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衛星画像による海底噴火の観測
 ー高性能光学センサ (ASTER) による南硫黄島付近の福徳岡ノ場で発生した海底火山噴火の観測についてー

地質情報研究部門 地質リモートセンシング研究グループ
主任研究員   浦井  稔

asterで見た福徳岡ノ場の海底噴火
図  2005年7月5日午前10時11分に観測されたASTERの可視近赤外画像。

   ASTERのバンド1、2、3から得られた画像をそれぞれ青、緑、赤に割り当てて表示した。植生は赤く、海は黒く見える。変色海水は青く、漂流物は白く見える。ASTERデータの権利は経済産業省に帰属する。

   2005年7月2日に南硫黄島付近の福徳岡ノ場で発生した海底火山噴火を観測するため、資源・環境観測解析センターは高性能光学センサ (ASTER) の緊急観測を実施し、7月5日に同海底火山付近の画像を取得しました。

   地質調査総合センターがこの画像を解析した結果、南硫黄島北東約5kmの海上に直径5km程度の変色海水を確認しました。また、その中心付近に直径約1kmのやや濃度の濃い変色海水を確認しました。噴火に伴う浮遊物 (漂流物) と変色海水は南硫黄島を迂回するように反時計周りに流れ、同島から同島の南南西40kmの範囲に、海面に漂う幾つかの筋状の噴出物および変色海水として確認されました。

   右図は、2005年7月5日午前10時11分に観測された南硫黄島を含むASTERの可視近赤外画像 (疑似カラー) です。画像右上に明るく見えるのが南硫黄島です。南硫黄島の右上に見える青い部分、および、画像中央から下に見える青い部分は変色海水、画像中央から下に見える白い筋は漂流物です。

   これまで海底火山の監視は主に海上保安庁や海上自衛隊の航空機によって実施されてきました。今回の結果は、ASTER観測が広範囲に広がる海底噴火の状況を把握する上で、極めて有効な観測手段であることを示しています。特に、観測機材の乏しい発展途上国や遠隔地にある海底火山の観測にはきわめて有効であると考えられます。

ASTER

   経済産業省が開発し、米国NASAなどと協力して1999年12月に打ち上げられたTerra衛星に搭載された地球観測センサです。可視から熱赤外域を合計14バンドで観測できます。16日に最低1回ずつ朝と夜の観測が可能ですが、雲が掛かっている場所は観測できません。資源・環境観測解析センターはASTERを使って世界の火山を定期的に観測し、地質調査総合センターはその画像をデータベース化して公開しています (http://www.gsj.jp/database/vsidb/image/ )。

変色海水

   火山活動に伴って海中に流出する火山発散物中の成分と海水の接触により生じた、ケイ酸・アルミニウム・鉄を含む微細な懸濁浮遊物によって着色された海水のことです。白・黄・緑・褐色・茶褐などの色に変色します。(小坂, 1991)

up: 2005/7/14