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地質調査研究報告 Vol.60 No.11/12 (2009)

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表紙

ラオスの希土類に富む花崗岩風化殻

ラオスの希土類に富む花崗岩風化殻

   ラオス中央部サイソンブーン地区における花崗岩の風化殻。総希土類含有量 885〜3664 ppm であり、ラオスの他の調査地域の風化殻 (36〜339 ppm) に比べて明らかに高い値を示す。コンドライト規格化希土類パターンは重希土類に比べて軽希土類に富むことを示す。希土類は主にイオン交換性粘土鉱物であるカオリナイトおよび希土類リン酸塩鉱物であるモナズ石やラブドフェーンに含まれていると推測される。風化が進んでいるために原岩が確認できないが、岩体は局所的に露出しているものと考えられる。風化花崗岩におけるイオン吸着型の希土類鉱化作用を明らかにするために、さらなる地球化学的・鉱物学的研究を行う必要がある。

(写真と文 : 実松健造)

目次

タイトル著者 PDF
論文
産総研地下水等総合観測網による東南海・南海地震の仮想的プレスリップの検出能力の評価 大谷竜・板場智史・北川有一・佐藤努・松本則夫・高橋誠・小泉尚嗣 (511-525) 60_11_01.pdf [14 MB]
ラオス中南部における花崗岩類とその風化殻中の希土類元素の濃集 実松健造・村上浩康・渡辺  寧・シーサムスン・シーファンドン (527-558) 60_11_02.pdf [13.2 MB]
概報
埼玉県さいたま市で掘削された深作 A-1 ボーリングコアの花粉化石群集 本郷美佐緒・水野清秀 (559-579) 60_11_03.pdf [6.5 MB]
短報
タイ国ピンヨー鉱床産の花崗岩と錫スカルン鉱石の構成鉱物と希土類元素含有量 石原舜三・平野英雄・守山  武 (581-591) 60_11_04.pdf [2.5 MB]

要旨集

産総研地下水等総合観測網による東南海・南海地震の仮想的プレスリップの検出能力の評価

大谷竜・板場智史・北川有一・佐藤努・松本則夫・高橋誠・小泉尚嗣

   産業技術総合研究所 (以下、産総研と呼ぶ) は来るべき東南海・南海地震の短期予知を目指し、大地震発生前に発生するかが論争となっている、プレスリップ (沈み込むプレート上の前駆的なすべり) の検出を一つの目的として、2006 年度より四国・紀伊半島〜愛知県にかけて 12 点の新規観測点を設置した。本研究では、プレスリップによる地殻変動が弾性体の食い違い理論に従うことを仮定した場合、この観測網がどの程度の大きさのプレスリップを検出できる能力があるのかを計算した。その結果、プレスリップが 1 日程度の時定数、12 km ×10 km の空間的な広がりを有し、観測点での線歪のノイズレベルが、これまで産総研観測点で得られた多成分ボアホール歪計のノイズレベルの中でも比較的低い値 (2× 10-8) である条件を満たせば、本観測網内の広範な領域で、モーメントマグニチュード 6.5 程度までのプレスリップを検出できることが分かった。但し、プレスリップの時空間スケールが大きくなると検出能力は低下する。

ラオス中南部における花崗岩類とその風化殻中の希土類元素の濃集

実松健造・村上浩康・渡辺寧・シーサムスン・シーファンドン

   イオン吸着型希土類鉱化作用の資源ポテンシャルを評価することを目的として、ラオス中南部における花崗岩類とその風化殻の地球化学的特徴を本稿において報告する。調査地域の花崗岩類は主に黒雲母±普通角閃石花崗閃緑岩および花崗岩であり、総希土類含有量は低ないし中程度 (36 - 339 ppm) である。これらの花崗岩類は中国南部や西南日本の重希土類に富む花崗岩に比べると軽希土類に富み重希土類に乏しい。この重希土類の濃集における違いは花崗岩としてマグマの分化が十分でなかったことに起因すると考えられる。花崗岩類の風化殻は全体的に発達しており、カオリンやイライトに富む。風化殻は上部から下部に向かって A、B、C 層に分類され、B層は原岩に比べて希土類に富むが、A 層と C 層は一般に希土類含有量が減少するかわずかに増加する程度である。比較的高い希土類含有量を示す風化殻はアタプー地区とサイソンブーン地区において確認される。地球化学データと段階溶出実験結果は、これらの風化殻において希土類の濃集がイオン交換性粘土鉱物や希土類リン酸塩に起因すること、風化によって軽希土類に比べ重希土類が選択的に粘土鉱物に吸着されていることを示唆する。

埼玉県さいたま市で掘削された深作A-1 ボーリングコアの花粉化石群集

本郷美佐緒・水野清秀

   関東平野中央部の地下に分布する更新統の標準となる花粉層序を構築する基礎資料を得るため、前期更新世末と中期更新世末の 2 層準の指標テフラ層を挟む深作 A-1 ボーリングコアを対象として花粉分析を行った。花粉分帯の初歩段階として、局地的な植生変化を示唆する分類群の組み合わせに基づき、28 帯の地域花粉群集帯に区分した。また、花粉化石による中部更新統の指標層準について検討し、Cyclobalanopsis が多産する層準及び Quercus が相対的に多産する層準の上限は、関東地方中・南部での生層序対比だけでなく、他の堆積盆地との対比の上でも有用であることを確認した。一方、深作 A-1 コアの Fs-Pol-22 帯 (深度219.92 〜 233.30 m) は、木本植物花粉の産出粒数が著しく少ない層序区間であり、この帯の生層序学的位置づけの検討は、未解決課題として残される。

タイ国ピンヨー鉱床産の花崗岩と錫スカルン鉱石の構成鉱物と希土類元素含有量

石原舜三・平野英雄・守山武

   REE 含有量が高いと予想される錫花崗岩がスカルン鉱床を形成時に REE 成分を濃集する仮定のもとに、タイ南部、ピンヨー鉱山の錫スカルン鉱床の構成鉱物と REE 含有量を光学的および化学的に調べた。鉱化関係花崗岩は三畳紀のチタン鉄鉱系黒雲母花崗岩で若干の二次的白雲母を含み、シリカ (75.0 % SiO2) とカリウム (5.2% K2O) に富み、中程度の錫 (12 ppm Sn) と REE+Y 含有量 (232 ppm) を持つ。REE+Y に富む微量鉱物として、鏡下で褐簾石・モナズ石・ジルコン・アパタイトが観察される。
   スカルン鉱石の主構成鉱物は単斜輝石 (40 〜 90vol.%)、グロシュラー柘榴石 (2 〜 20 vol.%)、スティルプノメレン (2 〜 20 vol.%)、珪灰鉄鉱 (〜 5 vol.%)、方解石 (〜 10 vol.%)、石英 (〜 10 vol.%) である。硫化鉱物成分では、砒素が部分的に多く含まれ (4,490 ppmAs)、これは恐らく硫砒鉄鉱として含まれている。スカルン鉱石の錫含有量は 7,070 ppm 以下で、多数の微細な錫石として認められる。マラヤ石は確認できなかった。スカルン鉱石の REE+Y 含有量は 77110903-6 試料で327ppm、77110309-5 試料で 260 ppm とやや高く、これら試料には褐簾石が含まれる。その他のスカルン鉱石のREE+Y は非常に低く、REE+Y 鉱物も確認できなかった。