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2021年2月13日23時07分の地震による福島県二本松市沢松倉の崩壊地の地質

2021年2月16日:開設

活断層・火山研究部門 山元孝広、研究戦略部 阪口圭一

 2021年2月13日深夜に発生した地震によって福島県島県二本松市沢松倉地内で斜面崩壊が発生した。報道写真等によれば、エビスサーキットドリフトランドの縁から発生した斜面崩壊は、同西コースに流れ込んでいる。また頂部のドリフトランドには亀裂が発生している。
 この場所付近の地質については、表層を覆う安達太良火山起源のテフラを多数含む風成層が約10mあり、その層序は、山元・阪口(2000)に示されている(図1)。その下位に厚さ数m〜10mの前期更新世の伏拝[ふしおがみ]岩屑なだれ堆積物(Fd)、その下に中期中新世の岩倉層の流紋岩火砕岩及び溶岩(M2r)があることが知られている(図2)。
 本地点の崩壊では、少なくとも表層の風成層が滑落したことは確実である。岩倉層と伏拝岩屑なだれ堆積物の間、ないしは安達太良火山起源のテフラを多数含む風成層の軽石層のどこにすべり面があるかは現地調査を待たねばならないが、後者をすべり面にした可能性が大きい。
 同様のテフラ層を含む風成層の表層崩壊は、2011年東北地方太平沖地震でも福島県白河市で3地点発生し、14名の死者・行方不明者が出たことが知られており(千木良ほか、2012)、今回も同様の斜面崩壊の可能性が考えられる。テフラ層を弱層とする同様の被害は、2018年胆振東部地震や2016年熊本地震でも相次いでおり、その危険性に注意した防災対応が求められている。

図1 崩壊地付近の風成層(2.Ebisu (Loc.24)) (山元・阪口, 2000)

図1 崩壊地付近の風成層(2.Ebisu (Loc.24)) (山元・阪口, 2000)

図2 崩壊地周辺の地質図

図2 崩壊地周辺の地質図
(上)久保和也・柳沢幸夫・山元孝広・駒澤正夫・広島俊男・須藤定久 (2003) 20万分の1地質図幅「福島」.産総研地質調査総合センター.
https://gbank.gsj.jp/geonavi/geonavi.php?lat=37.64101&lon=140.36812&z=13&layers=1037,seamless_geo_v2&pin=1
(下)阪口圭一 (1996) 二本松地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所,79p.
https://gbank.gsj.jp/geonavi/geonavi.php?lat=37.64101&lon=140.36812&z=15&layers=422,seamless_geo_v2&pin=1

文献

山元 孝広・阪口 圭一 (2000) テフラ層序からみた安達太良火山, 最近約25万年間の噴火活動.地質学雑誌, 106. 865-882.
千木良 雅弘・中筋 章人・藤原 伸也,・阪上 雅之 (2012) 2011年東北地方太平洋沖地震による降下火砕物の崩壊性地すべり. 応用地質, 52, 222-230.

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