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沖縄本島に漂着した軽石の状況(第1報)
Status and impacts of pumice rafts around Okinawa Island(Part 1)

活断層・火山研究部門
開設:2021年10月22日

 沖縄本島の本部半島や北部国頭村における漂着軽石の状況の現地調査を行いました(写真1)。調査は2021年10月18日、19日に実施しました。本部半島の北部や国頭村の東部の海岸には、漂着した軽石が厚く堆積していましたが、その沖合にも複数の比較的小さな軽石いかだが18~19日にも着岸しつあるのが観察できました(写真2、3)。

 漂着した軽石の多くは、長径3mm~3cm程度のものがほとんですが、10cmを超えるようなものも含まれています。最大では長径25cmほどのものも含まれていました。海面に漂う層状の軽石の厚さは、波打ち際では吹き寄せられて10cmほどの厚さ(写真4)であり、少し沖合を漂うものは3~5cmほどの厚さでした。ただし海面下の水中を漂う軽石も少なからず認められます(写真5)。

 浜辺に打ち寄せられた軽石を引き潮の時に観察すると、前浜のリッジからランネルにかけて高潮位に打ち上げられたものが厚く堆積して、それより下位は薄く、波打ち際で再び厚いといった分布をしています(写真6)。

 海面を覆うような多量な軽石が漂着すると、浅層の海水を冷却水などに利用している発電所や製鉄所、船舶の燃焼機関などには障害が起こると予想されます。実際すでに南西諸島では、今回の軽石漂着後に漁船の運行の停止やフェリーの運休などが発生しています。一旦浜に定置した軽石も潮位の変化や暴波時の高波で再流出することが懸念されること、衛星写真では、さらに沖合に大きな軽石いかだが確認されますので、海岸への多量の軽石の漂着はしばらく続くでしょう。そのため、被害の拡大や長期化が予想されます。

写真1 10月18日、沖縄県今帰仁村ウッパマビーチにて積み上がった漂着軽石の観察を行う産総研研究者。背後の海面にも多数の軽石が浮遊し漂着を続けていた。

写真1 10月18日、沖縄県今帰仁村ウッパマビーチにて積み上がった漂着軽石の観察を行う産総研研究者。
背後の海面にも多数の軽石が浮遊し漂着を続けていた。

Photo 1 AIST researcher observing pumice being deposited at Uppama Beach in Nakijin Village, Okinawa Prefecture on October 18. In the background, many pumice clasts can be seen on the surface of the sea that continue to drift ashore.

写真2 2021年10月18日午後の沖縄県今帰仁村ウッパマビーチに漂着した漂流軽石。約1300km離れた福徳岡ノ場からおよそ2ヶ月かけて漂着した。

写真2 2021年10月18日午後の沖縄県今帰仁村ウッパマビーチに漂着した漂流軽石。
約1300km離れた福徳岡ノ場からおよそ2ヶ月かけて漂着した。

Photo 2 Pumice raft reaching the shore at Uppama Beach, Nakijin Village, Okinawa Prefecture, on the afternoon of October 18, 2021. It took about two months to drift 1300 km from Fukutoku-Oka-no-ba.

写真3  沖合のリーフ沿いに堰き止められていた500平方メートルほどの軽石いかだ。10月19日沖縄県国頭郡国頭村楚洲の伊江川河口付近にて。

写真3 沖合のリーフ沿いに堰き止められていた500平方メートルほどの軽石いかだ。
10月19日沖縄県国頭郡国頭村楚洲の伊江川河口付近にて。

Photo 3 A pumice raft of about 500 square meters was observed to have been blocked along the offshore reef.October 19, near the mouth of the Ie River in Sosu, Kunigami Village, Okinawa Prefecture.

写真4 波打ち際付近に吹き寄せられた漂流軽石。沖縄県国頭村伊部海岸10月19日。写真右上に軽石を観察している研究者が小さく写っている。

写真4 波打ち際付近に吹き寄せられた漂流軽石。沖縄県国頭村伊部海岸10月19日。
写真右上に軽石を観察している研究者が小さく写っている。

Photo 4 Pumice raft washing ashore near Ibu Beach, Kunigami Village, Okinawa Prefecture on October 19. An AIST researcher is shown in the upper right of the photo.

写真5 海面下を浮遊する軽石。中央の軽石は直径約5cm。沖縄県国頭村伊部海岸10月19日。GIF動画は再生速度25%のスローモーション。

写真5 海面下を浮遊する軽石。中央の軽石は直径約5cm。沖縄県国頭村伊部海岸10月19日。
GIF動画は再生速度25%のスローモーション。

Photo 5 Slow motion GIF video with a playback speed of 25% of pumice clasts floating below the surface of the sea. The pumice in the center is about 5 cm in diameter. October 19, Ibu Beach, Kunigami Village, Okinawa Prefecture.

写真6 高潮位時に打ちあげられた軽石が厚く堆積している。沖縄県国頭村伊部海岸10月19日。

写真6 高潮位時に打ちあげられた軽石が厚く堆積している。沖縄県国頭村伊部海岸10月19日。

Photo 6 Pumice clasts deposited at high tide have formed thick accumulations on beaches at the northern tip of the main island of Okinawa. October 19, Ibu Beach, Kunigami Village, Okinawa Prefecture.

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産総研地質調査総合センター