第五報 能登半島北部沿岸域の構造図と令和6年(2024年)能登半島地震の余震分布

活断層・火山研究部門 岡村行信・佐脇泰典・内出崇彦・宮下由香里

能登半島北部沿岸海域の構造図

 能登半島北部沿岸海域で取得したエアガン震源の反射断面とブーマー音源の反射断面を用いて、活断層の断層分布図(暫定版)を作成しました(図1)。
 図1の赤線及び図2の赤矢印は最終氷期(約2万年前)以降に活動したことがほぼ間違いない断層で、能登半島の北岸に沿って連続しています(図1)。反射断面上でも変位量が大きく(図2の赤矢印)、いずれも南東側に傾斜する逆断層です。能登半島の西部では断層の走向が、半島の海岸に沿って南南西に変化しますが、そこの反射断面では約2万年前の浸食面に20 m以上の垂直変位が観察でき(図2、N3)、垂直方向の平均変位速度は千年で1m以上であると推定されます。その南西側には2007年能登半島地震の地震断層が分布します。
 図1の青線及び図2の青矢印は、活動時期が明確ではありませんが、第四紀に活動した可能性がある南東傾斜の逆断層です。赤線の断層よりは長さも短く(図1)、累積変位量はかなり小さいと考えられます(図2の青矢印)。
 青線の断層と赤線の断層との間隔は、広いところで6-8 kmです。

図1 能登半島北部沿岸海域の構造図(暫定版)。井上・岡村(2010)に加筆

図1 能登半島北部沿岸海域の構造図(暫定版)。井上・岡村(2010)に加筆

図2 能登半島北岸沖の反射断面。L127、131、135はエアガン音源、その他はブーマ音源の断面。位置は図1に示す

図2 能登半島北岸沖の反射断面。
L127、131、135はエアガン音源、その他はブーマ音源の断面。位置は図1に示す

能登半島北部沿岸海域の構造図と令和6年能登半島地震の余震分布

 図1に示した能登半島北部沿岸海域の構造図(暫定版)に令和6年能登半島地震の余震分布を重ねて示しました(図3)。比較のため、2007年能登半島地震と今回の地震の余震分布を図4に示します。また、断面図を図5に示します。
 震源決定は、AIによる自動検測に基づく2024年能登半島地震余震の初期震源・検測値データ(期間:2024年01月01日16時~01月03日12時 JST)と、気象庁一元化震源による2007年能登半島地震の余震分布(2007年03月25日 00時~07月03日 00時 JST)について、hypoDD (Waldhauser and Ellsworth, 2000)による同時相対震源決定を行いました。2007年の一元化震源については、深さ0~30 km、経度136.4°E~137.0°E、緯度37.0°N~37.4°N、Mj>=0.5の範囲で抽出しました。図4の左図、右図はそれぞれ、2007年、2024年のイベントの震源を示しており、色で深さを示しています。比較のために、灰色のプロットで、それぞれ期間外のイベントの震央を示しました。メカニズム解はそれぞれ、本震のF-net解に対応します。
 図1、図2、図3の反射断面L127、L131、L135は、それぞれ、図5のK-K’、O-O’、S-S’断面付近に相当します。3次元分布の検討は今後進める予定ですが、現段階では、これらを含む図5のK-K’断面以東の断面図において、北東―南西方向に連続して分布する「最近約2万年前以降に活動している活断層」付近から、南東に傾斜する余震分布が認められます(図3、図5)。
 また、断面図B-B’〜E-E’の浅い部分の地震は、2007年の震源断層とその南側の断層に対応しているように見えますが、深い部分の地震は、2007年の余震分布とは異なる分布を示します(図4)。今回の余震分布からは、能登半島最西端周辺においては、傾向として「南北走向・東傾斜」の面的構造が確認できます(図5)。

 以上をまとめると、今回の能登半島地震の際に主に滑ったと思われる断層は、全体的には北東-南西走向の南東傾斜です。一方、最西端においては、余震の面的構造が変化しており、断層面の走向や傾斜が変化している可能性があります。

【謝辞】

気象庁による一元化震源および検測値データ、防災科学技術研究所のF-netメカニズム解を使用しました。解析には相対震源決定法hypoDD (Waldhauser and Ellsworth, 2000)を使用しました。図の描画には、GMT6 (Wessel et al., 2019)およびPyGMT v0.10 (Tian et al., 2023)を使用しました。

図3 能登半島北部沿岸海域の構造図(暫定版)と令和6年能登半島地震の余震分布

図3 能登半島北部沿岸海域の構造図(暫定版)と令和6年能登半島地震の余震分布

図4 平成19年(2007年)能登半島地震(左)と令和6年能登半島地震(右)の余震分布

図4 平成19年(2007年)能登半島地震(左)と令和6年能登半島地震(右)の余震分布

図5 令和6年能登半島地震の余震分布の断面図

図5 令和6年能登半島地震の余震分布の断面図

文献

能登半島北部沿岸海域の構造図

能登半島北部沿岸海域の構造図と令和6年能登半島地震の余震分布

  • Tian, D., Uieda, L., Leong, W. J. et al. (2023) PyGMT: A Python interface for the Generic Mapping Tools (v0.10.0). Zenodo. doi: 10.5281/zenodo.8303186
  • Waldhauser, F. and Ellsworth, W. L. (2000) A double-difference earthquake location algorithm: Method and application to the northern Hayward fault, California. Bulletin of the Seismological Society of America, 90, 1353-1368, doi:10.1785/0120000006
  • Wessel, P., Luis, J. F., Uieda, L., Scharroo, R., Wobbe, F., Smith, W. H. F., & Tian, D. (2019) The Generic Mapping Tools version 6. Geochemistry, Geophysics, Geosystems, 20, 5556–5564, doi: 10.1029/2019GC008515

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