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地質調査研究報告 Vol.53 No.5/6 (2002)

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表紙

京都府亀岡市大谷鉱山のタングステン鉱脈

京都府亀岡市大谷鉱山のタングステン鉱脈

   大谷鉱山は日本一のタングステン鉱床であって、1983年まで稼行された。黒雲母花崗閃緑岩 (固結年令 98.9 Ma) 中の右横ずれの破砕作用で発生した北北東系の割れ目を灰重石・黄銅鉱・磁硫鉄鉱・石英脈が充たす。花崗閃緑岩と鉱脈の硫化物は堆積岩起源の硫黄同位体比を示す (本文461 - 477ページ参照)。写真は中央坑2号脈、1980年当時の北押し引っ立ての天盤写真であり、鉱脈は大きく、また破砕作用を反映した脈跳ね・母岩中の縞状構造が見事である。脈際には "グライゼン" 変質がみられる。鉱山の南方近くには、国指定の天然記念物、稗田野の菫青石仮晶がある。

(写真撮影及び文 : 石原舜三)

目次

タイトル著者PDF
論文
Paired Sulfur Isotopic Belts : Late Cretaceous-Paleogene Ore Deposits of Southwest Japan Shunso Ishihara and Akira Sasaki (461-478) 53_05_01.pdf [8,724 KB]
短報
Re-Os age of molybdenite from the Busetsu two-mica granite, central Japan Shunso Ishihara, Holly J. Stein and Ryoji Tanaka (479-482) 53_05_02.pdf [1,647 KB]
資料・解説
Distribution of mollusc shells in the Sea of Okhotsk, off Hokkaido Akihisa Kitamura, Ikuo Kawakami, Fushima Okamoto, Ken Ikehara, Atushi Noda and Hajime Katayama (483-558) 53_05_03.pdf [15,764 KB]

要旨集

硫黄同位対比の対配列 : 西南日本内帯の白亜紀後期-古第三期鉱床

石原瞬三・佐々木  昭

   西南日本内帯の白亜紀後期-古第三紀の鉱床と岩石産の硫化物を領家帯5個、山陽-苗木帯18個、羽越-関東帯15個、山陰-白川帯47個について δ34S 値を測定した。既発表資料と合わせて鉱床別平均値を、チタン鉄鉱系花崗岩地帯で 109 個、磁鉄鉱系花崗岩地帯で 56 個求めた。δ34S 値は鉱床のタイプや鉱種よりも先ず花崗岩系列により変化し、チタン鉄鉱系地帯では0パ-ミルよりも軽く、磁鉄鉱系地帯では0パ-ミルよりも重い。この対配列は日本列島において特徴的なもので、"日本型" と呼ばれたが、その成因は前弧の圧縮場において形成された付加体と背弧の張力的な構造場においてマグマ活動が生じた結果として説明される。各系列では地域別に δ34S 値と鉱種に変化が見られることがあり、これはその地域の成因的背景を暗示するものとして、ドメインと呼ばれた。チタン鉄鉱系地帯では著しく δ34S 値が低い目玉が現れ、いずれも美濃-丹波帯で代表される付加体で認められる。付加体は深所まで達するために花崗岩マグマの発生に関与し、泥質岩からの還元性硫黄がマグマを経由して鉱床に反映したものと考えられる。京都の大谷-鐘打と山口県東部の目玉では鉱種がタングステンである共通性があり、S と共にWも堆積岩に由来する可能性がある。生野-明延多金属型鉱床は +1 パ-ミル前後の値を持つ珪長質マグマから形成されたが、明延では母岩からの硫黄の供給の可能性も考えられる。

中部地方、武節両雲母花崗岩中の輝水鉛鉱の Re-Os 年代

石原瞬三・ホリ-J.シュタイン・田中亮吏

   岡崎市滝町の中根石材ピットの両雲母花崗岩 (岡崎岩体) に貫入するペグマタイト脈中の輝水鉛鉱の Re-Os 年代測定をコロラド州立大で行った。結果は 76.4±0.3Ma であり、その北東方 7km、松平のモナズ石 CHIME 年代である 77.6±3.7 Ma と良い一致を示した。南東1.5km、米河内からは黒雲母 K-Ar 年代の 74.6 Ma、岡崎岩体の全岩 Re-Os 年代として 82.5±3.9 Maがあるが、Re-Os 法と U-Pb 法の一致性、分析精度を考慮して、岡崎岩体の固結年代は 76 Ma 頃と考えたい。