平成10年度活断層調査 トップへ

近畿三角地帯に分布する主要活断層の地震危険度評価

吾妻  崇・粟田泰夫・吉岡敏和・伏島祐一郎 (1999)

位置図

   平成10年度までに調査を行った近畿三角地帯の25の活断層を、松田 (1990) の基準に基づいて、18の起震断層 (一つの大地震に対応する単位の活断層 (群) と定義されている) に整理しました。また、新たに設定した基準に従って、各起震断層を活動セグメントに区分し、このうち31の活動セグメントについて、これまでに得られている断層パラメーターを使って、地震危険度を評価しました。その結果を 第2表第10図 に示します (詳細は 杉山ほか (1999) を参照)。
   地震危険度の評価は、経過時間率と地震発生確率に基づいて行いましたが、ここで評価の対象とした地震は、各活動セグメントに固有な、最大規模の地震 (M7程度以上で、断層のずれが地震断層として地表に到達するような地震) です。より規模の小さな地震は含まれていません。第10図の確率による地震危険度評価は、ある幅をもって算出された地震発生確率のうち、最大値に基づくものです。これは、各活動セグメントについて、現時点のデータから考え得る最悪のケース (次の活動が最も差し迫っている場合) を取り上げた場合の結果に当たります。したがって、今後100年間の地震発生確率が0.2%以上と評価した活動セグメントの幾つかでは、地震危険度を実際よりも過大に見積もっている可能性があります。また逆に、今後100年間の地震危険度を0.2%未満と評価した活動セグメントのうち、生駒など幾つかのセグメントについては、その全体が本当にこのように低い危険度なのか、さらに詳しく検討する必要があります。
   以上の留意点を踏まえた上で、さらに詳しい調査を早急に行うべき起震断層として、琵琶湖西岸、中央構造線四国及び和泉 - 金剛、上町の各断層が挙げられます。


第2表
起震断層
(松田,
1990を修正)
長さ
(km)
活動
セグメント
長さ
(km)
平均
変位速度
(m/ky)
単位
変位量
(m)
最新
活動時期
(ka)
再来
間隔
(ky)
経過
時間率
今後100年
以内の
地震発生確率
(%)
2 MTL 和泉-金剛 94 2-1 紀淡海峡 30 0.8-1.0 (V) 2-5.5 (V) 3 5.5-6#2 0.5 0.1-0.2
  2-2 根  来 26 1.2-5.0 (H)   1.7-3.7 2-3#1 0.9-1.9 0.6-30
  2-3 五条谷 16            
  2-4 金  剛 18 0.1-0.6 (V) 1.5 1.6-2.0 2-12#1 0.1-1 0.0-17
3 六  甲 123 3-1 高  槻 ≧38 ≧1.5 (H) 5-6 (H) 0.4*1 2.5#2 0.2 0.0
  3-2 六甲山 35 ≧1.0 (H) ≧1.5 (H) 0.4*1 1.2#2 0.3 0.0
  3-3 紀淡 20 0.5-1.9 1.6 0.01 2-3#2 〜0 0.0
  3-4 東浦 25 0.6-1.0 1.4 0.4*1 1.4-2.2#2 0.2-0.3 0.0
  3-5 先山 10 0.1-0.2 (V)   0.4*1 [2] [0.2] [0.0]
4 志  筑 ≧12 4 志  筑 ≧12 ≦0.1 (V)   ≧20 ≧20   0.0-4
5 湊-本庄 ≧19 5 湊-本庄 ≧19 <0.1 (V)   >4      
6 上  町 44 6 上  町 44 0.4 (V)   ≧15 ≧15   0.0-5
7 生  駒 34 7 生  駒 34 0.2-0.4 (V) ≧2.2 1.3-1.6 4-8#1 0.2-0.4 0.0
8 奈良盆地東縁 ≧12 8 天  理 ≧12 ≧0.2 (V)   1.3-10      
9 木津川 ≧15 9 木津川 ≧15 0.1-0.6 (V) 2.2-2.6 (V) 0.15*2 >2#2 <0.1 0.0
10 三  峠 13 10 三  峠 13     >1.7      
11 京都西山 43 11-1 志和賀 10     >3      
  11-2 世木林 30     1.9-2.4 2.9-4.4#2 0.4-0.8 0.0-7
12 琵琶湖西岸 65 12-1 饗庭野 24 2 (V) 3-5 (V) 2.4-2.8 1.5-2.5 #1 1-1.9 12-38
              (4.8-6.8 #2) (0.4-0.6 ) (0.0-0.5 )
  12-2 比良 41 ≧1.5 (V)   (0.3*3??) [2] [0.2?] [0.0?]
13 花  折 57 13-1 途中谷 27   2-5 (H) 0.3*3 [2] [0.2] [0.0]
  13-2 北白川 30     1.3-2.5 ≧4.5#2 ≦0.6 0.0-0.3
14 三  方 24 14 三  方 24 0.2-1.0 (V) 3-5 (V) 0.3*3 ≧3#1 ≦0.1 0.0
15 野  坂 32 15-1 野  坂 ≧6 0.1 (V) #3 0.5 (V) #3 <2 (0.3*3) 5#1 <0.4 (0.1) 0.0
16 敦  賀 16 16-1 笙の川 7     ≧30 ≧30   0.0-2
  16-2 黒河川 8 0.5-0.6 (V) 1.5-2 (V) <1.5 (0.7*4) 3#1 <0.5 (0.2) <0.2
  16-3 駄  口 9 0.2 (V) 1-1.5 (V) 0.3-0.6 6-7#1 ≦0.1 0.0
17 柳ヶ瀬 72 17-1 椿坂峠 9     7-7.2 ≧7   0.0-5
  17-2 余呉川 ≧14   1 (V) 0.7*4 [2] [0.4] [0.0]
18 養  老 63 18-1 養  老 55 2 (V) 5-6 (V) 0.4*5 1-2#1 0.2-0.4 0.0-0.1

第2表  近畿三角地帯の主要活断層の調査結果 (主な断層パラメーター) と地震危険度。

1)  今後100年以内の地震発生確率は、地震の発生間隔 (再来間隔) の分布が対数正規分布に従い、標準偏差 σ が0.23と仮定した場合の値。
2)  地震発生確率0.0%は、少数第2位を四捨五入したもの。世木林セグメントが0.02%、六甲山セグメントが0.01%、その他のセグメントは全て0.01%未満である。
3)  この表に示した断層パラメターに基づくと、兵庫県南部地震を引き起こす直前の北淡セグメントの地震発生確率 (100年以内) は、2〜15%であった。
4)  先山、比良、途中谷及び余呉川の4セグメントでは再来間隔は得られていないが、周辺の他セグメントのデータから、少なくとも2千年以上と推定される。このため、再来間隔を2千年とした場合の経過時間率と地震発生確率を、再来間隔と共に [ ] 付きで示す。
5)  最新活動後の経過時間が7千年以上、かつ再来間隔が不明な志筑、上町、笙の川、椿坂峠の4セグメントについては、再来間隔 ≧ 経過時間と見なした場合の再来間隔、経過時間率及び地震発生確率を斜字体で示す。
6)  平均変位速度と単位変位量の (V) は上下成分、(H) は水平成分を示す。
   #1 : 平均変位速度と単位変位量から推定された再来間隔。
   #2 : トレンチ調査などによって認定された複数の断層活動 (古地震イベント) の年代
   から得られた再来間隔。
   #3 : 表示してある上下変位よりも、横ずれ変位 (未確定) が卓越する。
   *1 : 1596年慶長伏見地震、*2 : 1854年安政伊賀上野地震、*3 : 1662年寛文地震、
   *4 : 1325年正中地震、*5 : 1586年天正地震。


第10図

近畿三角地帯の起震断層及び活動セグメントとその今後百年間における地震発生の最大確率
第10図  近畿三角地帯の起震断層及び活動セグメントと
その今後百年間における地震発生の最大確率。