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地質調査研究報告 Vol.57 No.7/8 (2006)

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表紙

冠山東方の頂部緩斜面

冠山東方の頂部緩斜面

   石川・福井・岐阜三県にまたがる両白山地は、標高 1,200〜1,600 m とそれほど高くはないが、深い谷に刻まれた急峻な地形を呈する。しかし、急峻な山腹斜面を登りつめると、一転しておやかな山上の別天地・頂部緩斜面が広がる。写真は、冠山 (標高 1,256 m) の東に広がる頂緩斜面の "冠平" で、緩斜面上の凹地と山腹斜面の逆向き低崖が認められる。このような頂緩斜面は、基盤をなす主にジュラ紀付加体の美濃帯堆積岩類の岩盤すべりによって生じた線凹地を砕屑物が埋めて生じた地形と考えられている。しかし、その形成プロセスや形成時期は未だ研究途上である。

(小松原  琢)

目次

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論文
伊豆弧北端の火山岩類と地殻構造 - 山北南大深度観測井の箱根火山、先箱根火山岩類から - 津久井雅志・山崎  優・松井智之・小山田浩子・上杉  陽・
林  広樹・柳沢幸夫・笠原敬司 (197-215)
57_07_01.pdf [1,650 KB]
宇都宮市宝積寺段丘で掘削された UT05 コアの層序記載と鬼怒川の堆積侵食履歴 山元孝広 (217-228) 57_07_02.pdf [1,020 KB]
概報
中部地方・両白山地西部の右横ずれ活断層 小松原  琢 (229-237) 57_07_03.pdf [1,474 KB]
資料・解説
日本に分布する第四紀後期広域テフラの主元素組成 - K2O-TiO2 図によるテフラの識別 青木かおり・町田  洋 (239-258) 57_07_04.pdf [1,320 KB]

要旨集

伊豆弧北端の火山岩類と地殻構造
―山北南大深度観測井の箱根火山、先箱根火山岩類から―

津久井雅志・山崎  優・松井智之・小山田浩子・
上杉  陽・林  広樹・柳沢幸夫・笠原敬司

   南関東足柄平野北縁の神奈川県山北町において、大都市大震災軽減化特別プロジェクト (大大特) により深度 2,035.4 m のボーリング掘削が実施された。足柄地域ではフィリピン海プレートが北アメリカプレートに対し部分的に衝突しながら沈み込んでいる、とされる。この 2 つのプレートは国府津‐松田断層、神縄断層、中津川断層系、塩沢断層系、日向断層などの衝上断層群で接しており、これらの衝上断層は全体として八の字形に配置している。掘削地点はフィリピン海プレートの北端に位置し、箱根火山の火山麓扇状地の上にある。
   本研究では深度 0 m から 1,076.6 m までのオールコア試料を検討した。55 試料の全岩主成分分析と顕微鏡観察結果を基に、コアを 4 層序単位に分けた。最下部のグループ I (深度 721.3 m 以深) は、年代的には足柄層群と同時期の堆積物であり、岩石学的に箱根火山とは異なる。一方、上位のグループ II 〜 IV (深度 13 〜 721.3 m) は箱根外輪山噴出物に相当する。したがって箱根火山の基盤最上部は海面下 570 m にある。岩質と岩石学的観察からは、コア中に断層や層序単位の繰り返しを確認することはできなかった。
   これまでのボーリングのデータも含めて箱根火山の基盤岩の高度分布をまとめると、海抜 500 m 以上の尾根状の高まりが火山体中央部を南北に縦走し、東西山麓では海面下 370 〜 700 m に没していることが推定された。

宇都宮市宝積寺段丘で掘削された UT05 コアの層序記載と鬼怒川の堆積侵食履歴

山元孝広

   中期更新世以降の河成段丘が模式的に発達する北関東内陸部の宇都宮市周辺で、段丘編年と河川による侵食堆積履歴を明らかにする目的のもと地表調査とボーリング掘削 (UT05 孔) を行った。掘削対象は宝積寺段丘で、40 m のオールコアボーリングを行い、地表‐深度 15.40 m 間が宝積寺段丘被覆風成層、深度 15.40 〜 18.88 m 間が宝積寺段丘河川堆積物、深度 18.88 〜 40.00 m が下部更新統境林層からなる層序を明らかにした。被覆風成層は主に褐色の火山灰土からなり、多数の降下テフラ群が挟まれている。宝積寺段丘河川堆積物は固結度の低い礫・砂からなる。その上面高度は現鬼怒川の沖積面よりも約 2 m 高く、基底面高度は沖積面よりも約 1.5 m 低い。境林層は、基質のやや固結した礫・砂から構成される河川堆積物からなる。
   周辺に分布する他の段丘の編年結果も合わせると、本地域では河川堆積物の累重が以下の氷期に起きている。MIS2-4 に田原・宝木段丘、MIS6 に鹿沼段丘、MIS8 に宝積寺段丘、MIS10 に上欠段丘の河川堆積物が累重・離水した。したがって、これらは気候段丘の典型であり、氷期における山地での砕屑物生産量の増大と降水量の低下が河川における砂礫量/流量比の増加をもたらし、河床が上昇したものと考えられる。本地域鬼怒川沿いでの現河床と段丘河川堆積物の上面との比高は、過去約 35 万年前にまで遡っても 6 m 以内で、年代との相関は認められない。このことは、本地域では侵食堆積作用を加速させるようなユースタシーに対するテクトニックな隆起沈降はほとんど起きていないことを反映している。

中部地方・両白山地西部の右横ずれ活断層

小松原  琢

   両白山地には共役横ずれ活断層群が存在する。このうち右横ずれ活断層は主にジュラ紀の付加体 (美濃帯) と断層の走向がほぼ平行な山地西部に分布する。筆者は金草岳断層と笹ヶ峰断層という 2 つの右横ずれ活断層の地形・地質について記載する。金草岳断層は尾根と谷の系統的右屈曲と山地斜面上の崖地形を有し断層長は 11 km である。この断層の副断層上では崖錐堆積物に基盤岩が衝上する副断層が認められた。笹ケ峰断層沿いでは系統的に谷が S 字状に屈曲する。この活断層の長さは 3 km に過ぎないが、北東延長には長さ 9 km に及ぶリニアメントが追跡できる。この断層上では約 25,000 年前の腐植質土を変位させる高角断層が 1 露頭で認められた。両断層は左ステップ状の断層系をなし、長さ 14 km の起震断層を構成する。