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地質調査研究報告 Vol.53 No.4 (2002)

表紙 | 目次 | 要旨集

表紙

領家帯中核部における片状花崗閃緑岩(

領家帯中核部における片状花崗閃緑岩("伊奈川花崗岩")の産状。

   苦鉄質包有物は引き伸ばされ、貫入時に偏圧を受けたことが明白。白点はカリ長石斑晶。Iタイプチタン鉄鉱系であるのもかかわらず全岩δ18O値が高く、貫入時の構造運動と地殻物質の関与との関係が推察される (本文 421 ページ参照)。愛知県東加茂郡足助町川端、巴川流域。

(石原舜三)

目次

タイトル著者PDF
論文
Planktonic foraminiferal biostratigraphy of the upper Miocene Kubota Formation in the eastern Tanagura area, Northeast Japan Hiroki Hayashi, Tatsuhiko Yamaguchi, Masaki Takahashi and Yukio Yanagisawa (409-420) 53_04_01.pdf [13,713 KB]
Oxygen isotopic constraints on the geneses of the Cretaceous-Paleogene granitoids in the Inner Zone of Southwest Japan Shunso Ishihara and Yukihiro Matsuhisa (421-438) 53_04_02.pdf [6,619 KB]
短報
北部フォッサマグナ大峰帯火山岩の K-Ar 年代と大峰帯の堆積・変形 三村弘二・原山  智 (439-444) 53_04_03.pdf [7,619 KB]
資料・解説
インドネシアにおける広帯域地震観測網の設営と運用 大滝壽樹・神定健二・関口渉次・金嶋  聡・西村太志・石原  靖・Ibnu Purwana (445-459) 53_04_04.pdf [8,264 KB]

要旨集

福島県東棚倉地域に分布する上部中新統久保田層の浮遊性有孔虫生層序

林  広樹・山口龍彦・高橋雅紀・柳沢幸夫

   福島県東棚倉地域に分布する上部中新統の久保田層から、39種より構成される浮遊性有孔虫化石群集を報告した。得られた群集は、浮遊性有孔虫の産出が乏しい最下部以外の久保田層が、暖流の影響下にある外洋で堆積したことを示唆している。年代指標種である Neogloboquadrina acostaensis の産出、および Globorotalia plesiotumida の非産出、また久保田層中部が Globorotalia merotumida の初産出イベントを含むことから総合的に解釈すると、この群集を含む層準は Blow (1969) の浮遊性有孔虫化石帯 N.16 帯に対比される。この浮遊性有孔虫化石年代は、すでに久保田層について報告されている凝灰岩の放射年代や、石灰質ナンノ化石、放散虫および珪藻化石層序に基づく年代と一致する。本研究では前述の G. merotumida の初産出のほか、N. acostaensis の初産出、Globorotaloides falconarae の初産出、そして Neogloboquadrina cf. mayeri の終産出が認識された。これらの生層準は、日本周辺地域において N.16 帯を認識する有用な指標になると考えられる。

西南日本内帯の白亜紀-古第三紀花崗岩類の成因に対する酸素同位体組成からの束縛条件

石原舜三・松久幸敬

   西南日本内帯の白亜紀-古第三紀花崗岩類の成因を明らかにするために全岩130試料、石英7試料の酸素同位体組成 (SMOW に対する δ18O 値) を測定した。その値は磁鉄鉱系花崗岩類では 6 ‰ 以上、チタン鉄鉱系では 9 ‰ 以上の場合、二次的変化を受けていない、初生的な値と判断される。δ18O 値は磁鉄鉱系で低く、チタン鉄鉱系で高い。磁鉄鉱系の山陰-白川帯では、白川地域で 5.9〜8.1 ‰、奥丹後-鳥取東部で 6.9〜10.6 ‰、三朝-上斉原地域で 6.0〜8.2 ‰ である。一方、チタン鉄鉱系花崗岩類では、山陽-苗木帯の土岐花崗岩体 (無鉱化) で 9.2〜9.8 ‰、タングステン鉱化を伴う苗木花崗岩体で 7.4〜8.1 ‰ であるが、京都の大谷鉱山岩株では逆に 11.7〜12.8 と高い。近畿-中国地方のチタン鉄鉱系花崗岩類は一般に 7.3〜10.8 ‰ の値を持つが、山口県東部のみが 11.6〜12.0 ‰ と例外的に高い。この花崗岩類はその北方のタングステンスカルン鉱床と関係している可能性がある。領家帯の花崗岩類は一般に高い δ18O 値を持つ。中部地方の I 帯の I タイプ花崗岩類は 9.0〜10.9 ‰、II と III 帯の I タイプ花崗岩類が 9.1〜12.1 ‰、S タイプ花崗岩類が 10.5〜12.5 ‰ である。測定値を八丈島の第四紀火山岩類のトレンドに合わせて SiO2 70 % に規格化した δ18O 値を求めて広域的分布を見ると、磁鉄鉱系が主として分布する日本海側で低い値 (< 8 ‰ δ18O) が多く、全般に高い (> 8 ‰ δ18O) 山陽-苗木帯と領家帯で幾つかの極大が認められる (第7図)。δ18O 値 -87Sr/86Sr 初生比図上で磁鉄鉱系花崗岩類は δ18O 値が低く、87Sr/86Sr 初生比が中間的な領域を占める。この事実はこれら花崗岩類が大陸地殻中-下部の火成岩類に主たる起源を有することを示している。他方、チタン鉄鉱系は両同位体比とも一般に高い領域に分布し、大部分は領家変成岩類の平均値と第四紀玄武岩を結んだ領域を占める。この事実は、岩体中に苦鉄質アンクラーヴが多いことと合わせて、I タイプ花崗岩類はマントルからの苦鉄質マグマと地殻深部まで折り畳まれたであろう付加体を起源物質としたことを示している。堆積岩源物質の比率は一般には 20〜30 % と考えられる。一方、S タイプ花崗岩類は苦鉄質包有物を含まず、堆積岩源物質 50 % 程度で酸素同位体的に均質化した大陸地殻物質の部分溶融で生じたものと考えられる。白川・土岐・奥丹後などの87Sr/86Sr 初生比が高い地域の深部には古期基盤の存在が予想される。

北部フォッサマグナ大峰帯火山岩の K-Ar 年代と大峰帯の堆積・変形

三村弘二・原山  智

   北部フォッサマグナに位置する大町北方の大峰帯の火山岩から4個の、即ち下部の美麻累層の火山灰流堆積物から2個、中部の太郎山安山岩から1個、上部の大峰累層の火山灰流堆積物から1個の K-Ar 年代測定を実施した。測定年代は全て2Ma前後を示し、厚さ3,000mに達する扇状地を生じた大峰帯が、地質年代からは2Ma前後のプルアパート・ベイスン中で比較的短期間に形成されたことがわかった。

インドネシアにおける広帯域地震観測網の設営と運用

大滝壽樹・神定健二・関口渉次・金嶋  聡・西村太志・石原靖・Ibnu Purwana

   筆者らは、広帯域地震計と高精度の地震連続収録装置を用い、インドネシア地域において23点の地震観測網を設置した。本論文では、今後の海外観測の参考としてこのインドネシアでの観測網の実装、保守についてその問題点とあわせて述べる。