2014年 6月 3日西之島上空観察報告

  読売新聞社社機(みらい:JA560Y)による西之島取材に同行し、上空から火山活動を観察した。調査日時は2014年6月3日,現地滞在時間は10:58 から11:30 の約30 分間。上空を旋回して肉眼観察および写真・ビデオ撮影を行った(観察者:中野 俊)。

  海上保安庁5月21日観察報告によれば「北側の火口」、「新たな火口」、「南側の火口」の3つの火口が示されている。このうち5月21日観察時では「南側の火口」はすでに活動が認められていなかった。今回の上空観察で確認できた火口は2個所で、これらは海上保安庁5月21日観察報告の「北側の火口」と「新たな火口」に相当する。5月21日と同様に「南側の火口」はすでに活動を停止していると思われる。

  5月21日の海上保安庁に観察報告と比較して、噴火の様子に大きな変化はない。噴煙は北西方向に流れ、噴煙高度は約1000m(操縦士による)。

  全域に広がる溶岩流のうち、南側に流れたローブが活発で、海水と接触する部分では白色の水蒸気が激しく立ち上っており、現在も高温部が海水と接触していると判断できる。この溶岩流表面は黒色で、赤色部など、特に高温部は認められない。チャネルを形成して表面下を流動していると考えられる。

  中央部にある火砕丘の高さは約90m(操縦士による)。その頂部付近に「北側の火口」。ここでは5ないし20秒おきに間欠的に(一部は連続的に)灰褐色噴煙を噴出しているが、遠望では噴煙のみしか確認できないことが多く、スパターはわずかに確認できた程度である。

  「新たな火口」では青白く見える噴煙が火口から連続的に噴出する。火口内には赤熱部分がわずかにのぞく。中央部にある火砕丘の南側基部付近に位置し、現在流出中の溶岩流はこの火口から流出している。

  海水変色域は旧島側に広がり、新噴出物側ではわずかである。また、1973-74年噴出物は、昨年12月の陸繋後、新溶岩に覆われはじめたが、その後は新溶岩にほとんど覆われることがなく、わずかに残っている状態が続いている。

観察にあたり読売新聞社に便宜を図っていただいた。記して感謝します。

(平成26年 6月4日火山噴火予知連絡会への報告を一部加筆修正した)

 

 2014年6月3日、読売新聞社の社機に同乗して小笠原西之島火­山の噴火活動を上空から撮影。(YouTube 産総研チャンネル)

 

写真1:東南東上空より見る西之島全景。噴煙高度は約1000m。手前幅2-300mほど、活動中の溶岩流が達する海岸線から大量の水蒸気が立ち上る。海水変色域は旧島側(北側海岸)に広がる。

 

写真2:南東上空より見る西之島全景。旧島部分の海岸は変色海域に囲まれ、新噴出物(新火山)の周囲には変色域は少ない。

 

写真3:2つの火口(奥の「北側の火口」と手前の「新たな火口」)と左下に流出中の溶岩流(黒色部)。「新たな火口」から溶岩流が流出し、火口内には赤熱部が窓状に見られる。「北側の火口」からは間欠的(5-20秒間隔)にあるいは連続的に灰褐色噴煙が吹き出し、時折、スパターが確認できる(中央上の黒い点)。

 

写真4:海水と接触する溶岩流(西之島南南東の海岸部)。常に立ち上る水蒸気からこの溶岩流が現在も流出中(前進中)と推定。

 

写真5:「新たな火口」から流れ出す溶岩流が海岸に達し、激しく水蒸気を上げる。

 

写真6:中央部に形成された火砕丘。国土地理院によると3月22日には約71mの標高だったが、航空機の高度計を見たパイロットの判断では高さ90m程度という。「北側の火口」はこの裏にある。

 

 

 

作成日:2014/ 6/ 5