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地質調査研究報告 Vol.57 No.9/10 (2006)

表紙 | 目次 | 要旨集

特集 : 大都市圏の平野地下地質・構造の総合研究
-その2 : 沖積層のボーリングコア解析と物理探査-

表紙

東京低地東縁における N 値断面図

東京低地東縁における N 値断面図

   都市地質研究プロジェクトでは、2004 年に東京都葛飾区において 2 本の沖積層ボーリングコア堆積物 (GS-KNJ-1 と GS-KTS-1) を掘削した。ボーリングコア堆積物から認定した堆積相と N 値断面図の対比の結果、葛飾区付近には、かつて奥東京湾口の恒流によって形成されたと考えられる砂嘴が発達したことが明らかとなった。GS-KTS-1 の西側の矢印は完新世中期以降の砂嘴の前進を示す。これらの N 値断面図は、ボーリング柱状図資料から抽出した N 値の深度 1 m ごと平面分布を、逆距離加重 (IDW) 法によってグリッド補間し、重ね合わせたものである。詳細は本特集号の田辺ほか (2006) と Eto et al.(2006)を参照。

(田辺  晋・木村克己)

目次

タイトル著者PDF
巻頭言
都市地質研究の展開 (その2) 木村克己 (259-260) 57_09_01.pdf [144 KB]
論文
京都葛飾区における沖積層の堆積相と堆積物物性 :
奥東京湾口の砂嘴堆積物の時空間分布
田辺  晋・中島  礼・中西利典・石原与四郎・宮地良典・木村克己・中山俊雄・柴田康行 (261-288) 57_09_02.pdf [3,099 KB]
東京都足立区本木地区から採取した沖積層ボーリングコア堆積物 (GS-AMG-1) の堆積相、放射性炭素年代と物性 田辺  晋・中島  礼・中西利典・木村克己・柴田康行 (289-307) 57_09_03.pdf [1,515 KB]
埼玉県草加市及び三郷市周辺における小規模微動アレイ探査を用いた埋没谷地形の把握 林  宏一・稲崎富士・鈴木晴彦 (309-325) 57_09_04.pdf [3,394 KB]

要旨集

東京都葛飾区における沖積層の堆積相と堆積物物性 :
奥東京湾口の砂嘴堆積物の時空間分布

田辺  晋・中島  礼・中西利典・石原与四郎・
宮地良典・木村克己・中山俊雄・柴田康行

   下総台地と接する東京低地の東縁には、標高 -40 〜 0 m に N 値 20 〜 50 の砂体が分布している。この砂体は中・上部更新統の下総層群や沖積層の中間砂層として解釈されてきた。しかし、その詳細な分布や成因については不明な点が多い。東京都葛飾区の新宿地区と高砂地区から採取した 2 本のボーリングコア堆積物の岩相と生物化石相の詳細な観察と放射性炭素年代測定の結果、この砂体は下総台地の南縁の市川砂州から北西方向に伸長する砂嘴堆積物であることが明らかになった。砂嘴は、完新世中期以降、奥東京湾口の千葉県市川市から葛飾区高砂地区にかけて幅 5 km にわたって発達した。砂嘴堆積物の本体は貝化石が点在する砂層から構成されるのに対し、その縁辺は再堆積した貝化石や中礫を多く含む砂泥互層から構成される。砂嘴堆積物は、東京低地の臨海部や中川低地に分布するデルタ性の内湾泥層と比べ、砂粒含有率と密度が大きな砂層から構成される。よって、その分布は地震動予測や都市計画を行うにあたって重要になると考えられる。

東京都足立区本木地区から採取した沖積層ボーリングコア堆積物 (GS-AMG-1) の堆積相、放射性炭素年代と物性

田辺  晋・中島  礼・中西利典・木村克己・柴田康行

   荒川流系の末端の東京都足立区本木地区には、最終氷期最盛期までに形成された開析谷を充填する河成から海成の沖積層が分布している。そして、この地域の沖積層は中川や古東京川流域のものと比べ、厚層な河成の砂質堆積物から構成されることを特徴とする。荒川の開析谷軸部において掘削した GS-AMG-1 ボーリングコア堆積物の堆積相解析、放射性炭素年代と物性の測定の結果、T.P.-55.7 m 以浅に分布する沖積層は、下位より、(1) 礫層 (網状河川チャネル堆積物)、(2) 砂層と泥炭質なシルト層 (蛇行河川氾濫原堆積物)、(3) 砂層 (潮流の影響した河川チャネル堆積物)、(4) 貝化石を含む砂泥互層 (潮汐の影響した上方深海化する浅海性堆積物)、(5) 貝化石を含むシルト‐砂質シルト層 (プロデルタ‐デルタフロント堆積物)、(6) 生痕化石のみられる砂泥互層 (干潟堆積物)、(7) 泥炭質なシルト層 (現世の蛇行河川氾濫原堆積物)、埋土から構成されることが明らかになった。( 2 ) 〜( 4 ) の上方深海化サクセション (12,940 ± 100 〜 8,030 ± 110 cal BP) と (5)〜(7)の上方浅海化サクセション (6,660 ± 180 〜 2,245 ± 95 cal BP) は、それぞれ最終氷期最盛期以降の海水準上昇と完新世中期以降の海水準の安定もしくは緩やかな下降に伴ってコアサイトに堆積したと考えられる。既報の厚層な河成砂質堆積物は (3)と対比される。GS-AMG-1 の沖積層の密度と含水率、N 値は、砂泥含有率と相関する。

埼玉県草加市及び三郷市周辺における小規模微動アレイ探査を用いた埋没谷地形の把握

林  宏一・稲崎富士・鈴木晴彦

   埼玉県草加市及び三郷市周辺の中川低地において、小規模微動アレイ探査により沖積層が厚く堆積している埋没谷の形状を地表から非破壊で求めることを試みた。テストフィールドは約 6 km × 4 km の長方形であり、この範囲で 104 点の小規模微動アレイ探査を行った。公園などの開けた場所では正三角形のアレイを用いたが、多くの点では道路脇や交差点などを用いた L 字型のアレイにより測定を行った。解析の結果、自動車などによる非定常な振動や、非等方なアレイにも関わらず、ほぼ全点において明瞭な分散曲線を求めることができた。得られた分散曲線から逆解析により、深度 70 m 程度までの S 波速度構造を求め埋没谷の形状を推定した。得られた S 波速度構造及び埋没谷の形状は、PS 検層結果や既存のボーリングデータなどから推定される地盤構造と調和的であり、本手法の有効性を立証することができた。