地質調査総合センター

2026年 (Vol.77)

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地質調査研究報告 Vol.77 No.1(2026)

表紙

東京大学構内の石材に見られる生痕化石

東京大学構内の石材に見られる生痕化石  安田講堂や総合図書館などの建物に使用されている石材には浅海層に由来する砂岩が使用されており,多くの生痕化石及び物理的堆積構造が見られる.また,建築から約100年が経過した石材は風雨等による差別侵食が進み,あたかも天然の海岸露頭の様に,生痕化石が観察しやすい状態となっている.

左:安田講堂の外観.エントランスアーチの石材に,多くの生痕化石が観察される.
右上:安田講堂アーチ部分の拡大写真.風化が進み凸凹に富んだ石材表面には,分岐した巣穴ネットワークである生痕化石Thalassinoidesが密集した産状で見られる.
右下:泥の裏打ち構造を有するトンネル状の生痕化石Ophiomorpha.底生生物の居住痕と解釈されている.

(写真・文:清家弘治・池田昌之)

目次

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タイトル著者PDF
論文
鳥取県東部,駟馳山付近に分布する中新統鳥取層群駟馳山層とその地史的意義 羽地俊樹・金山恭子・工藤 崇・菅森義晃・仁木創太・平田岳史 77_01_01.pdf [29MB]
概報
東京大学本郷キャンパス構内の石材に見られる生痕化石 清家弘治・池田昌之 77_01_02.pdf[9MB]

要旨集

鳥取県東部,駟馳山付近に分布する中新統鳥取層群駟馳山層とその地史的意義

羽地俊樹・金山恭子・工藤 崇・菅森義晃・仁木創太・平田岳史

 鳥取県東部,駟馳山地域の新第三系層序の解明のため,地質調査,ジルコンU–Pb年代測定,斜長石および普通角閃石K–Ar年代測定,全岩主成分化学組成分析を実施した.駟馳山地域の新第三系は,17.1–16.4 Ma頃の海成砕屑岩および火山砕屑岩,貫入岩からなる岩美層と,それを不整合に覆う流紋岩~デイサイト火砕岩,貫入岩および溶岩からなる駟馳山層に区分される.駟馳山層の火砕岩は陸上堆積物であり,火砕岩の岩相から噴出源は駟馳山付近と推定される.年代測定結果から,駟馳山層は15.3–15.1 Ma頃の中部中新統と判断され,鳥取層群の上部に位置付けられる.鳥取地域において初めて,西南日本の他地域で認識されている中期中新世初頭の海退後の地層が確認された.駟馳山地域の層序および地質構造は,この海退と山陰沖に認められる褶曲の直接的な関連性を支持しない.

東京大学本郷キャンパス構内の石材に見られる生痕化石

清家弘治・池田昌之

 市街地の建物に使用されている石材には,体化石だけでなく生痕化石も多く含まれている.本概報では,東京都文京区に位置する東京大学本郷キャンパス内の建物群に使われている石材(上部白亜系双葉層群産)に見られる生痕化石を報告する.安田講堂や総合図書館など約100年前に建築された建物の外壁には,ThalassinoidesOphiomorphaMacaronichnusPiscichnusScoliciaや逃避痕などの多数の生痕化石,及び平行葉理やトラフ型斜交層理などの物理的堆積構造が観察された.