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地質調査研究報告 Vol.57 No.3/4 (2006)

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表紙

足摺岬に見られるマグマ混交現象

足摺岬に見られるマグマ混交現象

四国南西端の足摺岬には古第三紀の四万十層群の堆積岩類に中新世の斑れい岩や花崗岩類が貫入している。これらは南方に開いた弧状をしており、その中心部に斑れい岩類が分布する。斑れい岩はアルカリに富み、花崗岩類もアルカリ岩系列に属し、Aタイプと見なされている。Aタイプは非造山期 (anorogenic) マグマ活動の産物であるので、四万十帯における産出は例外的と言えよう。足摺岬では斑れい岩類が花崗岩類中に、写真のように各種の円礫として取り込まれており、両者の中間的組成物も多く見られる。これはマグマ溜りで斑れい岩質マグマと花崗岩質マグマとが混交した結果と解釈される。写真ではマグマ溜り上壁からの斑れい岩マグマの落下の様子が読み取れる。

(石原舜三)

目次

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論文
Paleomagnetism of the Lower to Middle Miocene Series in the Yatsuo area, eastern part of southwest Japan :
clockwise rotation and marine transgression during a short period
Machiko Tamaki, Yasuto Itoh and Mahito Watanabe (73-88) 57_03_01.pdf [1,171 KB]
西南日本花崗岩類のレアアース特性 :
足摺岬の新第三紀深成岩類と山陽帯の後期白亜紀花崗岩類
石原舜三・村上浩康 (89-103) 57_03_02.pdf [971 KB]
湖底・海底堆積物中微量セレンの存在量と堆積環境 寺島  滋・今井  登・岡井貴司・御子柴 (氏家) 真澄・太田充恒・池原  研・片山  肇 (105-119) 57_03_03.pdf [1,088 KB]
概報
福井県大野市南方、平家平付近の第三系と地すべり 吉川敏之 (121-126) 57_03_04.pdf [619 KB]
神奈川県西部、山北南地震観測井のコア試料から産出した有孔虫化石 林  広樹・阿部恒平・柳沢幸夫・笠原敬司 (127-133) 57_03_05.pdf [672 KB]
講演要旨及びポスター発表概要
第5回活断層研究センター研究発表会講演要旨及びポスター発表概要 (135-142) 57_03_06.pdf [423 KB]

要旨集

Paleomagnetism of the Lower to Middle Miocene Series in the Yatsuo area, eastern part of southwest Japan:
clockwise rotation and marine transgression during a short period

Machiko Tamaki, Yasuto Itoh and Mahito Watanabe

   新第三紀における日本海拡大イベントに関連した回転運動プロセスを調べるため、富山県八尾地域に分布する下部‐中部中新統の八尾層群にて古地磁気学的研究を行った。調査地域における山田川ルート、和田川ルートで得られた火山岩、堆積岩から段階消磁実験を行った結果、16 地点の安定した初生磁化成分が分離できた。これまでに八尾地域で報告されている全37地点の古地磁気データを統括すると、傾動補正後の地点平均方位において、正帯磁を示すものが10地点、逆帯磁を示すものが27地点得られた。回転運動の経過を詳細に知るために、各層準に対する偏角の推移を調べた結果、経時変化が見られ、時計回りの回転運動の記録が捉えられていることが明らかになった。累層ごとに分けた平均方位の偏角の比較では、医王山層と黒瀬谷層の間で約30度の有意差を示す。本論で確立した古地磁気層序に基づくと、医王山層と黒瀬谷層は前期中新世末期に対比される。また、古地磁気方位と岩相変化を比較すると、急激な回転運動は火成活動の盛んな時期から海進に伴う堆積物供給期間の転換期にあたる。日本海拡大イベントには、その後半に急激な回転運動のフェーズが存在し、その結果、本研究地域である日本海沿岸の堆積盆に顕著な環境変化をもたらした可能性がある。

西南日本花崗岩類のレアアース特性 :
足摺岬の新第三紀深成岩類と山陽帯の後期白亜紀花崗岩類

石原舜三・村上浩康

   足摺岬深成岩類 (n = 12) 及び西南日本の山陽帯花崗岩類の浅成花崗岩類 (n = 20) の化学分析を実施し、希土類元素量とその分布特性の解明を試みた。足摺岬のアルカリ花崗岩類はアルカリに富み、Ba, Zr, Nb, Zn が多いなど、弱いながらも A タイプ的な性格をもつ。この花崗岩類は我が国では最も希土類元素に富み、その総量は平均 453 ppm に達するが、軽希土類に富み重希土類に乏しい (LREE/HREE=11)。山陽帯の花崗岩類では、苗木花崗岩が平均 246 ppm、田上花崗岩が平均 213 ppmであり、総量は少ないが、重希土類に富んでいる (LREE/HREE = 2.8 〜 2.4)。このような地域差は原マグマの起源物質と固結前の分化作用の相違に基づいている。田上花崗岩中の苦鉄質エンクレーブでは、1,804ppm REE + Y に達する新発見があった。

湖底・海底堆積物中微量セレンの存在量と堆積環境

寺島  滋・今井  登・岡井貴司・御子柴 (氏家) 真澄・太田充恒・池原  研・片山  肇

   湖底・海底堆積物中微量セレン (Se) の存在量と堆積環境に関する研究のため、琵琶湖、湯の湖、霞ヶ浦、水月湖、東京湾、東北沖、太平洋中央部で採取された柱状試料を分割して得た合計 155 試料中の Se を連続水素化物生成-原子吸光法で分析し、既存データを含めて解析した。堆積物中のSe、全硫黄 (T.S) 濃度は、概括的には還元的な堆積環境で高く、酸化的な場合に低い傾向がある。しかし、2, 3 の例外を除くと湖底‐海底堆積物中の平均 Se 濃度は 0.6 〜 1.6 ppm 程度であり、淡水‐汽水‐海水の堆積環境変化は Se 濃度に本質的な影響を与えていない。堆積物中の Mn 濃度は堆積層の酸化-還元状態の指標として有用であり、Mn に富む堆積物は Se に乏しい場合が多い。今回分析した試料に関しては、人為的汚染に起因する Se 濃度の増加はないと考えられた。地殻存在量に比べて堆積物中に多量の Se が含有される主な原因は生物濃縮の影響であり、試料によっては陸水‐海水起源の Se が含有される。Se と S の化学的な性質は類似するが、堆積物における地球化学的挙動には異なる点が多い。この原因は、Sは主として海水から、Se の大部分は有機物から供給されること、続成作用に伴って Se のガス状化合物が生成して大気中に放出されること、S の酸化に伴って亜硫酸イオンが生成して元素態セレンを溶解・流出させること等が考えられた。

神奈川県西部、山北南地震観測井のコア試料から産出した有孔虫化石

林  広樹・阿部恒平・柳沢幸夫・笠原敬司

   神奈川県西部の山北地域で行われた大深度ボーリングのコア試料から有孔虫化石が産出した。掘削地点は足柄山地南部、伊豆‐小笠原弧と本州弧の衝突境界近傍に位置する。ボーリングの深度 820 〜 850 m 付近から得られた石灰質極粗粒砂岩及び砂質泥岩から、保存不良の浮遊性及び底生有孔虫化石が産出した。産出する化石が示唆する古環境は、外洋水の影響を強く受けた浅海環境である。石灰質極粗粒砂岩からは CN13a-14b 帯に相当する石灰質ナノ化石が報告されており、年代的には足柄層群中部‐上部に相当する。しかし、両者は岩相が大きく異なることから、本研究で有孔虫を検出した海成層は足柄層群とは異なる堆積物供給源を持っていた可能性が高い。