地質調査総合センター

第二報 2025年7月30日のカムチャツカ半島地震津波の道東調査

活断層・火山研究部門
行谷佑一・澤井祐紀・谷川晃一朗・嶋田侑眞

 2025年7月30日にロシア連邦のカムチャツカ半島周辺で発生したマグニチュード8.7(気象庁)の地震により津波が発生しました。気象庁は日本の太平洋沿岸の広い範囲に対し津波警報を発令し、実際に多くの検潮所において津波が観測されました(気象庁、2025)。

 産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門では地震の3日後である2025年8月2日(土)から4日(月)にかけて北海道の道東地区である釧路市~根室市(図1)において、この津波の高さに関する調査を実施しました。その内容としては次の通りです。

  • 主に漁港を訪れ、地元の方々に津波が陸上に浸水したかヒアリングを行いました。
  • 陸上に浸水した情報がある場合、その到達点における位置と高さ(標高値)を測量しました。

 この結果、図1の赤丸で示す地点において、津波の高さに関する情報を得ることができました。例えば、根室市の友知(ともしり)漁港(図2)では、「7月30日夕方くらいに岸壁をちょっとあふれるくらいの波があった」、との目撃情報がありました。この情報を基に岸壁の高さを測ると標高0.8 mでした。したがって、30日夕刻に標高0.8 mを少し超すような津波があったと考えられます。また、浜中町の霧多布漁港(図3)では、「避難先から戻ってきたら岸壁が濡れていた」、との証言が得られました。濡れている位置まで浸水したと考えられるため、その位置の高さを測量すると標高0.8 mでした。

 一方で、訪問した多くの地域では、津波の陸上への浸水が確認できませんでした(図1の青丸)。これらの地点は、地元の方々が高台からずっと海を見ていて陸上に浸水が確認されなかった地点、避難先から帰ってきたときに岸壁での浸水(水やゴミ)が確認されなかった地点などとなります。

※図はGeneric Mapping Tools (GMT) (Wessel et al. 2013)を利用して作成しました。本調査の一部はJSPS科研費23K03518の助成を受けました。

産業技術総合研究所による、2025年7月30日のカムチャツカ半島地震津波の北海道道東地区における調査結果。(a) 震央と調査地点との位置関係を表す図。(b)調査地点。赤丸は津波高(標高値)を測定した地点を表す。青丸は目撃証言等により陸上遡上が確認されなかった地点を表す。

図1 産業技術総合研究所による、2025年7月30日のカムチャツカ半島地震津波の北海道道東地区における調査結果。
(a) 震央と調査地点との位置関係を表す図。(b)調査地点。
赤丸は津波高(標高値)を測定した地点を表す。青丸は目撃証言等により陸上遡上が確認されなかった地点を表す。

図2 友知漁港の状況(2025年8月3日撮影)

図2 友知漁港の状況(2025年8月3日撮影)。
目撃証言により、夕方くらいに岸壁をちょっとあふれるくらいの波があったとのことである。
その岸壁の高さを測量した。

図3 霧多布漁港(本港)の状況(2025年8月4日撮影)。地元の方によると、昼間は避難しており実際に見たわけではないが、戻ってきたら岸壁が濡れていた、とのことだった。当時の状況から判断して濡れていた場所まで浸水したと考え、その高さを計測した。)

図3 霧多布漁港(本港)の状況(2025年8月4日撮影)。
地元の方によると、昼間は避難しており実際に見たわけではないが、戻ってきたら岸壁が濡れていた、とのことだった。
当時の状況から判断して濡れていた場所まで浸水したと考え、その高さを計測した。

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