「2016年12月28日茨城県北部の地震(Mj 6.3)」の現地調査報告

2017年1月11日  作成

2017年1月12日  開設

活断層・火山研究部門  粟田泰夫・吾妻  崇

 2016年12月28日に茨城県北部を震源とするMj(気象庁マグニチュード)6.3(暫定値)の正断層型の地震が発生して、高萩市では最大震度6弱を観測しました(気象庁、2016)。翌29日に国土地理院が公表した干渉SARの緊急解析結果(国土地理院、2016)を受けて、2017年1月5日に地表地震断層に関する現地調査を実施しました。

その結果、干渉SARによって捕らえられたNW-SE方向の地殻変動の不連続線に沿って、約2.5 km区間の4地点において水平伸張を伴う地表地震断層が出現し、道路や橋梁などの構造物が破損したことが確認できました(図1、2の地点1〜4)。また、それらの地点における構造物の破損状況から、今回の地震以前にも同様の地表地震断層が出現していたことが推定できました。今回の地震およびそれより前の変位を合わせた水平伸張量として、最大で29 cmを計測しました(図3)。

2016年茨城県北部の地震による干渉SARの解析結果と同地震に伴う地表地震断層(地点1〜4)および断裂(地点5〜7)の出現が確認された地点。図1:2016年茨城県北部の地震による干渉SARの解析結果と同地震に伴う地表地震断層(地点1〜4)および断裂(地点5〜7)の出現が確認された地点。
干渉SARの解析結果は国土地理院による(http://www.gsi.go.jp/BOUSAI/H28-ibaraki-earthquake-index.html)。

図2 2016年茨城県北部の地震に伴う地表地震断層(地点1〜4)および断裂(地点5〜7)の確認地点。図2 :2016年茨城県北部の地震に伴う地表地震断層(地点1〜4)および断裂(地点5〜7)の確認地点。
水平伸張量は、地点2、3および4では今回の地震より前の変位を含む。
また地点1では、今回の地震に伴う変位量のみが正しく計測できた。地形基図は地理院地図を使用。

図3 地点2において計測できた今回の地震およびそれより前の変位による水平伸張量の分布。図3:地点2において計測できた今回の地震およびそれより前の変位による水平伸張量の分布。
A:E-W方向の測線における水平伸張量の分布。道路に沿って計測した個々の箇所での伸張量(白丸)と測線の西端から東に向かって積算した量(黒丸)を示す。
いずれも今回の地震およびそれよりより前の変位を合わせた量。矢印は今回の地震による伸張量とそれ以前の変位による伸張量を区別して計測できた箇所。
B:今回の地震による伸張量(白丸)とそれ以前の変位による伸張量(赤丸)の比較。
いずれも測線に沿って積算した量を示す。

今回の地震とほぼ同じ場所では、東北地方太平洋沖地震の発生直後の2011年3月19日にもMj 6.1の地震が起こっています。この2011年茨城県北部の地震の干渉SARの解析結果(山中ほか、2011)に基づけば、同地震による地殻変動の範囲や規模は今回の地震によるものとほぼ同じです。したがって地点1〜4では、2011年と2016年の2回の茨城県北部の地震に伴って同じ場所に同じ規模の地表地震断層が出現した可能性があります。

なお、2011年4月4日に実施した現地調査(吾妻、2011)では、新小山橋の西側の橋台付近において橋梁と道路が破損していることを確認していましたが、盛り土の不等沈下によるものと解釈し、それが地表地震断層によるものとは認識できませんでした。今回は、地すべりや不等沈下によるものと解釈できないような地形の傾斜方向と不調和な開口断裂に注意して、地表地震断層の調査をしました。

地点1:持山集落の南東約200 mの地点では、持山川南西岸の舗装道路を斜めに横切って、3条の開口断裂群からなる幅6 mの断層帯があらわれました(写真1-1)。断層の走向はN40°Wで、西側および中央の断裂ではそれぞれ5 cmおよび6 cmの水平伸張が計測できました。これらの新しい開口断裂は、土砂などに充填された古い開口断裂の一部に沿って出現しています(写真1-2)。ただし、ここでは、今回より前の変位量を正確に計測することができませんでした。

写真1-1:持山の南東方の舗装道路を斜めに横切る開口断裂群(矢印)。北西方向を見る。(地点1)写真1-1:持山の南東方の舗装道路を斜めに横切る開口断裂群(矢印)。北西方向を見る。(地点1)

写真1-2:写真1-1の断裂の拡大写真。土砂に充填された古い開口断裂の一部に沿って今回の地震に伴う新しい開口断裂があらわれた。(地点1)写真1-2写真1-1の断裂の拡大写真。土砂に充填された古い開口断裂の一部に沿って今回の地震に伴う新しい開口断裂があらわれた。(地点1)

地点2:県道22号の新小山橋付近では、橋梁の西側約70m区間にわたってNNW-SSE走向の開口断裂群があらわれるとともに、東西両側の橋台付近では水平伸張によって橋梁の伸縮継手が引き伸ばされていました(写真2-1)。この地点でも、一部の構造物の破損箇所では、今回の地震以前にもほぼ同じ箇所が同じ規模で変位していたことが確認できました(図3b、写真2-2、2-3)。これらの断裂などによる今回の地震およびそれより前の変位を合わせた水平伸張量は、橋梁を含めた東西170m区間の道路に沿って積算すると29 cmに及び、変位が集中する箇所は西側の橋台付近でした(図3a)。

写真2-1:新小山橋西側の県道22号線を横切る開口断裂群(矢印)。東北東方向を見る。(地点2)写真2-1新小山橋西側の県道22号線を横切る開口断裂群(矢印)。東北東方向を見る。(地点2)

写真2-2:写真2-1付近の路面にあらわれた断裂の拡大写真。補修された古い開口断裂に沿って今回の地震に伴う新しい開口断裂があらわれた。(地点2)写真2-2写真2-1付近の路面にあらわれた断裂の拡大写真。
補修された古い開口断裂に沿って今回の地震に伴う新しい開口断裂があらわれた。(地点2)

写真2-3:新小山橋の欄干に見られるアルミニウム製伸縮継手の水平伸張によるずれ。変色および擦痕の腐食の違いから、新旧の2時期において変位が生じたことがわかる。(地点2)写真2-3新小山橋の欄干に見られるアルミニウム製伸縮継手の水平伸張によるずれ。
変色および擦痕の腐食の違いから、新旧の2時期において変位が生じたことがわかる。(地点2)

地点3、4:新小山橋の南約400mの林道では、2地点においてN20°E方向に延びる断裂などが確認できました。このうち地点4の舗装路面には、今回の地震より前にも水平伸張を伴う古い開口断裂が存在していたことが確認できました。道路沿いのガードレールは、地点3では3cm、地点4では5cm、それぞれ水平伸張による変形を受けており、これは今回の地震より前の変位を含む量と考えられます。

地点5、6、7:加老の北西方から若栗にかけての3地点では、道路を横切ってN-SないしNNW-SSE走向に延びる開口断裂が認められました。いずれも開口量は数mmです。このうち、地点7の周辺では、急斜面に沿った道路の舗装路面において、地すべり性と考えられる道路と平行に伸びる開口断裂が多数認められました。しかし、これら3地点にあらわれた断裂が地表地震断層あるいはそれに関連するものであるかどうかは不明です。また、今回の地震より前にも開口断裂が出現していたかどうかも不明です。

引用文献

吾妻崇(2011)海溝型巨大地震に誘発された内陸活断層地震の緊急調査.AFERC NEWS,No.23, 1-7.

気象庁(2016)「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第80報)-平成28年12月28日21時38分頃の茨城県北部の地震-」http://www.jma.go.jp/jma/press/ 1612/28a/kaisetsu201612282345.pdf(最終確認日2017年1月10日)

国土地理院(2016)茨城県北部の地震に関する情報.http://www.gsi.go.jp/BOUSAI/H28-ibaraki-earthquake-index.html(最終確認日2017年1月10日)

山中雅之・野口優子・鈴木啓・宮原伐折羅・石原操・小林知勝・飛田幹男(2011)衛星合成開口レーダーを用いた平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震に伴う地殻変動の検出.地理院時報,No.122,47-54.

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