沿岸域の地震防災・減災に資する高精度地質情報の整備事業
沿岸域の地震防災・減災に資する高精度地質情報の整備事業 (2025〜2028年度)
背景と目的
日本列島はプレート沈み込み帯の直上に位置し、海溝型巨大地震や内陸活断層地震の脅威に常にさらされています。しかし、明治以降に地震観測網が整備されてきた近代地震学の歴史と比較すると、巨大地震の発生頻度は低く、将来の地震発生を精度良く予測するには、現在のデータや理解だけでは不十分です。
これまで国の地震調査研究推進本部(地震本部)が主導して活断層の調査・研究が進められてきましたが、地震発生確率が不明な断層や調査が十分に行われていない地域も存在します。また研究の進展により、海溝型地震の前後には内陸活断層地震が多発する傾向が明らかになりつつあります。
このような背景の下、産総研地質調査総合センター(GSJ)では、瀬戸内海沿岸域に着目し、「沿岸域の地震防災・減災に資する高精度地質情報の整備事業」のプロジェクトを2025年度より2028年度の4年計画で実施し、海域活断層の調査により新規データを取得します。瀬戸内海は、1946年昭和南海地震の前後に西日本で内陸地震が多発した地域であるにもかかわらず、活断層調査の空白域として残されているためです。
加えて、地震発生時に大きな揺れが想定される沿岸の平野部において、地下地質情報を取得します。得られた情報は解析・評価を行い、国土強靱化基本計画の柱である「デジタル等新技術の活用による国土強靭化施策の高度化」、「地域の防災力強化」に貢献します。
なお、本プロジェクトは、地質調査総合センター重点プロジェクト「防災・減災のための高精度地質情報の整備事業 (2022〜2025年度)」および重点課題「沿岸域の地質・活断層調査 (2007〜2024年度)」で得られた成果をさらに発展させるものであり、経済産業省が推進する「第3期知的基盤整備計画」に位置づけられた取り組みの一環です。
事業内容
1. 海域活断層データの整備
次の地震が「いつ・どこで・どの程度の規模で」発生するかを予測するためには、活断層の位置・長さに加え、地震履歴(過去の活動時期・頻度)を把握することが重要です。
本プロジェクトでは瀬戸内海で海域活断層調査を実施し、反射法探査や海域ボーリングによって高精度の断層情報を取得します(写真1、2、図1)。調査の結果、断層が島嶼部や沿岸平野と連続することが判明した場合には、陸域での追加調査も行います(写真3)。
写真1 瀬戸内海における音波探査のようす
探査機材を載せた船上から後方を望む。海面上に音源が発した泡が見える。
この後に24チャンネルの受信機が続く。
図1 伊予灘における音波探査で得られた反射断面
写真2 海上ボーリングのようす
写真3 海域活断層の陸域延長部で実施したトレンチ調査のようす
断層と地層の切断/被覆関係の観察と、地層の年代測定から、過去の地震履歴を直接推定することができます
2. 平野地質情報の整備
地震時の揺れの大きさを予測するには、震源断層の情報だけでなく、観測地点の地盤構造の把握が不可欠です。
本プロジェクトでは、岡山平野、松山平野、讃岐平野、広島平野においてボーリング調査や物理探査を実施し、地下構造モデルの構築に必要なデータを整備します(図2、写真4)。
取得したデータは、将来的に地震動予測・防災計画への活用を想定しています。
図2 岡山平野におけるボーリング調査地点位置図(上)と取得したコアの半裁写真(下)
写真4 地下構造探査のようす
起震車で人工地震を起こし、地下の地層境界面等から反射してきた波を、2メートル間隔で配置した地震計(ガードレールの下)で受振します。
3. 地質情報DXの推進
地質情報を防災・減災へ効果的に活用するには、行政・研究機関・民間など多様な分野間でデータを相互連携できる環境が必要です。しかし、GSJがこれまで整備してきた膨大な地質図類のうち、未デジタル化データは依然として残っています。
本プロジェクトでは以下を重点的に進めます:
- 地質データの標準的なデータ形式への変換
- 相互運用性を高めるためのメタデータ整備
- データポータルの開発・拡充
- 海域・平野調査結果の速報性向上と公開
これらにより、地質情報の利用環境を改善し、防災・減災に資するデータ利活用を加速させます(図3)。
図3 情報発信のためのプロジェクトサイトの構成イメージ
データを並べるだけではなく、API一覧を見せることで「機械的にも使える」ことを示します







