地質調査所月報 Vol.50 No.8 (1999)

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領家変成岩の層状チャートに見られる非対称褶曲

領家変成岩の層状チャートに見られる非対称褶曲

  京都府南部の和束地域には、丹波帯の非変成堆積岩から漸移する低変成度の領家変成岩が広く分布している。領家変成岩は、主に層状チャートと泥質岩からなり、WNW-ESE走向で北または南へ急傾斜する。写真の層状チャートは層理がよく保存され、波長15-20cmの非対称で両翼が閉じた褶曲を形成している。肉眼ではチャートの変成作用を確認することは難しいが、薄片観察では泥質部に多量の細粒な黒雲母が生じており、変成度は緑泥石-黒雲母帯に属する。層状チャートに発達する褶曲構造を詳しく見ると、褶曲軸面に対し反時計回りに20°近く斜交して発達するスレート劈開 (写真中で細密な黒いすじ) が認められ、チャートの単層は背斜南翼部 (写真左) で北翼部 (写真右) に比べて2倍近く厚層化していることがわかる。このような幾何学的特徴は、まず褶曲が形成された後にスレート劈開が生成して、劈開に直交する方向にチャートが短縮したことを示している。また、元の褶曲は、軸部で折れ曲がり翼部が平坦なシェブロン褶曲型であり、丹波帯の非変成チャートに普遍的に認められる褶曲に相当する。
  相楽郡和束町原山の和束川の露頭。

(写真提供 : 地質部、竹内圭史・木村克己)

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