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地質調査研究報告 Vol.57 No.1/2 (2006)

表紙 | 目次 | 要旨集

表紙

那須 - 茶臼岳火山の山頂部

那須 - 茶臼岳火山の山頂部

   栃木県にある茶臼岳火山は那須火山群の中で唯一の活火山で、6 つのマグマ噴火ユニットと 12 枚以上の水蒸気噴火ユニットで構成されている。マグマ噴火は 16 ka (大沢ユニット)、11 ka (湯本ユニット)、9 ka (八幡ユニット)、6 ka (大丸ユニット)、2.6 ka (峰の茶屋ユニット) と西暦 1408〜1410 年に起きている。写真は山頂を構成する西暦 1408〜1410 年噴出物で、水蒸気噴火の降下堆積物 (白色部) とこれを覆う安山岩質溶岩からなる。

(山元孝広)

目次

タイトル著者PDF
論文
自然環境中のマンガン酸化細菌の特性とその影響予測に関する一考察 金井  豊・三田直樹・竹内理恵・吉田信一郎・朽津信明 (1-15) 57_01_01.pdf [800 KB]
1/20万「白河」図幅地域の第四紀火山 : 層序及び放射年代値に関する新知見 山元孝広 (17-28) 57_01_02.pdf [1,451 KB]
概報
Stratigraphy and structure of the Jurassic accretionary complex in the Daigo district, northern Ibaraki and eastern Tochigi Prefectures, central Japan Satoshi Nakae (29-50) 57_01_03.pdf [3,192 KB]
資料・解説
広帯域地震計にて得られた人工地震と反射法測線にて観測された自然地震 大滝壽樹・伊藤  忍・加野直巳・横倉隆伸・山口和雄 (51-55) 57_01_04.pdf [564 KB]
魚津地域下部 ‐ 中部中新統のフィッション・トラック年代測定 伊藤康人・渡辺真人 (57-59) 57_01_05.pdf [361 KB]
講演要旨及びポスター発表概要
第4回深部地質環境研究センター研究発表会講演要旨及びポスター発表概要 (61-71) 57_01_06.pdf [462 KB]

要旨集

自然環境中のマンガン酸化細菌の特性とその影響予測に関する一考察

金井  豊・三田直樹・竹内理恵・吉田信一郎・朽津信明

   洞窟内の沈殿物や河床に生成する沈殿物に棲息する微生物などを日本各地から採取し、その中の微生物のマンガン酸化活性を調べた。更にマンガン酸化能を持つ微生物の分離を行い、その分離株について分類や 16S rDNA による同定を試みた。また、予察的にボーリングコア中のマンガン酸化細菌の調査を行った。
   その結果、洞窟や河床からの沈殿物からはグラム陽性桿菌の BacillusCurtobacterium、グラム陰性桿菌の Burkholderia 等が分離された。ボーリングコアでは 20 m 以深においても微生物の存在が確認され、堆積性の地下環境でも微生物研究が重要であることが示された。更に、微生物生態学的に様々な条件下における微生物のマンガン酸化活性についての実験を行い、最適環境条件等を調査した。
   微生物は核種移行に関わる化学環境に直接・間接的な形で影響を与えるため、微生物の総量、種類とその特質、生存環境と活性の有無とが重要な課題である。このようなデータは微生物の種類ごとに相違すると考えられるため、系統的にデータを収集してデータベース化を進める必要がある。

1/20万「白河」図幅地域の第四紀火山 : 層序及び放射年代値に関する新知見

山元孝広

   1/20 万「白河」図幅地域に分布する第四紀火山の層序と年代に関する新知見を、本報告では記載する。1) 福島県会津布引山の西側に分布し、かつ前期更新世の白河火砕流堆積物群の下位にある安山岩・デイサイトの火砕岩・溶岩流は、これまで未記載の第四紀火山噴出物で、会津布引山火山噴出物と新称する。本火山噴出物からは、1.4 ± 0.2 Ma のジルコン・フィッショントラック年代が得られた。2) 白川火砕流堆積物群は、下位から隈戸・芦野・南倉沢・西郷・天栄火砕流堆積物で構成される。このうち、模式地の芦野火砕流堆積物から1.1 ± 0.2 Ma、福島県須賀川地域の同堆積物から0.96 ± 0.21 Ma のジルコン・フィッショントラック年代を得た。後者の年代値は、層序年代 (1.4 ± 0.2 Ma) よりも若干若い。また、栃木県喜連川丘陵の天栄火砕流堆積物から 0.94 ± 0.20 Ma のジルコン・フィッショントラック年代を得た。3) 鎌房山火砕流堆積物からは 0.41 ± 0.13 Ma のジルコン・フィッショントラック年代を得た。4) 栃木県余笹川から那珂川沿いに分布し、かつ大田原火砕流堆積物と黒磯岩屑なだれ堆積物の間にある岩屑なだれ堆積物を、新たに余笹川岩屑なだれ堆積物と呼ぶ。この堆積物は海洋酸素同位体ステージ 8 に対比される段丘河川堆積物に挟まれる。5) 那須 ‐ 茶臼岳火山噴出物の八幡ユニットから 8,740 ± 40 yBPの AMS 補正 14C 年代値を得た。

Stratigraphy and structure of the Jurassic accretionary complex in the Daigo district, northern Ibaraki and eastern Tochigi Prefectures, central Japan

Satoshi Nakae

   大子地域は茨城県北部 - 栃木県東部にかけての約420 km2 の範囲を持ち、地形的に北東部の阿武隈山地、中央部の低地-丘陵地、西部の八溝山地に識別できる。棚倉構造線によって中央部と画された東側の阿武隈山地は、阿武隈帯に属する白亜紀の変成岩と花崗岩からなり、またこれより西側には、足尾帯に属する三畳紀 - 白亜紀初頭の付加複合体とこれを不整合に覆う中新世の堆積岩類・火山岩類が西部と中央部にそれぞれ分布する。調査範囲は西部の八溝山地に位置する。
   八溝山地を構成する付加複合体は足尾テレーンと呼ばれ、遠洋域から陸源域の堆積環境を示す岩石類が破断した岩相を示し、ジュラ紀にイザナギプレートがアジア大陸に沈み込んだ収束境界に沿って形成されたと考えられている。大子地域の足尾テレーンは岩相・堆積年代・構造関係に基づき、笠間コンプレックスと高取コンプレックスに区分される。笠間コンプレックスは塊状 - 成層砂岩・葉理質泥岩・シルト質泥岩・チャートから構成され、泥岩基質に砂岩・チャートなどの岩塊を含む泥質混在岩をわずかに伴う。高取コンプレックスは岩相的に笠間コンプレックスに類似するが、チャート・泥岩・砂岩から構成されるシークェンスの重複構造で特徴づけられる。笠間コンプレックスは上位の高取コンプレックスと衝上断層で接する。両コンプレックスは西に低角-中角で傾斜するとともにE-Wと NW-SE 方向の軸を持つ褶曲構造を呈し、NNW-SSE と NE-SW の2方向の高角傾斜断層に切られている。