2023年2月6日に発生したトルコ南部の地震(Mw 7.8、 Mw 7.5)について

第三報 トルコ南部の地震の揺れを気象庁の震度で見てみる

活断層・火山研究部門 堀川晴央

 2月6日にトルコ南部のシリアとの国境近くで発生した大地震に伴い、3月1日現在でトルコとシリア両国を合わせた死者が5万人を超えるなど、甚大な被害が生じたことが報道されています。この甚大な被害は強い地震の揺れによる建物の倒壊が要因と考えられます。
 この揺れの強さを示す指標の1つに「震度」があります。震度は通常いくつかの段階に区分けされたもの(震度階級)を使って表します。1996年より、日本の気象庁は強震計(地震計の一種で、強い揺れの記録に注力した地震計)の記録から震度を算出しています。
 米国地質調査所(United States Geological Survey)のウェブサイト(https://earthquake.usgs.gov/)では、世界中で起きた大きな地震の揺れの分布を推定した結果が公開されていますが、米国で用いられている震度階級(改正メルカリ震度階級)が使われています。これは日本の震度階級とは異なるため、今回の地震の推定結果を見ても、その揺れの強さをイメージしにくい面があります。そこで、トルコ内務省災害緊急事態対策庁(AFAD)のウェブサイト(https://tadas.afad.gov.tr/)で公開されている強震計の記録を使って、日本で使われている震度階級を計算してみました。
 地震が発生した周辺の地形を見ておきます(図1)。左側の図は標高を色の違いで示したものです。右側の図は陰影図と呼ばれ、地表面の凸凹を見やすくしたものです。
いずれの図にも、2月6日の1時17分(UTC)に発生した1つめの大地震(米国地質調査所によるとマグニチュードは7.8)や10時24分(UTC)に発生した2つめの大地震(米国地質調査所によるとマグニチュードは7.5)の破壊が始まったと推定される位置を星印で示しています。このほか、左側の図では、地表に現れた地震断層(地面のずれ)の位置(Reitman et al., 2023)を白い線で示し、右側の図では余震の位置を黒丸で示しました。
 左側の図を見ると、1つめの大地震の破壊が始まった位置を示す星印の近くから北東方向の山岳域と南南西方向の平野域の両側に地震断層が地表に現れていることがわかります。また、右側の図を見ると、1つめの大地震の破壊が始まったと推定される位置から北東方向と南南西方向の両方に、余震が線状に伸びていることが読み取れ、この分布は地表地震断層の分布とよく合います。これらのことから、1つめの大地震はこの星印から始まって両側に破壊が広がったと考えられます。
 地面の揺れは、その地点の地盤の良し悪し等々の影響を受けます。とくに平野域の地下は地盤が悪いことが多いのです。さらに今回の場合、揺れのもとである本震の破壊がこの平野域にも及んでいると考えられることは前に述べたとおりで、南南西側の平野域は強烈な地震動に襲われたと予想されます。
 気象庁の震度階級を計算した結果を図2に示します。この図を見ると、震度6弱以上の強い揺れが平野域に集中し、長さ150 km近くにわたって分布していることがわかります。気象庁の震度階級関連解説表(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/shindo/kaisetsu.html)を参照すると、震度6弱の揺れでは耐震性の低い木造住宅への被害が出始めるとされています。ただし、この被害に関する記述は、あくまでも日本の木造住宅を対象としたもので、トルコの建物にそのまま当てはまるものではありません。ここでは、日本で同様の地震が起こったとしたら、建物被害が生じうる揺れが150 km近くにわたって広がったという点を指摘するのみに留めます。
 少し細かく見ていくと、南西側のアンタキヤの周辺は震度6強と殊に強い揺れに見舞われたことがわかります。気象庁震度階級関連解説表を参照すると、震度6強の揺れでは、耐震性の低い鉄筋コンクリート造りの建物で倒壊するものが出始めるとされています。一方、アンタキヤの北西側にあたるイスケンデルン付近で観測された揺れは震度5強と少し小さいように見えますが、地震記録が得られている観測点は地盤がよいとされており、地盤がよくない市街地での揺れはもっと強かった可能性があります。今回の大地震の破壊が始まった地点に近いカフラマンマラシュの周辺では震度5弱から6強の揺れが観測されています。

図1 (左)トルコ南部で発生した地震の震源域を含む地域の標高分布。標高データはSRTM+(Tozer et al.,2019)を使用。白い太線はReitman et al. (2023)による地表地震断層の位置。青の▲は被害が報じられている都市。(右)同じ範囲の標高の陰影図に余震の震央(●)を重ねたもの。震源データはトルコ内務省災害緊急事態対策庁(AFAD)のサイト(https://deprem.afad.gov.tr/home-page)で公開されているものを使用した。ここでは、1つめの大地震発生から24時間以内に発生し、かつ、震源決定に用いた観測点が8点以上のものを表示している。

図1 (左)トルコ南部で発生した地震の震源域を含む地域の標高分布。標高データはSRTM+(Tozer et al.,2019)を使用。白い太線はReitman et al. (2023)による地表地震断層の位置。青の▲は被害が報じられている都市。
(右)同じ範囲の標高の陰影図に余震の震央(●)を重ねたもの。震源データはトルコ内務省災害緊急事態対策庁(AFAD)のサイト(https://deprem.afad.gov.tr/home-page)で公開されているものを使用した。
ここでは、1つめの大地震発生から24時間以内に発生し、かつ、震源決定に用いた観測点が8点以上のものを表示している。

図2 1つめの大地震の揺れの震度階級の分布。計算に使用した地震波形データはトルコ内務省災害緊急事態対策庁(AFAD)のサイトから入手した。計測震度の計算では、記録長が100秒以上のものだけを用い、100秒以上150秒未満の観測点を◇、150秒以上の観測点を○で示した。観測点の色の違いは震度の違いを示し、各色に対応する震度を地図の下のカラーバーにて示した。

図2 1つめの大地震の揺れの震度階級の分布。計算に使用した地震波形データはトルコ内務省災害緊急事態対策庁(AFAD)のサイトから入手した。
計測震度の計算では、記録長が100秒以上のものだけを用い、100秒以上150秒未満の観測点を◇、150秒以上の観測点を○で示した。
観測点の色の違いは震度の違いを示し、各色に対応する震度を地図の下のカラーバーにて示した。

参考情報

  • Reitman, N.G., Briggs, R.W., Barnhart, W.D., Thompson Jobe, J.A., DuRoss, C.B., Hatem, A.E., Gold, R.D. and Mejstrik, J.D. (2023) Preliminary fault rupture mapping of the 2023 M7.8 and M7.5 Türkiye Earthquakes. DOI: 10.5066/P985I7U2
  • Tozer, B., Sandwell, D.T., Smith, W.H.F., Olson, C., Beale, J.R., and Wessel, P. (2019) Global bathymetry and topography at 15 arc sec: SRTM15+. Earth Space Sci., 6, p.1847–1864. DOI: 10.1029/2019ea000658

問い合わせ先: 産総研地質調査総合センター