地質調査研究報告 トップへ

地質調査研究報告 Vol.61 No.11/12 (2010)

表紙 | 目次 | 要旨集

表紙

チリの球状花崗岩

チリの球状花崗岩

   チリの北部地域のカルデラ付近の海岸地域を調査中に球状花崗岩を発見した。これは写真で見るように、この地域の主岩相である閃緑岩 (左上) を捕獲して産出し、主岩相より後期である。角閃石の縁取りを持つ “球” が粗粒のピンクカリ長石・石英などに埋められており、マグマ期からペグマタイト期にかけて、水に富む最末期のメルトから浅所で晶出したものと考えられる。

(写真・文 : 石原舜三)

目次

タイトル著者 PDF
論文
チリ北部、カナダのハイランドバレー、モンゴルのエルデネット、中国の徳興、ブルガリアのメデット、日本の阿仁鉱山における鉱化関連花崗岩類の岩石化学的性質 石原舜三・Bruce W. Chappell (383-415 英文) 61_11_01.pdf [1.0 MB]
新潟県津川地域の中部〜上部中新統野村層と常浪層の珪藻化石層序 柳沢幸夫・平中宏典・黒川勝己 (417-443) 61_11_02.pdf [3.6 MB]
根田茂帯の変玄武岩から見出された藍閃石とその意義 内野隆之・川村信人 (445-452) 61_11_03.pdf [1.1 MB]
東京都足立区平野地区から採取した沖積層コア (GS-AHH-1) の堆積相と放射性炭素年代 田辺  晋・中島  礼・吉岡秀佳・竹内美緒・柴田康行 (453-463) 61_11_04.pdf [1.0 MB]
概報
赤城火山起源の後期更新世テフラの記載岩石学的特徴 坂田健太郎・中澤  努 (465-475) 61_11_05.pdf [1.0 MB]
十和田火山、御門石溶岩ドームの形成時期に関する考察 工藤  崇 (477-484) 61_11_06.pdf [1.0 MB]
短報
北部ベトナムからの鉛亜鉛鉱石の硫黄同位体比の予察的研究 石原舜三・Tuan Anh Tran・秦  克章 (485-488 英文) 61_11_07.pdf [100 KB]
資料・解説
青森県上北平野で掘削された中期更新世後半以降の風成堆積物のテフラ層序 桑原拓一郎 (489-494) 61_11_08.pdf [1.0 MB]

要旨集

チリ北部、カナダのハイランドバレー、モンゴルのエルデネット、中国の徳興、ブルガリアのメデット、日本の阿仁鉱山における鉱化関連花崗岩類の岩石化学的性質

石原舜三・Bruce W. Chappell

   チリ北部の中生代-新生代花崗岩類を蛍光X線回折法で再分析すると共に、その他地域のポーフィリー型銅鉱床に関係する花崗岩類を同一方法で分析した。チリでは北部、中部、南部の3測線で海岸部 (ジュラ紀) から内陸部 (第三紀) に至る広域的花崗岩類試料が解析された。ハーカー図において内陸へ増加する傾向を示す成分はAl2O3、Na2O、P2O5とSrである。他方、減少の傾向を示す成分はY、全鉄とVである。したがって、高いSr/Y比を持つ花崗岩類が内陸部の若い時代に産出することになる。
   世界のその他の対象地域はカナダの B.C.州のハイランドバレー鉱床地域、モンゴルのエルデネット鉱床、中国の徳興鉱床、ブルガリアのメデット鉱床、日本の阿仁鉱床などである。研究した諸岩石は帯磁率測定とFe2O3とFeOの分析により、全て磁鉄鉱系に属することが明白で、この酸化型マグマの存在は全鉱床で共通する性質である。アルミナ飽和指数 (ASI) は1.1より小さく、したがって I タイプに属すると判定された。多くの花崗岩類は K2O-SiO2図上で、高カリウム系列の領域にプロットされるが、ハイランドバレー地域の花崗岩類は低〜中Kシリーズに属し、カリウムに乏しい。チリの一部とエルデネット花崗岩類が最もカリウムに富み、ショショナイトも産出する。
   その他の成分では、チリの花崗岩類はP2O5に乏しい。ハイランドバレー鉱床とメデット鉱床の花崗岩類はRbが最低、Srが最大の含有量を持つ。花崗岩類中の微量のCu含有量は大きく変化するが、チリとハイランドバレー鉱床地域の花崗岩類にはその含有量が大きいものが多い。Moは花崗岩類中更に少量であるが、ハイランドバレー、エルデネット、チリの鉱床地域の花崗岩類には、SiO2=60-65 %の中性岩類において5 ppm Moを越える高いものがある。
   ストロンチウムに富みYに乏しい花崗岩類がチリ、ハイランドバレー、徳興、メデット鉱床地域の鉱化花崗岩類にしばしば認められた。これはアダカイトと認定されるもので、その起源物質はまだ温かい海洋底玄武岩類が、沈みこみ運動によって柘榴石が晶出する高圧化に置かれた後に、部分溶融したものと推定された。海洋底玄武岩が海底熱水変質を受け、微量成分としての銅・硫黄を多く含むものが、ポーフィリー型銅鉱床を形成する可能性が高いものと推定された。日本の阿仁鉱床の花崗岩類はアダカイト質とは無縁であり、この事実は中新世の東北日本で沈み込んだ太平洋プレートは海嶺を遠くはなれ、既に冷却していたためと考えられる。

新潟県津川地域の中部〜上部中新統野村層と常浪層の珪藻化石層序

柳沢幸夫・平中宏典・黒川勝己

   新潟県津川地域に分布する中新統野村層上部と常浪層の珪藻化石層序を明らかにした。また、これまでの研究の成果を基に両層の珪藻化石年代層序をまとめた。野村層は珪藻化石帯区分のNPD5B帯〜NPD7A帯に相当し、その年代は約13 Ma〜6.4 Maである。常浪層は中下部がNPD7Ba亜帯に属し、上部は年代指標種が産出しないため確実ではないが上限の年代は中新世/鮮新世境界に達しないと推定される。新潟堆積盆地標準層序との対応関係では、野村層と常浪層は寺泊階にほぼ相当する。

根田茂帯の変玄武岩から見出された藍閃石とその意義

内野隆之・川村信人

   前期石炭紀付加体 (根田茂コンプレックス) よりなる根田茂帯の変玄武岩から藍閃石を見出した。本変玄武岩は藍閃石+緑れん石+石英という鉱物組み合わせから、緑れん石-青色片岩亜相の高圧型変成作用を被ったと考えられる。根田茂帯からは高圧型変成岩類 (建石片岩類) が既に見出されていたが、その後の研究で、付加体形成以降の構造運動によって、根田茂帯に定置させられた先石炭紀高圧型変成岩のテクトニックブロックであることが示されている。産状や変形・再結晶度から判断すると、本変玄武岩は根田茂帯の構成メンバーであると考えられ、本発見は根田茂コンプレックスの一部が高圧型変成作用を被っていたことを初めて示すものである。根田茂コンプレックスと高圧型変成岩である母体変成岩類の岩相類似性から、両者は一連の地質体であると解釈する見方がある。根田茂コンプレックスから見出された高圧型変成作用の証拠はそのような解釈を支持する。

東京都足立区平野地区から採取した沖積層コア (GS-AHH-1) の堆積相と放射性炭素年代

田辺晋・中島礼・吉岡秀佳・竹内美緒・柴田康行

   東京低地の地下に分布する足立区の埋没段丘上において掘削したGS-AHH-1は、下位より堆積相BR (網状河川堆積物)、堆積相TM (潮汐の影響した浅海成堆積物)、堆積相TF (干潟堆積物)、堆積相SM (浅海成堆積物)、PD〜DF (プロデルタ〜デルタフロント堆積物)、MT (現世の干潟堆積物)、AS (盛土) から構成され、堆積相 TF と SM、PD〜DF、MT、AS は下総層群の堆積相 BR と TM に不整合に累重する沖積層であることが明らかになった。堆積相 TF と SM はエスチュアリーシステム、堆積相 PD〜DF と MT、AS はデルタシステムに対比され、最大海氾濫面( 6.9〜7.3 cal kyr BP) はエスチュアリー・デルタシステム境界に認定される。青灰色泥層の堆積相TFは緑灰色泥層の堆積相TMに明瞭な境界面を介して累重しており、足立区の埋没段丘上では泥層の色調の違いが、下総層群・沖積層境界を認定するうえで重要であることが明らかになった。

赤城火山起源の後期更新世テフラの記載岩石学的特徴

坂田健太郎・中澤  努

   群馬県桐生市黒保根町水沼の露頭にみられる主に赤城火山起源の後期更新世テフラについて記載岩石学的特徴の検討を行った。層厚の大きいテフラについては、降下ユニットごとに検討し記載した。その結果、Ag-Nm2、Ag-UP、Ag-KPには同一テフラ内でも異なる屈折率を示す降下ユニットが存在することが明らかになった。このような降下ユニットごとの屈折率特性の差異は今後のテフラの対比・同定に有効であると考えられる。またAg-MzP3、Ag- MzP2、Ag-Nm2、Ag-UPの斜方輝石・角閃石の屈折率は、一般的な赤城火山起源テフラの屈折率から外れた特徴的な値を示し、対比に重要と考えられる。

十和田火山、御門石溶岩ドームの形成時期に関する考察

工藤  崇

   十和田火山後カルデラ期噴出物の岩石学的特徴を用いて、御門石溶岩ドームの形成時期の推定を試みた。御門石溶岩ドームは全岩 SiO2量が66.4 wt.%のデイサイトであり、斑晶鉱物として斜長石、単斜輝石、斜方輝石及び鉄チタン鉱物を含む。岩石学的特徴からみると、御門石溶岩ドームは現時点で知られている後カルデラ期のどのテフラとも対比されない。このことは、御門石溶岩ドームを形成した噴火が顕著な火砕噴火を伴わなかったことを示す。後カルデラ期におけるマグマ組成の時間変化傾向から考えると、御門石溶岩ドームの形成は11.7-2.7cal kyr BP の間のいずれかの時期に起こったと推定される。

北部ベトナムからの鉛亜鉛鉱石の硫黄同位体比の予察的研究

石原舜三・Tuan Anh Tran・秦  克章

   北部ベトナム産の代表的鉛亜鉛鉱床の供給鉱石・亜鉛精鉱・鉛精鉱の硫黄同位体比 (δ34S) を測定した。三畳紀流紋岩中の鉛亜鉛鉱床産試料は+ 3.4 〜+ 4.7 ‰であり、古生代堆積岩類中の鉱石試料はやや重い+ 4.4 〜+ 8.2 ‰を示した。ミシシピーバレー型鉛亜鉛鉱石に相当する重い値は得られなかった。鉛精鉱は亜鉛精鉱よりも常に軽い値を示した。Cho Dien 鉱山からの鉛精鉱・亜鉛精鉱は著しく低い値を示し、それらの原鉱の硫黄同位体比を精査する必要がある。