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現地調査 (速報) / 霧島山新燃岳2011年噴火

産総研・地質調査総合センター (GSJ) は、1月26日から現地調査チームを派遣し、主に宮崎県内で噴出物の堆積量や分布、噴出物の構成粒子等の観察を行っています。調査にあたっては、現地各自治体、気象庁のご協力をいただいております。

目次

現地調査

2011年1月26日〜27日までの霧島山新燃岳の総噴出量は約7千万トン

2011年2月1日

ポイント
  • 霧島山新燃岳周辺で、噴出物の降下地域のほぼすべてにおいて現地調査を実施。
  • 現地調査110地点で噴出物を採取し、重量を計測。
  • 今回噴出した噴出量 (約7千万トン) は、1959年噴火の噴出量の約9倍に相当。
概 要

独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 野間口 有】(以下「産総研」という) 霧島火山緊急調査対策本部【本部長 栗本史雄】は、霧島山新燃岳周辺で現地調査を実施し、1月27日午後から30日にかけて、鹿児島県・宮崎県内の噴出物が降下した地域で現地調査を実施し、地域内の約110地点で噴出量を見積もった。

その結果、最も大きな活動であった1月26日〜27日の噴火の総噴出量は、約7千万トン見積もられた。この噴出量は1959年噴火の噴出量の約9倍に達する。

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霧島山新燃岳噴火 1月26日〜27日の噴出物の等重量線。 画像を拡大する
産総研、気象庁、財団法人電力中央研究所、日本工営株式会社による調査データを編集。
大きな○は都市、小さな○は1月27日午後から30日にかけて調査した地点を示す。

背景・経緯

霧島山新燃岳では、2011年1月19日にマグマ水蒸気噴火が発生、1月26日午後からはより規模の大きな噴火を続け、周辺地域に多量の火山灰が降下するなど被害が深刻化しつつある。産総研では諸機関と協力し、噴火活動推移把握のための調査を継続している。

研究の内容

産総研は、1月26日の噴火活動の拡大以降、噴出物の調査を主目的とする調査チームを派遣し、27日午後から30日にかけて、鹿児島県・宮崎県内の噴出物到達地域のほぼすべての地域で、噴出物量の現地調査を実施した。調査した地域は、南北約80km東西約70kmの範囲内で、これら範囲内の約110地点で噴出物の重量を計測した。現地調査は、気象庁、財団法人電力中央研究所、日本工営株式会社の調査チームと協力して行なった。

また現地調査の結果に加え、気象庁や報道各社による火口周辺の空撮映像から、火口周辺における噴出物の堆積量 (厚さ) を推定した。
これら火口から数km以上離れた地域における現地調査と、火口近傍の空撮による推定を総合し、今回の噴火の中で最も大きな火山活動である26日〜27日の噴火の総噴出量を見積もった結果、総噴出量は約7千万トンであった。この噴出量は1959年噴火の噴出量の約9倍に達する。そのうち、比較的人口の多い、火口から約7km離れた都城市御池付近から、日南海岸までの陸上部に堆積した火山灰の総量は、約400万トンと見積もられた。

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等重量線--面積相関図とそれから求められる噴出量 画像を拡大する

今後の予定

産総研では、気象庁等の関係諸機関との協力のもと、引き続き現地調査及び噴出物の解析を行い、噴火活動の把握と推移予測に向けた地質情報の発信をする予定である。

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2011年1月26〜27日の現地調査の様子 その2

2011年2月1日

霧島火山新燃岳の噴火は、2011年1月26日より連続噴煙となり、風下ではかな りの降灰が予想された。 噴火の実態を調査するため産総研は1月27日より30日まで職員 4名を現地に派遣し、火山近傍から遠方は太平洋沿岸までの100以上の地点で試 料採取及び観察を行った。 これらの調査から、噴出物の総量および分布範囲を 把握し、得られた試料の分析を進めている。

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高千穂河原付近。最大こぶし大の軽石が降灰面の上に散在。 →画像を拡大

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高千穂河原付近。約18cmの降下堆積物が積雪の上に堆積。最下部の黒い部分は細粒で19日の火山灰かもしれない (雪で湿っている)。 その上は最大3cm大の軽石が主体で細粒物は少ない。上部は細粒火山灰が混じる。松葉などの植物片が目立って混じる。 →画像を拡大

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鹿児島着定期便より。2011年1月27日15時41分の爆発的噴火の後、高い噴煙硬度が継続。現地では南東側に大量の降灰。爆発音の後、鳴動が1時間以上継続。 →画像を拡大

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都城駅周辺の降灰状況。大部分が27日朝までに降ったものという。約4-5mmの火山灰が堆積するが、細粒物よりも中粒-粗粒砂サイズの火山灰が卓越。 →画像を拡大

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1月28日都城市東霧島にて。南下するにつれ火山灰は粗く厚くなる。一定の面積から火山灰を採集している。 →画像を拡大

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都城市高崎町。27日までの降灰 (砂) はほとんどなく、細粒火山灰のみがうっすらと堆積。中央部を濡れティッシュで拭き取る。 →画像を拡大

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高原町皇子原公園。27日までに降った数mm程度の軽石片 (噴石) が散在。軽石片の下に火山灰はなく、軽石片の上を28日の細粒火山灰が被う。この時点で降灰中。 →画像を拡大

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高原町御池北の国道223号。ここより南は通行止め。道路面には細粒火山灰は少なく、2cm大の軽石が大量に散在。28日の降灰域はここよりも北。 →画像を拡大

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都城市毘砂丸。27日までの降灰域の主軸のやや北。軽石片が目立つ。表層は雨で湿っている。 →画像を拡大

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2011年1月26〜27日の現地調査の様子

2011年1月28日

  • 26日午後から27日にかけての活発な噴火では、大量の軽石が噴出し、風下の広い範囲に降下・堆積しました。新燃岳から南東約3kmの高千穂河原付近では、数cm〜10cm大の軽石からなる火山礫が、厚さ約15cm堆積しているのを確認しました。
  • 都城駅付近では、27日夜までに火山灰が厚さ約5mm堆積していることを確認しました。28日午前の調査では、新燃岳から東南東方向に最も多量に降下・堆積していることが分かりました。

1月27日午前に鹿児島空港からみた新燃岳の噴煙
1月27日午前に鹿児島空港からみた新燃岳の噴煙。南東 (画面右側) にむかって火山灰混じりの噴煙が流れている。飛行機の尾翼右上の最も高い山は韓国岳 (標高1700m)。
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27日昼 新燃岳南東、高千穂河原付近のテフラの堆積状況。
27日昼 新燃岳南東、高千穂河原付近のテフラの堆積状況。
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2011年1月26日午後〜27日午前に霧島新燃岳から噴出した軽石質の火山礫。
2011年1月26日午後〜27日午前に霧島新燃岳から噴出した軽石質の火山礫。
27日昼ごろ、新燃岳火口から南東に約3km離れた霧島市高千穂河原付近にて採取。
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火山灰の定期的な採取・調査

調査の目的・概要

産総研では長期化する新燃岳の噴火活動の観測を、地元自治体の協力を得て行なっております。2月24日以降は、宮崎県都城市、高原町の協力を得て、それらの地域内の21ヶ所において、3月9日からは鹿児島県霧島市の協力を得てさらに霧島市内で5ヶ所の地点における降灰量調査が開始しました。試料は各自治体から毎週送っていただいております。今後は、宮崎県小林市、えびの市の協力を得て、観測点を充実させていく予定です。

新燃岳は2011年1月26日から27日にかけて軽石噴火を行いました。その後、1月28日から1月29日にかけて連続的に火山灰を放出する活動を行ない、新燃岳東側の宮崎県高原町を中心とする地域に火山灰を降下させた。1月29日以降は、2月3日ごろまでは爆発的な噴火が度々発生し、火山礫を伴う火山灰の放出が続きました。2月4日以降の噴火頻度は徐々に少なくなりましたが、3月以降でも、週に1〜2回程度は噴火しております。

設置風景
都城市山田町での設置状況
都城市山田町での設置状況
都城市庄内町での設置状況
都城市庄内町での設置状況

写真のようなペール缶を各地点において降灰調査を行っています。

各観測期間毎の降灰量

採集した試料は乾燥して秤量した後、各地点ごとに保存します。秤量の値を基に総降灰量を求めます。

現地から送られてきた火山灰試料
現地から送られてきた火山灰試料 →画像を拡大

地図内の黄色四角の点が観測点です。噴出量は概算の速報値です。今後の研究の進展にしたがって変更される可能性がありますが、週に1〜10万トンオーダの火山灰が噴出していることがわかります。

2011年3月10日〜3月17日の降灰
2011年3月10日〜3月17日の降灰 →画像を拡大

2011年3月3日〜3月10日の降灰
2011年3月3日〜3月10日の降灰 →画像を拡大

2011年2月25日〜3月3日の降灰
2011年2月25日〜3月3日の降灰 →画像を拡大

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上空からの調査

2011年2月3日 海自ヘリで新燃岳の観測を行いました
「火口内溶岩」は全体に平らになり、はっきりとした火口が見当たらない。灰混じり噴煙は2ヶ所 (火口内溶岩中央と南東側) から。白色噴気は兎の耳〜火口東側が顕著。あとは火口内溶岩と火口の境から。本当にフライパンで焼いてるパンケーキのよう。
南西上空から新燃 中岳
南西上空から新燃 中岳
西上空から新燃火口内溶岩
西上空から新燃火口内溶岩
南西上空から高千穂
南西上空から高千穂
南西上空から新燃火口内溶岩
南西上空から新燃火口内溶岩
東上空から新燃東上空から火山灰堆積状況
東上空から新燃東上空から火山灰堆積状況
南東上空から火口内溶岩と火口縁の高度差
南東上空から火口内溶岩と火口縁の高度差
南東上空から新燃東側の3筋の暗色帯
南東上空から新燃東側の3筋の暗色帯
南東上空から新燃 中岳 噴煙
南東上空から新燃 中岳 噴煙

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