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地質調査研究報告 Vol.56 No.7/8 (2005)

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表紙

モンゴルの花崗岩露頭

モンゴルの花崗岩露頭

   モンゴルは草原の緑が美しい国である。しかし山地は土壌がなく峨峨とした荒山である。花崗岩地域では緩傾斜の割れ目が発達し、扁平な餅状の岩塊を呈する。ウランバートル北東方 70 km の観光地、テレルジにある亀石 (メルヒ  ハト) が良い例である。写真はウランバートル南西方、オンゴン  ハイルハンの後期古生代の黒雲母花崗岩の露岩であり、磁鉄鉱系に属する。水平割れ目は上昇に伴う圧力の解放で生じたものであろう。

(石原舜三)

目次

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論文
北部北上帯、陸中関地域の珪質泥岩から産出した前期ペルム紀放散虫化石 亀高正男・中江  訓・鎌田耕太郎 (237-243) 56_07_01.pdf [980 KB]
Paleozoic and Mesozoic granitic rocks in the Hotont area, central Mongolia Sambuu Oyungerel and Shunso Ishihara (245-258) 56_07_02.pdf [1,725 KB]
Chemical characteristics of water-insoluble components in aeolian dust collected in China in spring 2002 Atsuyuki Ohta, Renjian Zhang, Shigeru Terashima, Yutaka Kanai, Hikari Kamioka, Noboru Imai, Yukihiro Matsuhisa, Hiroshi Shimizu, Yoshio Takahashi, Kenji Kai and Masahiko Hayashi (259-272) 56_07_03.pdf [275 KB]
Observation of mass concentration and particle size of atmospheric aerosol in east Asia and dry deposition in Tsukuba in combination with optical particle counter observation Yutaka Kanai, Atsuyuki Ohta, Hikari Kamioka, Noboru Imai, Hiroshi Shimizu, Yoshio Takahashi, Kenji Kai, Masahiko Hayashi and Renjian Zhang (273-301) 56_07_04.pdf [644 KB]

要旨集

北部北上帯、陸中関地域の珪質泥岩から産出した前期ペルム紀放散虫化石

亀高正男・中江  訓・鎌田耕太郎

   岩手県陸中関地域に分布する北部北上帯付加コンプレックスの赤色珪質泥岩から、前期ペルム紀の放散虫化石が産出した。本報告は、北部北上帯からの古生代放散虫化石の初めての産出報告である。本地域の付加コンプレックスは白亜紀花崗岩類の接触変成作用を被っており、放散虫化石の保存は不良である。得られた放散虫化石群集は Pseudoalbaillella sp. cf. Ps. elegans, Ps. sp. cf. Ps. simplex, Ps. sp. cf. Ps. sakmarensis などで構成されており、これは前期ペルム紀の前期 (Asselian - Sakmarian 前期) の年代を示している。日本列島におけるジュラ紀付加コンプレックスの一般的な海洋プレート層序の岩相と年代の関係に照らし合わせると、この赤色珪質泥岩は堆積時には玄武岩とチャートの間の層準に位置していた可能性が高いと考えられる。

モンゴル中央部、ホトント地域の古生代と中生代の花崗岩類

オユンゲレル  サンブー・石原舜三

   ホトント地域の花崗岩類はバソリス状の後期古生代のデルゲルハーン花崗岩複合体とストック状の前期中生代のエギンダヴァー花崗岩類に2大別される。共に黒雲母花崗岩類を主体とする。デルゲルハーン花崗岩類は低い帯磁率を持ち、その酸素フガシティは QMF 付近であり、前期中生代花崗岩類はより還元的で主にチタン鉄鉱系に属する。前期中生代花崗岩類は通常タイプと高スズ花崗岩に分けられ、後者が当地域で最も還元的である。
   デルゲルハーン花崗岩類はショショナイト質であるのに対し、エギンダヴァー花崗岩類はショショナイト‐高カリウム花崗岩の範疇にプロットされる。両者はハ-カー図上で似た傾向を示すが、デルゲルハーン花崗岩類はエギンダヴァー花崗岩類よりも P2O5 に富み、Fe2O3, TiO2, MgO に乏しい。高スズ花崗岩を除き、その Rb/Sr は低く、分化しているとは言えない。これら花崗岩類は島弧環境下の大陸地殻で発生したものと考えられる。高スズ花崗岩は非造山帯環境の大陸地殻内で小規模に発生したマグマと考えられる。
   デルゲルハーン花崗岩類には小規模な金鉱化作用が見られるが、この岩体は大規模な貴金属あるいはベースメタル鉱床を伴うには侵食が進み過ぎている。また重要な硫化物鉱床を伴うには、マグマの酸化度、分化指数ともに低すぎる。またエギンダヴァー花崗岩類も硫化物鉱床を伴うには還元的すぎる。むしろ還元的な花崗岩に附随する Sn, W, Nb, Ta などの鉱床が期待されるかも知れない。

中国で 2002 年春に採取した風送ダストの非水溶性成分の化学的特徴

太田充恒・張  仁健・寺島  滋・金井  豊・上岡  晃・今井  登・
松久幸敬・清水  洋・高橋嘉夫・甲斐憲次・林  政彦

   2002年春に中国の北京、青島、合肥の3地点で風送ダスト試料を採取し、化学分析を行い、その特徴について検討を行った。大気中ダストは粗い粒径側で濃度が高く、粒径に対する濃度変化は試料採取地点によって異なっていた。ダストイベントが発生した時は、2μm以上の粒子に著しい増加が認められた。一例外を除く全ての試料の化学組成 (Al2O3 Na2O, P2O5, Total Fe2O3, Rb, Zr, and La) は、粗大粒子側ではほぼ濃度が一定であるが1.1 〜 2.1 μm よりも細かい粒子において急激に減少した。この結果は、鉱物質エアロゾルの寄与が細粒粒子で著しく減少することを表している。ただし、3月に北京で観測されたダストイベントでは、これらの元素は粒径変化に関係なくほぼ一定の濃度を示した。この結果は、大規模なダストイベントは細粒粒子においても大量の鉱物質エアロゾルを供給していることを表している。元素濃度と Al2O3 濃度の比を見たところ、粗粒‐中粒にかけてほぼ一定の値を示すものの1 〜 2 μm を境に急激に減少する。すなわち、鉱物組成は粗粒 ‐ 中粒ダストではほぼ均質であるが細粒粒子側で変化することを示している。元素濃度比の粒径に対する変化に着目すると、ダストイベントの有無や3試料採取地点間に系統的な違いは認められなかった。したがって、中国内陸部から運ばれる風送ダストと試料採取地点周辺から巻き上げられた物質の化学組成には共通点が多いことを示している。一方、いくつかの重金属元素 (Cr, Ni, Cu, Zn, Mo, Cd, Sb, Sn, Pb, and Bi) は、鉱物質エアロゾル起源の元素 (Al2O3 など) とは異なる特徴を示した。これらの元素の濃度及び Al2O3 濃度比は粒径が細かくなるに従って著しく増加する。例えば、Cu/Al2O3 比と Pb/Al2O3 比は粒径が細かくなるに従って、10〜100 倍も劇的な増加を示した。これらの粒径に対する変化は細かい粒子ほど人為起源物質の寄与が多いことを示している。

アジア東部における大気中エアロゾル濃度、粒径分布及びつくばにおける乾質降下物の観測と OPC 観測

金井  豊・太田充恒・上岡  晃・今井  登・清水  洋・
高橋嘉夫・甲斐憲次・林  政彦・張  仁健

   日中共同研究「風送ダストの大気中への供給量評価と気候への影響に関する研究 (ADEC)」のなかで、中国の北京、青島、合肥、及び国内の福岡、名古屋、つくば、那覇で2001年春から風送ダストの観測を開始した。本報告では、ハイボリュームエアサンプラーによる全浮遊粒子 (TSP) 濃度とアンダーセン型のローボリュームエアサンプラーによって得られる粒径分布を報告する。更に、つくばにおける2004年3月のOPCによる観測結果や乾質降下物の変動も報告した。
   長期にわたる TSP 観測によって季節変動や地域差が明らかになった。ダスト濃度は概して春に高濃度となり、集中観測期間 (IOPs) が毎年春季に設定された。IOP-2 (2003年3月) や IOP-3 (2004年3月) では大きなダストイベントがほとんど観測されなかったが、2002年4月の IOP-1 では大きなダストイベントが観測された。ダストの粒径分布は、自然起源と人工物起源とを示す二山形を示した。ダストイベントが起こった時には、粗粒フラクションが増加した。粒径分布と粒子数の短期変動を明らかにするために、OPC による観測が2004年の3月に行われた。粒子特性は時間ごとに変動しており、OPC は時間分解能がよいのでエアロゾルの短期変動の観測に非常に有用であることが示された。つくばにおける乾質降下物の変動パターンは TSP のパターンとほぼ類似していた。