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地質調査研究報告 Vol.61 No.9/10 (2010)

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表紙

透過光下のインジウムを多く含む黒色閃亜鉛鉱

透過光下のインジウムを多く含む黒色閃亜鉛鉱

   中国最南東部にはインジウムを産する幾つかの鉱床があるが、ベトナム北部の鉛亜鉛鉱床にもインジウムが含まれる。その鉱床は黒色の閃亜鉛鉱を多く含み、インジウムはその陽イオンを置換して存在するものと思われる。写真は Cho Don 地域の Na Tum 鉱床の一例で、透過光下で赤褐色を呈する。右上の黒色四角は黄鉄鉱は早期晶出、左の上下脈は最末期の炭酸塩鉱物脈で、閃亜鉛鉱・白色の石英その他の全ての構成鉱物を切断している (スケール : 上下1.8 mm)。

(写真・文 : 石原舜三)

目次

タイトル著者PDF
論文
北部ベトナム産の鉛亜鉛鉱石の化学的特徴、特にインジウム含有量について 石原舜三・T-A.Tran・渡辺  寧・T-H.Tran (307-323) 61_09_01.pdf [4.9 MB]
新潟県・山形県県境金丸ウラン鉱床地区における中新統釜杭層ウラン濃集層に含まれる有機物の特徴 山本正伸・関  陽児・内藤一樹・渡部芳夫 (325-336) 61_09_02.pdf [1.8 MB]
浅部応力方位測定のためのレーザー式孔径変化測定装置の開発 木口  努・桑原保人・佐藤凡子・横山幸也 (337-350) 61_09_03.pdf [1.7MB]
資料・解説
音響層序単元の公式位置付け (試論) 辻野  匠 (351-364) 61_09_04.pdf [1.7MB]
新潟県加茂地域 (蒲原山地西部) に分布する足尾帯前期ジュラ紀付加コンプレックスの地質図と岩相 内野隆之 (365-381) 61_09_05.pdf [6.9MB]

要旨集

北部ベトナム産の鉛亜鉛鉱石の化学的特徴、特にインジウム含有量について

石原舜三・T-A.Tran・渡辺  寧・T-H.Tran

   インジウムに富む閃亜鉛鉱を探す目的で、ベトナム最北部の古生代堆積岩類に胚胎する鉛亜鉛鉱石を分析した。ここではインジウム (In) 異常と共に、これら鉱床をミシシッピーバレー型とする見解も提案されている。今回の研究の結果、鉱床は下記のような多種類に亘ることが判明した。(1) REEに富む (最大 1210ppm) 鉛-亜鉛鉱床 (NaSom)。これは流紋岩と関係し、変質鉱物から高温熱水性と考えられる。(2) In と Fe に富む亜鉛 > 鉛-磁硫鉄鉱鉱床 (NaBop)。これは還元的な高温熱水性である。(3) In と Fe に乏しい閃亜鉛鉱 > 方鉛鉱鉱床 (LangHich、MiTic,Phudo)、(4) Mn 炭酸塩に富む鉄閃亜鉛鉱 > 方鉛鉱鉱床 (CucDuong)。上記2者は低温熱水性である。BacKan 地区では NaBop 鉱床の鉛亜鉛鉱石からは、経済性を持つ In 異常が発見され、ChoDien 鉱床からは弱い In 異常が発見された。これら鉱石は花崗岩質岩脈に近い鉱床で産し、鉄に富む黒色閃亜鉛鉱と磁硫鉄鉱を多く含み、還元的高温熱水性環境下の生成である。ChoDien では多数の鉛亜鉛鉱床が発見されており、それらは ChoDien ドーム構造を持つ古生層中に胚胎する。ドームの下部には珪長質貫入岩が潜在するものと思われ、その結果として多くの鉱床がここに生成されたものと考えられる。貫入岩はチタン鉄鉱系のスズ花崗岩であり、花崗岩に近い鉱床にインジウムは濃集した可能性が大きい。鉱石の閃亜鉛鉱中のインジウム最高値 Insp=391 及び NaBop 鉱山の亜鉛精鉱中の 898ppmIn は、共にインジウムが経済性を持つことを示唆している。

新潟県・山形県県境金丸ウラン鉱床地区における中新統釜杭層ウラン濃集層に含まれる有機物の特徴

山本正伸・関  陽児・内藤一樹・渡部芳夫

   新潟県・山形県県境金丸ウラン鉱床地区において掘削採取された中新統釜杭層コア試料についてケロジェンとバイオマーカーの分析を行い、ウラン濃集層 (U=25-100ppm; Th=23-42ppm) に含まれる有機物の特徴を明らかにした。
   ビジュアルケロジェン分析により、有機炭素量の高い試料では、木質ケロジェンが多く、有機炭素量が低い試料では、無定型ケロジェンが多いことが示された。熱分解ガスクロマトグラフ質量分析により、熱分解物は主にアルキル芳香族炭化水素 (アルキルベンゼン、アルキルインデン、アルキルナフタレンなど) と n-アルカンからなり、鎖状イソプレノイドアルカン、n-アルケン、n-脂肪酸を微量伴うことが示された。これらの多くは、陸上高等植物に由来する III 型ケロジェンに特徴的な化合物である。これらの結果から、本分析試料中の無定型ケロジェンは、木質ケロジェンと同様に、陸上高等植物起源であり、強く酸化分解を被り、材の形状を失い、無定型化したものであると考えられる。
   炭質頁岩中のマツ花粉の色度 (TAI) は約2.6であった。またロックエバル分析による Tmax 値は 441℃-444℃ であった。これらから、試料の熟成度が初期カタジェネシス期段階に達したことが示された。また、熱分解生成物中に、ホパンの異性体のうち、続成作用により生成する異性体が多いことからも、カタジェネシス期段階の熟成度が指示される。
   掘削井において、ウラン濃度とウラン/トリウム比のピークは岩相境界に対応しているが、有機炭素量ピークよりも2メートル浅い。この有機炭素ピークとウラン濃度ピークが一致しないことから、有機物がウラン濃集には関与していないことが示唆される。地下水位が高かった時代に、岩相境界において酸化還元電位の勾配が生じ、そこでウランが濃縮した可能性が考えられる。

地層水等におけるウラン系列核種とコロイド挙動
- 新潟・山形県境金丸地域における例- (コロイド特性把握の研究-その2)

山本正伸・関  陽児・内藤一樹・渡部芳夫

新潟県・山形県県境金丸ウラン鉱床地区において掘削採取された中新統釜杭層コア試料についてケロジェンとバイオマーカーの分析を行い、ウラン濃集層 (U=25-100ppm; Th=23-42ppm) に含まれる有機物の特徴を明らかにした。
   ビジュアルケロジェン分析により、有機炭素量の高い試料では、木質ケロジェンが多く、有機炭素量が低い試料では、無定型ケロジェンが多いことが示された。熱分解ガスクロマトグラフ質量分析により、熱分解物は主にアルキル芳香族炭化水素 (アルキルベンゼン、アルキルインデン、アルキルナフタレンなど) と n-アルカンからなり、鎖状イソプレノイドアルカン、n-アルケン、n-脂肪酸を微量伴うことが示された。これらの多くは、陸上高等植物に由来する III 型ケロジェンに特徴的な化合物である。これらの結果から、本分析試料中の無定型ケロジェンは、木質ケロジェンと同様に、陸上高等植物起源であり、強く酸化分解を被り、材の形状を失い、無定型化したものであると考えられる。
   炭質頁岩中のマツ花粉の色度 (TAI) は約2.6であった。またロックエバル分析による Tmax 値は 441℃-444℃ であった。これらから、試料の熟成度が初期カタジェネシス期段階に達したことが示された。また、熱分解生成物中に、ホパンの異性体のうち、続成作用により生成する異性体が多いことからも、カタジェネシス期段階の熟成度が指示される。
   掘削井において、ウラン濃度とウラン/トリウム比のピークは岩相境界に対応しているが、有機炭素量ピークよりも2メートル浅い。この有機炭素ピークとウラン濃度ピークが一致しないことから、有機物がウラン濃集には関与していないことが示唆される。地下水位が高かった時代に、岩相境界において酸化還元電位の勾配が生じ、そこでウランが濃縮した可能性が考えられる。

浅部応力方位測定のためのレーザー式孔径変化測定装置の開発

木口  努・桑原保人・佐藤凡子・横山幸也

   深度20 m程度までの地殻応力方位を測定するために、レーザー変位計を用いて掘削直後のボーリング孔の孔径変化を連続測定する装置を開発した。本装置を用いた新たな応力場評価法は以下の原理・手法に基づいている。1) 異方的な応力がかかった岩盤に孔井を掘削した場合、岩石の持つ粘性の効果によって、掘削直後から孔井は異方的にクリープ変形をする。2) 孔井断面の異方的な変形に楕円を近似することにより、楕円の短軸方向から最大水平圧縮応力の方位を決定する。本手法によって応力方位を求める利点の一つは、応力解放法や水圧破砕法などの既存の手法に比べて非常に簡便で安価に測定できることである。クリープ変形中の孔井壁面の半径方向の変位は、孔軸を中心として連続的に回転するレーザー変位計により非接触で測定される。変位の分解能としては、レーザー変位計からの原データを7500回のスタッキングすることによって、約0.7 μm を実現した。実際の掘削直後の孔井で本測定装置の野外作動試験を行った結果、約半日間の測定で10 μm 程度孔径が大きくなるというクリープ変形を捉えることができ、孔井断面の相対変化量に楕円を近似することから最大水平圧縮応力方位が決定できることを示した。

音響層序単元の公式位置付け (試論)

辻野  匠

   音響層序単元、特に単元名について研究史と現状を踏まえて整理した。音響層序学はシーケンス層序学とともに1970年代から発展したこともあって、「シーケンス」が単元名として使われたこともあった。その後、シーケンス層序学が独自の発展を遂げ、「シーケンス」に独特の意味あいが付け加わったことから、今、音響層序単元に「シーケンス」を使うことは誤解される心配がある。また、単元名に「層」や「層群」と使うこともあるが岩相層序単元との混同が心配される。現時点では音響層序単元を公式化できるような適当な単元名はない。

新潟県加茂地域 (蒲原山地西部) に分布する足尾帯前期ジュラ紀付加コンプレックスの地質図と岩相

内野隆之

   新潟県加茂地域 (蒲原 (かんばら) 山地西部) に分布する足尾帯前期ジュラ紀付加コンプレックスの地質図を公表するとともに岩相及び内部構造について記載した。本論は5万分の1地質図幅「加茂」の調査結果の一部を報告するものである。本地域の前期ジュラ紀付加コンプレックスは、破断した砂岩泥岩互層を主体として、玄武岩類・石灰岩・チャートを含むことを特徴とし、仙見コンプレックスという新称が付与された。仙見コンプレックスは更に、砂岩岩体の卓越で特徴づけられる下部と、玄武岩類及びチャート岩体の卓越で特徴づけられる上部に区分される。本研究は、今後の蒲原山地の付加コンプレックスのテクトニクス解明と、他の足尾帯や美濃-丹波帯などのジュラ紀付加コンプレックスとの詳細な対比の基礎データとして重要である。