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地質調査研究報告 Vol.64 No.5/6 (2013)
表紙
秋の秋吉台
日本の地球化学図は約3000 個の河川堆積物を用いて作成した広域元素濃度分布図であり,2004 年に出版された.その5 年後には,陸海域を含めた包括的な広域元素濃度分布調査を目的として,海洋地球化学図の作成も行った.陸域の元素濃度分布は,地質や鉱山の分布を忠実に反映している.しかし,石灰岩地域は例外であり,大規模石灰岩から供給された河川堆積物中のカルシウムやストロンチウムの濃度は他の河川堆積物に比べ著しく低い.石灰岩地域における粒子移送過程を明らかにするために,日本最大の石灰岩岩体である山口県秋吉台から河川堆積物を採取した.写真はサンプリング終了後,秋吉台カルスト展望台から撮影したものである.風に揺れるススキが秋吉台の秋を感じさせる.
(写真・文:太田充恒)
目次
全ページ PDF : 64_05_full.pdf [48.4MB]
| タイトル | 著者 | |
|---|---|---|
| 論文 | ||
| Less impact of limestone bedrock on elemental concentrations in stream sediments – Case study of Akiyoshi area –  | 
      Atsuyuki Ohta and Masayo Minami | 64_05_01.pdf [3.1MB] | 
| GSJ におけるエアロゾル中放射性核種の2012 年観測と環境要因の再検討 | 金井 豊・ | 
      64_05_02.pdf [3.1MB] 訂正のお知らせ [100KB] ※2014年12月22日掲載  | 
    
| 概報 | ||
| Triassic to Middle Jurassic radiolarians from pelagic cherts in the Nanjō Mountains, Southwest Japan – Part 2. Kanmuri Yama district  | 
      Satoshi Nakae | 64_05_03.pdf [42.3MB] | 
要旨集
石灰岩が河川堆積物中の元素濃度に与える影響の低さについて
  ―秋吉地域の例―
太田充恒・南 雅代
地質調査総合センターは日本において,細粒砂(< 180 μm)を用いた全国規模の53元素濃度の地球化学図を作成してきた.河川堆積物中の元素濃度の空間分布は地質や鉱山の分布を忠実に反映している.しかし,石灰岩岩体は例外であり,河川堆積物中の元素濃度にほとんど影響を与えていない.そこで我々は,この理由を明らかにすべく,日本最大規模の石灰岩岩体である秋吉台から採取した河川堆積物中の元素濃度並びに鉱物組成を調べた.流域に石灰岩を含む地域で採取された細粒砂(< 180 μm)は,CaO濃度が高く,そのX線回折データには強い方解石のピークが存在した.堆積物中の元素濃度の粒径依存性を調べたところ,粒径が細かくなるほど方解石の存在度が高くなりかつCaO濃度も増加した.しかし,石灰岩が流域に70%を超える面積を占める試料が示すCaO濃度は,予想される値(~50 wt. %)に比べて,10–20 wt. %と非常に低い.この矛盾した結果は,石灰岩岩体は化学風化によって水に溶けやすいが,物理風化・削剥を受けにくい事によって説明できる.すなわち,石灰岩岩体から供給される砕屑粒子の供給量が他の岩体の供給量に比べ圧倒的に低い事を意味する.また,SrはCaとよく似た化学的挙動を示す事が期待されるにもかかわらず,一部の試料中のSr濃度はCaO濃度や方解石のピーク強度とは良い相関関係を示さなかった.これは,炭酸カルシウムに対して過飽和な水から、秋吉石灰岩とは異なるSr濃度を持つ方解石が形成され、河川系に供給されたことを意味する.
GSJ におけるエアロゾル中放射性核種の2012 年観測と環境要因の再検討
金井 豊・土井妙子・桝本和義
物質循環のトレーサーとしての地球科学的知見を得ると同時に,福島第一原子力発電所事故後の地域住民の不安感の払拭にも貢献するため,地質調査総合センターにおいてエアロゾル中の放射性核種の観測を2012 年も継続して行った.前報告(本誌,63,107-118)に引き続き2012 年1 月から2012 年12 月までの観測データを報告する.放射性Cs同位体のエアロゾル濃度は,2012年4 月より低下しており,北よりの風から南よりの風に変わり降雨の日が多くなったことと良く対応していた.また、幾つかの濃度増加は強風時の再飛散によるものと推定された.前報告では2011 年のエアロゾル中Cs-137濃度に対する気象の影響は不明瞭であったが,本研究では後方流跡線解析を適用することで,濃度変化が気象状況の影響を受けていたことをより明瞭に示すことができた.また,濃度既知の試料を本研究において再測定した結果,測定上の大きな問題点は無いものと考えられた.
西南日本南条山地における遠洋性チャートから産出した三畳紀– 中期ジュラ紀放散虫 - 第2部.冠山地域
中江 訓
西南日本福井県中央部に位置する南条山地の主要域には,玄武岩・石灰岩・チャート・泥岩・砂岩などの多様な岩石から構成される堆積岩複合岩体が分布する.南条山地におけるこれらの岩石のうち27 地点の露頭から採取したチャートについて,含有される放散虫化石の検討を行った.その結果,冠山地域では17 地点26 試料からSpumellaria 目ならびにEntactinaria 目が卓越する三畳紀群集とNassellaria 目が卓越するジュラ紀群集が産出した.本報告ではこれらの放散虫化石群集を記載するとともに,その種構成に基づき冠山地域に分布するチャートの地質時代は前期三畳紀(Olenekian)〜中期ジュラ紀(Bajocian)に至ると結論した.
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