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地質調査研究報告 Vol.56 No.3/4 (2005)

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表紙

足跡化石の調査風景

足跡化石の調査風景

   足跡化石は、長野県佐久盆地を流れる千曲川河床に分布する下部更新統小諸層群大杭層か産出した。白い紙が置いてある円形の凹みが足跡化石である。足跡を残した印跡動物はアケボノゾウ (Stegodon aurorae) と推定される。大杭層は日本におけるアケボノゾウ化石の一大産地である。

(長森英明・吉川博章・畠山幸司・寺尾真澄・田辺智隆)

目次

タイトル著者PDF
論文
近畿地方田上花崗岩の化学的特性
-特に放射性元素と希土類元素の役割-
石原舜三・中野聰志・寺島  滋 (93-98) 56_03_01.pdf [756 KB]
つくば市で2001年2月から2002年6月に採取したエアロゾル粒子の非水溶性成分の季節変化 太田充恒・寺島  滋・金井  豊・上岡  晃・今井  登・松久幸敬・清水  洋・高橋嘉夫・甲斐憲次・林  政彦・張  仁健 (99-116) 56_03_02.pdf [2,337 KB]
中部地方、飛騨帯花崗岩類の起源物質の多様性 石原舜三 (117-126) 56_03_03.pdf [1,451 KB]
長野県佐久盆地千曲川河床の下部更新統大杭層産長鼻類足跡化石 長森英明・吉川博章・畠山幸司・寺尾真純・田辺智隆 (127-135) 56_03_04.pdf [1,054 KB]
総説
四国三波川帯・瀬場地域の研究史 : 高度変成地域の野外調査にまつわる諸事情 青矢睦月 (137-146) 56_03_05.pdf [1,446 KB]
資料・解説
米国ヤッカマウンテン高レベル放射性廃棄物最終処分場における安全規制について 高木哲一 (147-157) 56_03_06.pdf [1,409 KB]
講演要旨及びポスター発表概要
第4回活断層研究センター研究発表会講演要旨及びポスター発表概要 (159-166) 56_03_07.pdf [432 KB]

要旨集

近畿地方田上花崗岩の化学的特性
-特に放射性元素と希土類元素の役割-

石原舜三・中野聰志・寺島  滋

   滋賀県南部、田上花崗岩体の代表的試料6個について主化学成分と微量成分とを明らかにし、特に希土類元素と放射性元素の持つ意味について考察した。田上花崗岩は珪長質 (73.3 〜 76.7% SiO2;8.0 〜 8.9% Na2O+K2O) であり、Rb/Sr 比は高くマグマ分化が進んでいる。アルミナ過剰度は 1.05 前後であり、I タイプに入る。粗粒な中心相は F, Li などに富み、細粒周縁相はこれら揮発性成分に乏しい。田上花崗岩は全体的に希土類元素と放射性元素に富み、特に重希土類元素に卓越し、フラットな希土類パターンを示す。その原因は、原岩が還元的な珪長質物質であり、かつマグマ分化作用が進んだことに求められる。雲母粘土化変質作用の熱源は花崗岩中の放射壊変熱であった可能性が指摘された。

つくば市で2001年2月から2002年6月に採取したエアロゾル粒子の非水溶性成分の季節変化

太田充恒・寺島  滋・金井  豊・上岡  晃・今井  登・松久幸敬・
清水  洋・高橋嘉夫・甲斐憲次・林  政彦・張  仁健

   2001年2月から2002年6月にかけて、つくば市で粒径別に採取されたエアロゾル試料の非水溶性成分の化学組成を測定し、粒径別に見た化学組成の特徴やその季節変化について考察を行った。粒径別に見た化学組成の特徴について調べたところ、大気中エアロゾル濃度は >11.0 μm, 3.3 〜 4.7 μm, 0.43 〜 0.65 μm にピークを持つパターンを示した。ダストイベント (黄砂の飛来) が発生すると、2.1 〜 7.0 μm の粗粒粒子に著しい濃度増加が認められた。Al2O3 をはじめとする多くの元素の大気中濃度は、この大気中エアロゾルの濃度変化とよく似たパターンを示し、粗粒粒子は主として鉱物質エアロゾルから構成されることを示した。ただし、Cu, Pb などの一部の元素は、Al2O3 とは明らかに異なる濃度変化を示し、人為起源の炭素質エアロゾル由来と考えられた。次にエアロゾル粒子の季節変動について調べたところ、通常時は細粒粒子を構成する炭素質エアロゾルの寄与が粗粒粒子を構成する鉱物質エアロゾルの寄与よりも大きいが、春期ではその関係が逆転することが明らかとなった。また、ダストイベントが発生した時は、通常時の10倍にも達する鉱物質エアロゾルの寄与が認められ、それに応じて Al2O3 などのほぼ全ての元素に対して非常に高い大気中元素濃度が確認された。一方、細粒エアロゾル粒子の大気中濃度変化はダストイベントとは対応しないものの、Al2O3 の濃度変化と良い対応を示した。しかし細粒粒子中の Cu, Pb は春期に非常に高い濃度を示すものの、Al2O3 とは異なる季節変化を示した。したがって、細粒粒子には局地的に巻き上げられたダスト粒子と人為起源物質の両方の寄与が認められる事が明らかとなった。

中部地方、飛騨帯花崗岩類の起源物質の多様性

石原舜三

   飛騨帯の古期花崗岩類はチタン鉄鉱系に属し、その全岩酸素同位体比 (δ18OSMOW) は高く (平均10.5 ‰)、中生代前期花崗岩類は磁鉄鉱系に属し、低い δ18O 値 (平均7.9 ‰) を持つ。δ18O 値は帯磁率や Fe2O3/FeO 比と逆相関する点で、日本の白亜紀‐古第三紀花崗岩類と共通の性質を示す。古期花崗岩類は大きいアルミナ飽和度を持ち、その起源物質には、頁岩類の関与が考察される。一方、古期花崗岩類の多くは高い Sr/Y 比を示し、チタン鉄鉱系であるが、アダカイト質である点で特異であり、これは環太平洋地域における最初の発見である。アダカイト質岩の混在は中生代前期花崗岩類にも認められ、特に地殻物質の混入が考えられる早月川、打保、八尾、庄川などの内側深成岩体、及び能登半島の諸岩体で顕著である。これらの事実はアダカイトの成因の多様性を物語っている。

長野県佐久盆地千曲川河床の下部更新統大杭層産長鼻類足跡化石

長森英明・吉川博章・畠山幸司・寺尾真純・田辺智隆

   長野県東御 (とうみ) 市の千曲川 (ちくまがわ) 河床に分布する下部更新統小諸層群大杭層より長鼻類の足跡化石を確認した。足跡化石の産出層準は、約1.3 Ma のフィッション・トラック年代を持つ羽毛山軽石の約2m上位である。印跡動物は、同層準から Stegodon aurorae (Matsumoto) の体化石が産出していることと、日本の長鼻類生層序から Stegodon aurorae と推定される。足跡化石を含む層準の堆積環境は、河川の氾濫原と推定される。

四国三波川帯・瀬場地域の研究史 :
高度変成地域の野外調査にまつわる諸事情

青矢睦月

   四国三波川帯・瀬場地域には、変斑れい岩の固体貫入に伴う接触変成作用によって生じたとされるエクロジャイト質塩基性片岩が報告されていた。その後の調査研究により、エクロジャイト質塩基性片岩 (またはその構成鉱物であるオンファス輝石) が変斑れい岩から離れた地域にも多産すること、及び多重変形とオンファス輝石成長時期の関係が明らかにされた結果、瀬場地域のエクロジャイト質塩基性片岩はすべて、単一の広域変成作用によって生じたものと考えられるようになった。この研究史から、高度変成地域の野外調査では : 1) 変成履歴の鍵を握る鉱物の存否、特にその地質図スケールでの分布範囲の特定には細心の注意を払わなくてはならないこと ; 2) 岩石学に加えて、構造地質学の視点、特に多段階変形の正確な分類が必要となることが示唆される。

米国ヤッカマウンテン高レベル放射性廃棄物最終処分場における安全規制について

高木哲一

   米国では、2002 年にネバダ州ヤッカマウンテン地域への高レベル放射性廃棄物最終処分場の立地が正式に承認され、2005 年に処分場建設のための許可申請書が、10 CFR Part 63 に従い、米国エネルギー省から米国原子力規制委員会に提出される予定である。米国原子力規制委員会は、10 CFR Part 2 の手順と日程に従って許可申請書の厳正な審査を実施する。許可申請書及び修正された許可申請書の内容が、最終処分場の永久閉鎖前・後において国民の健康と安全を十分に保証するものであると判断された場合、原子力規制委員会は建設認可及び処分場の操業許可証の発行を行う。