調査は、熊本大学・防災科学技術研究所等と協力して実施しました。産総研では、火口から南東約4㎞以遠の地域で、火山灰の堆積状況などを調査しました(写真1)。こうして取得される各地点における降灰量の定面積定量結果は、噴火による全降灰量の推定のための基礎データとなります。火山灰が降下したすべての地域での迅速な調査が必要となるため、「降灰調査データ共有スキーム」に従って、複数の研究機関で共同して調査を実施しています。

写真1 阿蘇火山中岳第一火口から南東に約4.2km離れた高森町色見地区での降下火山灰調査状況。降灰量の定量のため、道路面上で1メートル四方の堆積物を採取している。2021年10月21日午前撮影。

写真1 阿蘇火山中岳第一火口から南東に約4.2km離れた高森町色見地区での降下火山灰調査状況。
降灰量の定量のため、道路面上で1メートル四方の堆積物を採取している。2021年10月21日午前撮影。

Photo1 Field survey of the ash-fall deposit at Shikimi area of Takamori Town, ~4.2 km SE of the Aso Nakadake crater. GSJ scientists are collecting volcanic ash from an area of one meter square on the road pavement for quantitative analysis of ash deposit. AM of October 21, 2021.

写真2 阿蘇火山中岳第一火口から東南東に約4.9km離れた高森町日ノ尾峠南方での火山灰調査状況。降灰分布限界付近では少量の火山灰がまばらに堆積している。2021年10月21日撮影。

写真2 阿蘇火山中岳第一火口から東南東に約4.9km離れた高森町日ノ尾峠南方での火山灰調査状況。
降灰分布限界付近では少量の火山灰がまばらに堆積している。2021年10月21日撮影。

Photo 2 Field survey of the ash-fall deposit at south of Hinoo Pass, Takamori Town, ~4.9 km ESE of the Aso Nakadake crater. A GSJ scientist is observing the spots of volcanic ash on the road pavement. AM of October 21, 2021.

写真3 阿蘇火山中岳第一火口から南東に約5km離れた高森町内での降下火山灰調査状況。凝集した火山灰粒子が斑点状に堆積している。2021年10月21日撮影。

写真3 阿蘇火山中岳第一火口から南東に約5km離れた高森町内での降下火山灰調査状況。
凝集した火山灰粒子が斑点状に堆積している。2021年10月21日撮影。

Photo 3 Aggregated volcanic ash at Shikimi area, Takamori Town, ~5 km SE of the Aso Nakadake crater. AM of October 21, 2021.


噴出物構成物解析
Component analysis of the ejecta

 現地調査によって採取した火山灰試料(写真1)を、噴火翌日の10月21日午後に茨城県つくば市の産総研に持ち帰り、顕微鏡等を用いて火山灰構成粒子の観察を行いました。火山灰は、細粒の粒子が凝集して大きな粒になっており(写真4)、湿った環境での噴火を示唆しています。この火山灰試料を水洗・乾燥させたのちふるい分けし、光学顕微鏡を用いて構成粒子の種類やその割合を解析しました。

 今回の噴出物を構成するほとんどの粒子は、灰色~白色の岩石片からなります(写真5)。その特徴は、これらの粒子が火山内部で高温の火山ガスや熱水と反応し変質した火山岩の破片であることを示しています。そのような岩石は阿蘇中岳の火口底に広く分布していることから、今回の噴出物は中岳の火口底の岩石や堆積物が爆発で吹き飛ばされたものと考えられます。高温・溶融状態のマグマが放出され急冷却してできた火山ガラスからなる粒子はほとんど含まれません。

写真4 解析に使用した阿蘇中岳2021年10月20日火山灰(未洗浄)。阿蘇中岳第一火口から南東に約4.2㎞の地点で採取した。細粒粒子が凝集して大きな粒になっている。

写真4 解析に使用した阿蘇中岳2021年10月20日火山灰(未洗浄)。
阿蘇中岳第一火口から南東に約4.2㎞の地点で採取した。細粒粒子が凝集して大きな粒になっている。

Photo 4 The ash of the October 20 ejecta collected at ~4.2 km SE from the Aso Nakadake crater (before washing). Fine particles are aggregated to form larger particles.

写真5 阿蘇中岳2021年10月20日噴出物の構成粒子の顕微鏡写真。灰色~白色の熱水変質岩片がその大部分を占める。少量含まれる褐色~黒色火山ガラス粒子にも、熱水変質鉱物が付着している。これらの特徴から、今回の噴火の噴出物の大部分は、中岳火口底の岩石や堆積物が破砕されたものであると考えられる。

写真5 阿蘇中岳2021年10月20日噴出物の構成粒子の顕微鏡写真。灰色~白色の熱水変質岩片がその大部分を占める。
少量含まれる褐色~黒色火山ガラス粒子にも、熱水変質鉱物が付着している。これらの特徴から、
今回の噴火の噴出物の大部分は、中岳火口底の岩石や堆積物が破砕されたものであると考えられる。

Photo 5 The microphotograph of the ash grains of the October 20 ejecta. Majority of the grains are fragments of hydrothermally-altered volcanic rocks with grayish – whitish color. The volcanic glass fragments with brownish – black color are partially covered by hydrothermal minerals.


阿蘇火山中岳の最近の活動履歴
Recent eruptive history of the Nakadake crater

 阿蘇火山中岳は、記録が残る平安時代以降活発な噴火活動を続けています。
 最近では、2014年11月末から2015年5月初めにかけて赤熱したマグマが直接噴出する噴火がみられました。その後、2015年9月14日および2016年10月8日には比較的規模の大きな爆発が発生し、火口周辺に火砕流が流下したほか、広い範囲に降灰がありました。その後2017年から18年にかけて比較的静穏な状態でしたが、2019年以降小規模な噴火が度々発生しています。

火山噴火予知連絡会資料

阿蘇火山中岳に関して、産総研から火山噴火予知連絡会に提出した資料を公開しました。

関連情報

産総研・地質調査総合センターでは、阿蘇火山に関して、以下の関連情報を公開しています。


更新履歴

  • 2021年11月12日 火山噴火予知連絡会資料を追加
  • 2021年10月27日 写真1のキャプションを一部修正
  • 2021年10月22日 開設

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産総研地質調査総合センター