地質調査研究報告 トップへ

地質調査研究報告 Vol.55 No.3/4 (2004)

表紙 | 目次 | 要旨集

表紙

後期白亜紀セノマニアン前期のアンモナイト

後期白亜紀セノマニアン前期のアンモナイト Stoliczkaia (Lamnayella) japonica (Matsumoto, Kimura and Katto). 九州大学標本 GK.H8627 [= 佐賀大学における暫定番号 GS.G282] (左 : 雌型、右 : 雄型)、x1.8.

   この標本は北海道北西部の添牛内地域の朱鞠内川本流沿いの地点 R9040 の中部蝦夷層群 My3 部層の暗灰色泥岩を掘り起こして採集したもので、産状を観察できる。本種は白亜系セノマニアン階下部主要部の Stoliczkaia (Lamnayella) japonica 群集帯を代表する。この群集帯は北海道から九州の同時代層に認められ、その層準はセノマニアン最下部の Graysonites wooldridgei 帯の上位にあり、上限は Mantelliceras saxbii 帯の直下にある。詳しくは本文 (p. 67-92) 参照。

(松本達郎・西田民雄・利光誠一)

目次

タイトル著者PDF
論文
Oxygen isotopic constraints on the geneses of the Cretaceous granitoids in the Kitakami and Abukuma terrains, Northeast Japan Shunso Ishihara and Yukihiro Matsuhisa (57-66) 55_03_01.pdf [560 KB]
The early Cenomanian (Cretaceous) ammonite fauna from the Soeushinai area of Hokkaido, North Japan
(Studies of the Cretaceous ammonites from Hokkaido and Sakhalin-XCVII)
Tatsuro Matsumoto, Tamio Nishida and Seiichi Toshimitsu (67-92) 55_03_02.pdf [2,627 KB]
DMAP.m: A MathematicaR program for three-dimensional mapping of tortuosity and porosity of porous media Yoshito Nakashima and Tetsu Yamaguchi (93-103) 55_03_03.pdf [499 KB]
講演要旨
地質調査総合センター研究発表会講演要旨 (105-108) 55_03_04.pdf [278 KB]
2003年宮城県北部の地震関連の地表・地下地質調査成果発表会講演要旨 (109-112) 55_03_05.pdf [282 KB]

要旨集

東北日本の白亜紀花崗岩類の成因に対する酸素同位体組成からの束縛条件

石原舜三・松久幸敬

   北上山地と阿武隈高地に産出する白亜紀花崗岩類の酸素同位体比 (δ18O SMOW) を48個の全岩試料について新たに報告するとともに、既存値10個とあわせて花崗岩類の起源に関する考察を行った。
   北上山地の白亜紀前期の花崗岩類は主に磁鉄鉱系に属し、低い Sr 同位体比初生値 (0.70363-0.70463) を持つ。δ18O 値は I 帯の花崗岩類で最も低く、この花崗岩類が 18O に枯渇したソレアイト系苦鉄質岩類の部分溶融によって発生した可能性を暗示する。II 帯や Va 帯の花崗岩類には高 87Sr 岩類が認められており、その起源に沈み込む海洋地殻の部分溶融が示唆されている。変質海洋地殻が溶融すれば高い δ18O も期待できるが、II 帯の値は北上山地で平均的なもので特に高くはない。カリウム質の日神子岩体とカルクアルカリ岩系の人首岩体からはやや高い値が得られた。日神子岩体の諸岩石は酸化的で K に富むから、そのような起源物質が上部マントルレベルで必要であり、人首岩体は主にやや還元的なカルクアルカリ岩であるから、その起源物質には大陸地殻下部の若干の堆積岩を含む苦鉄質岩類が考えられる。
   阿武隈高地の花崗岩類は主にチタン鉄鉱系に属し、その Sr 同位体比初生値は北上山地よりやや高く 0.70518 前後である。δ18O 値は北上山地に於ける値よりも全般的に高く、花崗岩系列の相違と一致し、その起源に大陸地殻の堆積性物質の混在が推察される。被貫入岩類の広域変成度が高い西列の花崗岩類は東列のものよりもやや高い δ18O 値を持つ。西列の両雲母花崗岩は最も高い δ18O 値を持ち、この花崗岩類の起源に 18O に富む大陸地殻起源の堆積岩類の比率が最も高く、他の石英閃緑岩-花崗閃緑岩類は主に苦鉄質火成岩起源であったことを示している。

北海道添牛内地域産白亜紀セノマニアン初期のアンモナイトフォーナ

松本達郎・西田民雄・利光誠一

   北海道北西部の添牛内 (そえうしない) 地域の白亜系セノマニアン階下部の主要部には多数のアンモナイトが産出しており、独特のフォーナが認められる。このフォーナに基づき、Stoliczkaia (Lamnayella) japonica 群集帯を認定した。その構成種の中には既に数編の論文に記載された Mariella の特徴種を含んだ諸種があり、また帯の上下限をいくらか越えた生存期間のやや長い既知種も多数含まれる。本帯は既報のセノマニアン最下部の Graysonites wooldridgei 帯の上位にあり、上限は Mantelliceras saxbii 帯の直下で、それぞれ放射年代の測定された凝灰岩層で区切られている。本帯の分布範囲の中には幾分沖合相とみなされる部分もあり、構成種群にいくらかの変化がある。国内・海外の異名で呼ばれている帯との対比についても論述した。なお、S. (Lamnayella) の2種と更に若干の種を図示・記載し、その中で新種 Marshallites hayashii を設立した。

DMAP.m: 多孔質媒体中の屈曲度と空隙率の3次元分布を調べるためのMathematicaRプログラム

中島善人・山口哲

   等方的で不均一な多孔質媒体の空隙構造パラメータ (屈曲度と空隙率) を3次元マッピングする機能をもつ Mathematica プログラムを作成した。そのプログラム、DMAP.m は、パッケージタイプのプログラムで、Mathematica バージョン4あるいはそれ以降で動作する。DMAP.m は、X 線 CT や核磁気共鳴イメージングで取得した、多孔質堆積物や岩石等の3次元画像を読み込む。読み込んだ画像はサブシステムに細分化され、各サブシステムの空隙にランダムに散布された非吸着性のランダムウォーカーが酔歩 (単純立方格子上の lattice walk) で系外に漏れ出ていくという、いわゆる out-diffusion シミュレーションを行う。系外に漏れたウォーカーの積算値の時間変動データをもちいて屈曲度を計算し、酔歩の出発点をランダムに選ぶ過程で空隙の画素にヒットした確率として空隙率を計算した (モンテカルロ積分)。このプログラムのデモンストレーションとして、ランダムパッキングした砂質堆積物の CT 画像を用いて、屈曲度と空隙率のサブシステムサイズ依存性を計算した。なお、このプログラムは、http://staff.aist.go.jp/nakashima.yoshito/progeng.htm で無料ダウンロードできる。