西之島火山調査報告(2016)

2016年10月、西之島上陸調査(速報)

活断層・火山研究部門
更新:2016年11月30日
開設:2016年10月26日

小笠原諸島の一部である西之島(写真1~2)は2013年から2015年まで噴火が継続しました。産業技術総合研究所を含む東京大学地震研究所中心の研究チームは、東京大学大気海洋研究所の学術研究船「新青丸」(海洋研究開発機構所属)により、10月16日から25日にかけて西之島の火山活動と生物相の調査を実施しました(写真3~4)。
 このうち東大地震研、山梨県富士山研、産総研から参加した火山地質学専門の3名から構成される地質班は、地質調査および火山噴出物の採取を担当しました。そのほかの上陸班(4名)は地震・空振観測点の設置、海鳥の冬期営巣状況を把握するための音声録音装置等の設置、噴火後の節足動物相および植物相の調査を実施しました。
 地質班は、10月20日と21日の2日間、溶岩流に覆われていない西之島旧島付近の西側海岸の上陸し(写真5~7)、その付近及び北側、南側において、異なる噴火時期に流出した溶岩流等の産状観察を行い(写真8~11)、これらの火山噴出物を採取しました。海岸線はすでに広い砂礫浜が発達しています(写真12~13)。
 比較のために1973-74年噴火時に流出した溶岩流の産状を示しますが(写真14~15)、2013-2015年噴火の溶岩流の産状と類似します。
 採取された火山噴出物の一部は、地質標本館2016年冬の特別展示に併せて、11月23日から2017年1月15日まで展示しています。

調査参加機関

  • 国立大学法人 東京大学 地震研究所
  • 国立研究開発法人 海洋研究開発機構
  • 国立大学法人 神戸大学
  • 国立研究開発法人 産業技術総合研究所
  • 国立研究開発法人 森林総合研究所
  • 山梨県富士山科学研究所
  • 環境省関東地方環境事務所

写真

写真1:噴火以前の西之島を南西より見る(2003年7月19日撮影)。

 

写真2:噴火中の西之島を東南東上空より見る(2014年6月3日撮影。読売新聞社機より)。
https://gbank.gsj.jp/volcano/Quat_Vol/photo_page_2/G22_9.htm

 

写真3:現在の西之島を西方より見る(2016年10月19日)。

 

写真4:アオツラカツオドリと火山活動を監視する新青丸(2016年10月20日)。

 

写真5:波の荒いときは西之島上陸作業を中断し、待つ(2016年10月20日)。

 

写真6:穏やかな波を見計らって泳いで上陸(2016年10月20日:環境省、千田智基氏撮影動画より)。

 

写真7:海岸とボート付近のブイにロープを張り、上陸班と荷物を運ぶためのガイドとした(2016年10月20日:東大地震研、前野深氏撮影)。

 

写真8:西之島旧島の上を覆った2014年12月4日〜12月10日の間に流出した溶岩流の先端部分。旧島上には植生があり(写真右側)、海鳥の繁殖地となっている(2016年10月20日)。

 

写真9:西之島旧島南に流下した溶岩流の表面地形(2016年10月20日)。

 

写真10:溶岩流の断面(調査地点の最南端)。海食により後退して溶岩流内部の塊状部分が露出(2016年10月20日)。

 

写真11:インパクトクレーターを作ったと考えられる火山弾。海浜礫が堆積し、クレーター地形は消滅している。人物は富士山科学研究所の吉本氏(2016年10月20日)。

 

写真12:西之島旧島の北西側に広がる砂礫浜。噴火以前は海だった部分。写真中央部に旧島が、更に奥には新火砕丘が見える(2016年10月20日)。

 

写真13:西之島旧島の北西側、今回の調査北端のさらに北側に広がる砂礫海岸。先端以北へは進めない(2016年10月20日)。

 

写真14:1973-74年噴火の溶岩流の表面地形(2003年7月19日撮影)。2013-2015年噴火で流出した溶岩流に類似した表面地形(写真8及び写真9)をもつ。

 

写真15:1973-74年噴火の溶岩流の先端部部分(2003年7月19日撮影)。2013-2015年噴火で流出した溶岩流と類似。

 

関連情報

2013-2015年噴火以前の地質情報は、日本の火山データベース及び5万分の1地質図幅「父島列島」(海野・中野、2007)で公開しています:

また2013-2015年噴火に関して産総研から火山噴火予知連絡会に提出した資料は下記です:

関連機関リンク

更新履歴

  • 2016年11月30日:地質標本館での火山噴出物の展示(「地質標本館2016年冬の特別展示」)についてリンクを掲載

問い合わせ先

産総研地質調査総合センター