2020年度第1回地質調査研修終了報告

 茨城県つくば市の産業技術総合研究所第7事業所(地質調査総合センター)、茨城県ひたちなか市および福島県いわき市周辺地域において9月28日〜10月2日に、地質図を作成した経験はないが、今後業務として、その技術・知識や作成に関わる工程を知っておきたいという方を対象に地質調査研修を開催しました。
 今回は、前回までの「野外調査の実践から入る」という形を少し変更し、前半の2日間に産総研内のセミナー室座学で基礎知識を学んでいただき、後半の3日間に野外に出かけて実地調査を体験いただくという形にしました。室内座学の主講師を長年産総研で地質図作成業務に携わってきた柳沢幸夫が務め、同じく地質図作成に関わってきた利光誠一と鉱物資源の調査業務を行なっている荒岡大輔が補助を務めました。野外研修では、利光が主講師、荒岡が補助を務めました。
 参加者は6名です。室内座学では、基礎的な地質調査の知識をスライドと資料で学び、合間に砂の粒度表の作成や岩石標本の観察、屋外でのルートマップ作成のための歩測マッピングなどを体験し、幅広く基礎知識を習得していただきました。
 野外では、あらかじめ室内座学で模擬的に経験した柱状図作成を実際の地層を観察して作成したり、各自で調査観察した地層境界についてどのように広がっていくかを予測して、そのあとに現場に出かけて確認し、地図上で簡単な地質図を作成するという実践を行いました。野外においても、調査後の夜間に調査のまとめと質疑応答などを行い、地質図作成の一連の技術習得に励んでいただきました。

9月28日:
産総研内の講義室での実習:「地質調査とは」、「粒度表の作成」、「露頭観察とは」、「岩石標本観察」など。
9月29日:
産総研内の講義室と屋外での実習:「ルート調査とは」、「ルートマップ予習」、「対比・地質図」、「地質図学」、「地質図の読み方」など。
9月30日:
野外での地質調査の研修:ひたちなか市那珂湊海岸、いわき市アンモナイトセンター、同市久之浜町などで地層の観察と柱状図作成、走向傾斜の測定など。夜のまとめ作業で、昼間観察した白亜紀の双葉層群と古第三紀の白水層群の不整合の地層境界線の広がりの予測図の作成など。
10月1日:
野外での地質調査の研修:いわき市久之浜町・大久町で双葉層群と白水層群の不整合観察とその広がりの調査。付近での双葉層群内の堆積構造の観察、断層の新旧関係の観察。広野町で双葉層群と基盤の花崗岩類との不整合の観察など。夜のまとめ作業で、昼間観察した双葉層群と白水層群の不整合露頭の位置を地図上に落として地層境界線の広がりを地質図としてまとめる作業(簡単な地質図の作成)など。
10月2日:
野外での地質調査の研修:広野町で白水層群石城層の中の石炭層の観察、新第三紀の椚平層凝灰岩の観察。新第三紀の1300万年ほどの時間間隙を持つ吉野谷層と大年寺層の傾斜不整合および生痕化石の観察など。

 今回は“地質図初心者”の募集のため、ほとんどの方が不慣れな調査体験でしたが、地質調査で必要な露頭位置の確認や堆積岩の岩相識別についても実習しました。参加者からいただいた感想を見ると、今回座学から入ったことは概ね好評のようでした。全体を通して、地質調査や地質図の作成がどのようにして行われているかを野外調査の現場で理解できたと思いますが、同時に今後の修練が必要なことを実感いただいたと思います。
 本研修の実施にあたり、公益財団法人いわき市教育文化事業団いわき市アンモナイトセンター、および茨城大学理工学研究科安藤寿男教授に大変お世話になりました。地質標本館および地質調査総合センターのスタッフからの教材提供などの協力も得ました。この場をお借りして御礼申し上げます。

2020年度第1回地質調査研修
2020年度第1回地質調査研修
2020年度第1回地質調査研修
2020年度第1回地質調査研修

2020年度第1回地質調査研修

日程 2020年9月28日(月)-10月2日(金)
研修場所 室内座学:茨城県つくば市(産総研)
野外研修:茨城県ひたちなか市、福島県いわき市
研修内容 最近はルートマップを書いたことがあっても地質図を書いた経験のない方、岩石の見方に不安がある方など、地質調査の基本である踏査に関し、大学で充分な経験が積めなかった方もいらっしゃいます。この研修では、まず室内で岩石の見方等を理解した上で、野外での地層・岩石の観察ポイントからまとめまで、地質図を作成するための基本的事項を5日間の研修で習得します。少人数でマンツーマンに近い形での研修となります。
※今回は特に企業の地質初心者が対象となります。
※経験者(卒論等で地質図を描いたことがある方)向けは第2回にお申し込みください。
定員 定員 6名(最小催行人数:4名)募集終了
追加研修の開催が決まりました 募集終了
講師 利光誠一博士
地質調査総合センターにおいて、多くの地質図幅の作成を行い、白亜紀大型化石、層序の研究を行うと共に、地質標本館館長として、地質学の普及に努めてきました。
他2名(うち1名は室内研修講師)
集合 産総研 9/28 10時(予定)
解散 産総研 10/2 17時(予定)
CPD 40単位 (40単位になるよう、時間を調整して指導を行います)
参加費 産総研コンソーシアム「地質人材育成コンソーシアム」に60口(1口1000円)の会費が必要です。
注意事項 お勤めの方は労災保険の対象となるよう職務として参加してください。
現地までの交通費と宿泊代(4泊)・食事代は参加者負担となります。日程のうち、前半は産総研内の宿泊施設、後半の野外研修では、いわき市の宿泊施設を予定しています。(詳細は参加者の方に個別にご連絡いたします。)
参加には別途傷害保険をおすすめします。
学生・院生の方で参加されたい場合は、別途お問い合わせください。
新型コロナウイルス感染防止の対策は行いますが、情勢を踏まえ、中止とさせていただく場合もございます。
申し込み・
問い合わせ
training-gsj-ml(a)aist.go.jp ※(a) 部分を @ に置き換えて下さい。
主催

産総研コンソーシアム「地質人材育成コンソーシアム」 運営会則(pdf:76KB)