2022年(Vol.73)

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地質調査研究報告 Vol.73 No.1(2022)

表紙

阿波の土柱

阿波の土柱 地質調査総合センターでは,沿岸域の地質・活断層調査の一環として,徳島平野,和歌山平野,淡路島南岸にわたる紀伊水道沿岸域で調査を進めている.徳島平野沿岸域に分布する更新統の土柱層は,かつての吉野川や阿讃山地からの河川成の礫,砂,泥から構成されている.「阿波の土柱」は,ガリーの集合による侵食地形で,土柱が林立する景観となっており,国の天然記念物に指定されている.

(写真・文:羽田裕貴・中島 礼)

目次

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タイトル著者PDF
論文
西三河平野西南部油ヶ淵低地下の更新統古地磁気層序 羽田裕貴・中谷是崇・水野清秀 73_01_01.pdf [3.6MB]
埼玉県江南町での反射法探査 ̶反射面傾斜角の深さ依存性の検出̶ 大滝壽樹・加野直巳・横倉隆伸 73_01_02.pdf[5.3MB]

要旨集

西三河平野西南部油ヶ淵低地下の更新統古地磁気層序

羽田裕貴・中谷是崇・水野清秀

 2018年に愛知県(碧南へきなん)市縄手町で掘削されたオールコアボーリング試料GS-HKN-1を用いて,古地磁気,岩石磁気,およびテフラ分析を実施した.全73試料に対して段階交流消磁を施し,磁化ベクトルの伏角方位を用いて地磁気極性を判定した.また,先行研究による花粉化石層序との比較に基づき,地磁気極性年代表との対比を行なった.その結果,松山–ブルン境界に相当する極性境界は,相対的な海水準低下を示す非海成泥層中の40.44~ 40.75 m区間に置かれると考えられる.これは,詳細な古地磁気–酸素同位体複合層序が報告されている房総半島の陸上セクション,および北大西洋の深海底コアの報告と矛盾しない.古地磁気極性境界より下位の泥質層に含まれる火山ガラスは,その屈折率,主成分・微量成分組成から,複数の二次堆積テフラの混合が示唆され,堆積年代決定に有用な火山灰層は見つけることができなかった.今後,段階熱消磁などの追加実験や詳細な花粉化石層序による泥質層と海洋酸素同位体ステージの対比が必要である.

埼玉県江南町での反射法探査 ̶反射面傾斜角の深さ依存性の検出̶

大滝壽樹・加野直巳・横倉隆伸

 我々は2001年に埼玉県江南町(現熊谷市)の荒川近くの低地でP波震源を用いた3成分反射法探査を行った.測線はほぼ東西方向でその長さは2 kmほどである.この探査はP–SV反射波を用いた傾斜層でのS波速度構造解析を企図していた.残念ながら明瞭なP–SV反射波はほとんど確認できなかったが,合わせて行なった深さ1 km程度までのP波反射法解析でえられたP波速度および反射断面の解析結果を示す.えられた速度は表層で200~300 m/s,深さ100 mで400~700 m/s,500 mで1,400~1,800 m/s,1,000 m で2,700~3,000 m/s程度であった. 反射断面は,測線下で西から東への傾斜構造が卓越していることを示している.その測線方向の傾斜角は7~12°ほどであり,深くなるにつれおよそ5~6 °/kmで増加している.このことは,傾動ひいては傾斜を起こした断層運動が一定のペースで進行していたことを示唆している.傾斜反射面はこの測線の1 kmほど西のP波反射法測線でも観測されている.この観測結果と総合すると,この地域の層構造の真の傾斜方向はおおよそ北東と考えられる.