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地質調査研究報告 Vol.68 No.2(2017)

特集 : 志摩半島,中生界堆積年代に関する新知見―5 万分の1 地質図幅「鳥羽」―

表紙

志摩半島中生界の堆積年代を決定する放散虫化石と砕屑性ジルコン

志摩半島中生界の堆積年代を決定する放散虫化石と砕屑性ジルコン 三重県に位置する志摩半島は,リアス式海岸の発達する景勝地のほか,真珠や牡蠣の養殖地として有名である.志摩半島の地体は,北から三波川帯,秩父累帯,四万十帯に区分され,秩父累帯は更に北帯,中帯(あるいは黒瀬川帯),南帯に細分される.本特集号では,秩父累帯南帯及び四万十帯から放散虫化石が,秩父累帯北帯及び三波川帯から砕屑性ジルコンのU–Pb年代が報告された.表紙には,20 万分の1 日本シームレス地質図を基図として,秩父累帯南帯と四万十帯の化石産出地点をそれぞれ青色,緑色の鋲で,秩父累帯北帯及び三波川帯のジルコン採取地点を桃色の鋲で指し示してある.
また,これらの研究で抽出された代表的な放散虫化石種及びジルコンの写真をコラージュした.秩父累帯南帯の化石種(背景色:青)は右上からKilinora spilalisStriatojaponocapsa conexa sensu Hatakeda et al.(2007),Loopus primitivus,四万十帯の化石種(背景色:緑)は右上からPseudodictyomitra tiaraTheocampe salillumAmphipyndax tylotus である.

(写真・文:内野隆之・中江訓)

目次

全ページ PDF : 68_02_full.pdf [19.4MB]

タイトル著者PDF
巻頭言
5 万分の1 地質図幅「鳥羽」で得られた年代データの特集号化 内野隆之 68_02_01.pdf [2.6MB]
概報
5万分の1地質図幅「鳥羽」地域における秩父累帯南帯の泥岩から見出された中期及び後期ジュラ紀放散虫化石 内野隆之・石田直人 68_02_02.pdf [7MB]
5万分の1 地質図幅「鳥羽」地域における秩父累帯北帯の砂岩及び三波川帯の砂質片岩から得られた砕屑性ジルコンU‒Pb年代 内野隆之 68_02_03.pdf [5.8MB]
Preliminary report on the radiolarian age of the Upper Cretaceous Matoya Group (Shimanto belt) in the Toba District, Mie Prefecture, Southwest Japan Satoshi Nakae and Toshiyuki Kurihara 68_02_04.pdf [5.7MB]

要旨集

5万分の1地質図幅「鳥羽」地域における秩父累帯南帯の泥岩から見出された中期及び後期ジュラ紀放散虫化石

内野隆之・石田直人

 三重県志摩半島の秩父累帯南帯には,中期~後期ジュラ紀付加体からなる(築地ついじ)層群と中期ジュラ紀~前期白亜紀浅海層からなる(今浦いまうら)層群が分布する.5万分の1地質図幅「鳥羽」を作成する過程で,両層群の泥岩から中期及び後期ジュラ紀の放散虫化石を見出し,多くの化石種を基に,より精度の高い堆積年代を示すことができた.築地層群の泥岩はカロビアン期前半~中頃を,そして今浦層群の泥岩はバトニアン期中頃~カロビアン期後半,カロビアン期後半~オックスフォーディアン期中頃,チトニアン期前半という3つの時代を示すことが明らかになった.これらの時代はこれまで報告されていた年代データの範囲に収まる.

5万分の1 地質図幅「鳥羽」地域における秩父累帯北帯の砂岩及び三波川帯の砂質片岩から得られた砕屑性ジルコンU‒Pb年代

内野隆之

 地質調査総合センターでは現在,5万分の1地質図幅「鳥羽」の作成を行っている.その研究過程で,志摩半島に分布する秩父累帯北帯及び三波川帯の付加体の付加年代を決定することを目的に,砂岩及び砂質片岩中の砕屑性ジルコンのU–Pb年代を測定した.
 秩父累帯北帯(逢坂峠おうさかとうげ)コンプレックスの砂岩中ジルコンの最若粒子集団は204.4 ± 4.0 Ma(三畳紀末~ジュラ紀初頭)を示し,また同帯(河内こうち)コンプレックスの砂岩中のジルコンの最若粒子集団は183.4 ±2.9 Ma(前期ジュラ紀中頃~前期ジュラ紀後半)を示すことが明らかになった.これらは放散虫化石から想定されている陸源性砕屑岩の時代(付加年代)と矛盾しない.また,三波川帯(宮川みやかわ)層の砂質片岩中のジルコンの最若粒子集団は177.1 ±1.6 Ma(前期ジュラ紀後半)と95.5 ±2.5 Ma(後期白亜紀前半)を示すことが判明した.後者は,伊勢地域(図幅西隣)から得られている99–83 MaのフェンジャイトK–Ar年代(変成・冷却年代)と調和的である.しかし,前者は後者よりも有意に古い年代を示す結果となった.前者の妥当性を検証するため,今後更なる砕屑性ジルコンU–Pb年代やフェンジャイトK–Ar年代などのデータ追加が必要である.

三重県鳥羽地域における上部白亜系的矢層群(四万十帯)の放散虫年代:予察報告

中江訓・栗原敏之

 紀伊半島東部に位置する鳥羽地域における野外地質調査と放散虫化石に基づく時代決定により,的矢層群の泥岩がコニアシアン期–カンパニアン期を示すことが明らかにされた.この層群は四万十帯(北帯)に属し,古アジア大陸下にクラプレートが沈み込むプレート境界に沿って形成されたものである.放散虫化石を産する51地点のうち7地点の露頭から比較的保存の良い放散虫化石群集が得られ,これらは3つの地質時代(前期コニアシアン期,前期カンパニアン期ないし中期サントニアン期–中期カンパニアン期,中期–後期カンパニアン期)に分類される.このことは,的矢層群がさらに細分できる可能性があることを示している.