2005.3.29 スマトラ沖地震・津波情報

2017年 3月10日(旧活断層研究センターWebサイトより転載)
2005年 3月31日更新
2005年 3月29日開設

3月29日の地震は余震か?誘発された地震か?

 3月29日(日本時間)の地震は、昨年12月26日の地震に発生したM9.0の震源の東隣で発生しました。Mが12月よりひとまわり小さいこと、震源が近いことから、昨年の地震の余震とも解釈できますが、震源域は重ならずに南東方向に伸びていることから、誘発されて発生した地震(南海トラフにおける東海地震と南海地震のように)と考えられます。ただし、本震の後、余震域が広がるという現象は広く知られており、最大余震が震源域の外で発生するという例もあります(例:1993年北海道南西沖地震)もありますので、余震的な性格も持ち合わせています。



12月の地震に比べて津波が小さかったのは何故か?

 図2にインド洋における津波の伝播時間と主な検潮所の位置を示します。これらの検潮所(Cocos島はオーストラリアNational Tidal Centreが、他はHawaii大学Sea Level Centerによって運営されています)における津波波形の比較を図3に示します。

インド洋における津波の伝播時間と主な検潮所の位置

図2 インド洋における津波の伝播時間と主な検潮所の位置



検潮所における津波波形の比較

図3 検潮所における津波波形の比較(Cocos島はオーストラリアNational Tidal Centreが、他はHawaii大学Sea Level Centerによって運営されています)


 12月の津波に比べて、3月の津波の振幅が小さいことがわかります。津波の大きさは地震の大きさのほかにも、断層の向きによって変化しますので、振幅比は場所によって異なりますが、Pt. LouisやCocos島では3月の津波振幅は12月の数分の1です。二つの地震の地震モーメントの比は約3:1ですから、これらの検潮所における津波の振幅は、地震の大きさに比例したものであったといえます。

 今回の地震の震源域はシミュエル島、ニアス島の付近で、震源域付近の水深が浅かったことも津波の発生に影響していると考えられます。海底における地殻変動量が同じでも、水深が浅い場合には持ち上げられる水の量は小さくなるため、津波は相対的に小さくなります。

 図4は3月の地震による津波の発生と伝播のシミュレーションです。震源の長さが300km程度、断層の向きが北西-南東方向であった点が、12月の地震との大きな違いです。断層の位置と方向の違いによって、津波の伝播の様子が異なっています。

3月の地震による津波の発生と伝播のシミュレーション

図4 3月の地震による津波の発生と伝播のシミュレーション。