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地質調査研究報告 Vol.69 No.4(2018)

表紙

浦和GS-UR-1コアから産出した浮遊性有孔虫Pulleniatina obliquiloculata(Parker and Jones)

浦和GS-UR-1 コアから産出した浮遊性有孔虫Pulleniatina obliquiloculata(Parker and Jones) 写真は,浦和GS-UR-1コアの試料UR-76(深度76.25―76.15 m)から産出した浮遊性有孔虫のPulleniatina obliquiloculata(Parker and Jones)である.成体は,殻の表面に方解石の二次石灰化層を持つため特徴的な光沢があり,見分けは容易である.しかし,写真の個体はまだ幼体でありこの特徴はまだない.浦和GS-UR-1コアでは,下総層群薮層に相当するUR-76―UR-81の層準(深度78.40―76.15 m)で,この種が産出した.浮遊性有孔虫の熱帯種であるこの種は,北西太平洋では黒潮の指標種とされている.浦和地域における薮層堆積時に,暖流の流入があったことを示唆する証拠である.

(写真:金子  稔,文:野村正弘)

目次

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タイトル著者PDF
論文
埼玉県さいたま市で掘削された浦和GS-UR-1 コアの更新統下総層群産有孔虫化石群集 金子  稔・石川博行・野村正弘・中澤  努 69_04_01.pdf [21MB]

要旨集

埼玉県さいたま市で掘削された浦和GS-UR-1 コアの更新統下総層群産有孔虫化石群集

金子  稔・石川博行・野村正弘・中澤  努

 関東平野中央部の大宮台地南部で掘削された浦和GSUR-1コア試料の中–上部更新統下総層群,地蔵堂層,薮層,上泉層,木下層の有孔虫化石分析を行った.98試料を処理し,51試料から有孔虫化石が産出した.底生有孔虫は38 属72種,浮遊性有孔虫は8 属32種が認められた.有孔虫化石の産出状況から,浦和GS-UR-1コアの下総層群各層を下位より地蔵堂層Ⅰ–Ⅳ帯・薮層Ⅰ–Ⅲ帯・上泉層Ⅰ帯・木下層Ⅰ–Ⅴ帯に区分し,関東平野中央部における古東京湾の古環境変遷について考察した.その結果,地蔵堂層では,暖流水の影響の強い開放的な湾の湾口部から,寒流水の影響の強い湾央部へと変化した.薮層では,閉塞的な湾の湾奥部から暖流水の影響の強い開放的な湾の湾口部に変化し,その後,寒流水の影響の強い湾央部へと変化した.上泉層では湾央部– 湾口部の環境であった.木下層では,湾奥部から湾央部,湾口部を経て,再び湾央部へと変化が認められた.地蔵堂層Ⅰ帯と薮層Ⅱ帯に浮遊性有孔虫化石の多産帯を見出した.古東京湾において外洋水の影響が最も大きかった時期で対比にも有効と考えられる.