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高精度岩石放射年代測定
  火砕流堆積物などの噴出時期から活動履歴を解明する

深部地質環境研究センター  長期変動チーム
松本  哲一

   ある火山の周辺に分布する溶岩流や火砕流堆積物が今からどのくらい前に地上に噴き出したかを正確に知ることは、火山の噴火活動履歴を明らかにする際に、また、今後の噴火活動を予測をする際に必要不可欠である。

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図  産総研が開発した新たなK-Ar年代測定法の方が1〜10万年前 (10〜100ka) に噴出した第四紀火山岩の年代を従来の商業ベースの依頼分析よりも正確かつ精密に測定可能なことを示す比較図。


   今から数万年前以内に噴出した火山噴出物については、天然に存在する元素の中で特定の同位体が放射壊変する現象を利用した放射年代測定法の1つである炭素-14 (14C) 法によって正確な年代 (年齢) が求められてきた。しかし、数万〜数10万年前の噴出物については、14C法のような適当な年代測定法が存在しなかった。火山の寿命は100万年を越える場合もあるので、この空白部分をカバーする新たな分析手法を開発しなければ、火山の活動履歴を正確に議論することはできない。
   産総研は、数十万年前よりも古い火山噴出物に対して有効な放射年代測定法のカリウム〜アルゴン (K-Ar) 法について、1万年前の噴出物でも正確な年代データが得られるような新たな分析手法の開発を行なった。その結果、図に示したように、今までのK-Ar法 (現在も商業ベースの分析機関で実施中) では火山層序と矛盾したり未来 (マイナス) の値が得られてしまった1〜10万年前 (10〜100ka) の溶岩・火砕流試料についても正確かつ精密なデータを得ることができた。この新手法と従来法の大きな違いは、試料ごとにわずかに異なる初生40Ar/36Ar比 (溶岩等が冷却・固化する際に内部に取り込んだArの同位体組成: 今までは現在の大気の値を代用) を安定同位体比の38Ar/36Ar比から推定する点である。新たなK-Ar法と14C法を併用することによって、ほとんどすべての火山噴出物の年代を正確に求めることが可能となった。

   Figure Comparison between K-Ar ages calculated by our new age derivation procedure and those calculated by the conventional procedure for the late Quaternary volcanic products in Kisho-Ontake Volcano, Central Japan. The samples dated have been erupted repeatedly over the past 100 ka (100,000 years ago). Our new procedure is one of the solutions to get appropriate age information for late Quaternary volcanic products whose K-Ar ages calculated by the conventional process give insufficient age information. Error bars indicate 1σ uncertainty level.

up: 2004年3月16日