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地質調査研究報告 Vol.55 No.9/10 (2004)

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表紙

ジュラ紀付加複合体の海洋プレート層序の上部 (一例)

ジュラ紀付加複合体の海洋プレート層序の上部 (一例)

   海洋プレート層序は、付加複合体に特徴的な層序で、海洋プレートが海嶺で生まれてから海溝に沈み込むまでの歴史を表している。付加複合体においては、海洋プレート上の堆積物が持つ初生的な層序は、付加時の変形により失われているが、一般的には玄武岩、石灰岩、チャート、珪質泥岩、泥岩・砂岩の順に年代が若くなる初生層序 (海洋プレート層序) が復元できる。放散虫化石は、海洋プレート層序における各々の岩相の年代を決定する上で大きな役割を果たしている。この海洋プレート層序の復元は、その地史を考察する上で、また広域的な地質体の対比を行う上で重要である。放散虫化石はすべて豊橋地域の秩父帯 (ジュラ紀付加複合体) から産出したもので、それぞれ 1. Archicapsa ? pachyderma (Tan), 2. Laxtorum ? jurassicum Isozaki et Matsuda, 3. Tricolocapsa plicarum Yao, 4. Tricolocapsa conexa Matsuoka である。スケールバーはすべて100μm を示す。

(堀  常東)

目次

タイトル著者PDF
論文
5万分の1地質図幅「豊橋」地域における秩父帯付加コンプレックスの海洋プレート層序 堀  常東 (271-285) 55_09_01.pdf [544 KB]
資料・解説
5万分の1地質図幅「豊橋」地域の秩父帯チャートから産するペルム紀放散虫化石 堀  常東 (287-301) 55_09_02.pdf [1,696 KB]
5万分の1地質図幅「豊橋」地域の秩父帯チャートから産する三畳紀放散虫化石 堀  常東 (303-334) 55_09_03.pdf [2,829 KB]
5万分の1地質図幅「豊橋」地域の秩父帯チャート及び砕屑岩から産するジュラ紀放散虫化石 堀  常東 (335-388) 55_09_04.pdf [5,832 KB]

要旨集

5万分の1地質図幅「豊橋」地域における秩父帯付加コンプレックスの海洋プレート層序

堀  常東

   豊橋地域に分布する秩父帯付加コンプレックスのチャート、珪質泥岩及び泥岩からペルム紀‐ジュラ紀の放散虫化石を抽出し、それらの示す年代に基づき海洋プレート層序を復元した。丹羽・大塚 (2001) により区分されたユニットAでは、下部ペルム系 ‐ 中部ジュラ系の上部のチャート、中部ジュラ系の上部の珪質泥岩、中部ジュラ系の上部 ‐ 上部ジュラ系の下部の泥岩からなる海洋プレート層序が復元される。ユニットB では、下部ペルム系‐中部ジュラ系の下部のチャート、下部ジュラ系の上部‐中部ジュラ系の上部の珪質泥岩、下部ジュラ系の中部 ‐ 上部ジュラ系の下部の泥岩からなる海洋プレート層序が復元される。ユニットB の泥岩については、(1) チャートより古い泥岩、(2) 長い堆積期間の泥岩が認められる。これらのことは年代的にユニットB を細分することが可能であるのみならず、丹羽・大塚 (2001) の構造層序区分に再考の余地があることを示唆する。