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地質調査研究報告 Vol.62 No.7/8 (2011)

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表紙

華南の鉱山町、大廠 (ダーチャン)

華南の鉱山町、大廠 (ダーチャン)

   華南の著名な花崗岩地帯を通りすぎるとベトナムにかけて石灰岩を主とする堆積岩地帯であり、そこでは遠方に小さな角張った稜線が連なる独特の石灰岩地形がみられる。近づくと、この大廠に見られるように三角形状のピークが連なる。河川によりそれぞれの麓が溶解したものが、桂林 に見られるような見事な石灰岩タワーを形成する。大廠はこの様なデボン紀の石灰質岩中に発見された錫含有鉛亜鉛鉱床を採掘するために作られた鉱山町であり、その為に鉱山開発が最優先されて狭い傾斜地に数多くの鉱山設備や住宅が作られている。鉱石は、主に不純なドロマイト質石灰岩類の層理面に沿うが、スカルン化は受けていない。また角礫パイプ状・脈状などの産状も多く、鉱化作用は白亜紀花崗岩質斑岩類と密接に産し、微量成分としてのスズ・インジウムにするため、火成鉱床と考えられる (本文、 p. 259-272参照)。

(写真・文 : 石原舜三)

目次

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タイトル著者 PDF
論文
Indium concentration in zinc ores in plutonic and volcanic environments: examples at the Dulong and Dachang mines, South China Shunso Ishihara, Hiroyasu Murakami and Xiaofeng Li (259-272) 62_07_01.pdf [2.9MB]
概報
新潟県加茂地域、三条市塩野淵の中部中新統七谷層中に見つかったテフラの記載岩石学的特徴とフィッション・トラック年代 工藤  崇・檀原  徹・岩野英樹・山下  透・柳沢幸夫 (273-280) 62_07_02.pdf [1.7MB]
関東平野中央部埼玉県菖蒲町で掘削された350mボーリングコア (GS-SB-1) から産出した花粉化石群集 本郷美佐緒・納谷友規・山口正秋・水野清秀 (281-318) 62_07_03.pdf [5.6MB]
資料・解説
新解析戦略の組み込みによる産総研GPS定常解析システムの更新 大谷  竜・板場智史・梅田康弘・北川有一・松本則夫・高橋誠・小泉尚嗣 (319-328) 62_07_04.pdf [1.8MB]

 

要旨集

深成・火山性環境下の亜鉛鉱石におけるインジウム濃集:華南の都竜と大廠鉱床の場合

石原舜三・村上浩康・李  曉峰 (リーシャオフェン)

   中国を代表する5,000 トンIn級のインジウム鉱床、都龍と大廠の鉱石を分析し、その地球化学的な考察を行った。都龍鉱床の鉱石は、平均1,000 In/Zn 比=4.1を持ち、大廠鉱床の鉱石は、2.6-3.1 と同程度である。しかし都龍鉱床の鉱石は銀とアンチモンに乏しく、タングステンに富んでいる。大廠鉱床の鉱石は銀とアンチモンに富んでおり、2 成分図上で豊羽鉱床の鉱石と類似した領域にプロットされる。これらの性質・母岩・貫入花崗岩類を考慮すると、都龍鉱床はS- タイプチタン鉄鉱系花崗岩の貫入により "深成環境" で、大廠鉱床はより浅い亜火山性環境で生成した可能性が大きく、インジウムの濃集には "深成岩" よりも、より浅成の火山性環境が適しているものと考えられる。

新潟県加茂地域、三条市塩野淵の中部中新統七谷層中に見つかったテフラの記載岩石学的特徴とフィッション・トラック年代

工藤  崇・檀原  徹・岩野英樹・山下  透・柳沢幸夫

   新潟県加茂地域、三条市塩野淵において、中部中新統の七谷層から黒雲母に富むテフラを発見し、塩野淵バイオタイト (Sbi) テフラと命名した。本テフラは灰色を呈する層厚9 cm の結晶質中粒〜極粗粒砂サイズの凝灰岩で、七谷層の玄武岩〜安山岩火山砕屑岩と明灰色塊状泥岩の間に挟在する。本テフラの構成鉱物は、斜長石 (オリゴクレース及びバイトゥナイト組成)、石英、サニディン、黒雲母、不透明鉱物を主体とし、微量のジルコンと褐れん石を伴う。本テフラのジルコンFT 年代は13.8±0.3 Ma であり、微化石層序と調和する。本テフラは、同じく七谷層に挟在し、紀伊半島の室生火砕流堆積物に対比されるKbi テフラと同様な層準にあり、非常によく似た層相を示す。しかし、Sbi テフラとKbi テフラは、斜長石組成の不一致、微量に含まれる重鉱物の組み合わせの不一致、ジルコンのウラン濃度の不一致から対比されない。したがって、今後、両者の対比にあたっては注意が必要である。

関東平野中央部埼玉県菖蒲町で掘削された350mボーリングコア (GS-SB-1) から産出した花粉化石群集

本郷美佐緒・納谷友規・山口正秋・水野清秀

   関東平野中央部の地下に分布する更新統の標準となる花粉層序を構築するため、埼玉県菖蒲町で掘削されたボーリングコアを対象として花粉分析を行った。花粉分帯の初歩段階として、局地的な植生変化を示唆する分類群の組み合わせに基づき、35 帯の地域花粉群集帯に区分した。また、花粉化石による上部更新統、中部更新統及び下部更新統の各指標層準について検討した。これらと古地磁気、岩相、テフラ層序の対応を検討し、地域花粉帯の層序学的位置を明らかにした。一方、区分した35 帯のうち、SB-Pol-9 帯 (深度61.610- 68.390 m) 及びSB-Pol-24 帯 (深度237.460- 241.940 m) は、木本植物花粉の産出粒数が著しく少ない層序区間であった。これらの帯の特徴や生層序学的位置づけは今後他地点の調査により明らかにしていく必要がある。

新解析戦略の組み込みによる産総研GPS定常解析システムの更新

大谷  竜・板場智史・梅田康弘・北川有一・松本則夫・高橋誠・小泉尚嗣

   2010 年に行った四国と紀伊半島への新たなGPS 観測局の新設を契機として、産業技術総合研究所地質調査総合センターのGPS 連続観測網で得られたデータの定常解析戦略の更新を行った。今回の更新では、解析ソフトウエアを、従来のBerneseソフトウエアのVersion 4からVersion 5に切り替えると共に、大気遅延勾配の推定などの新たな定常解析戦略を導入した。従来のGPS 連続観測システムの定常解析結果と比べた結果、新解析で推定されたGPS 局の座標値のばらつきの減少が夏季において見られた。