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2021年2月13日23時07分の地震による福島県相馬市内の崩壊地の地質

2021年2月15日:開設

地質情報研究部門:斎藤 眞・渡辺真人・柳沢幸夫

 2021年2月13日深夜に発生した地震によって福島県相馬市内で発生した斜面崩壊地の地質について、5万分の1地質図幅「相馬中村」を基に検討を行った。崩壊の素因については、これらを元に現地調査を踏まえて検討する必要がある。

1.常磐自動車道相馬ICの北約3km(相馬市黒木宿仙木)の堀割西側法面の崩壊地(JH地点)

 5万分の1地質図幅「相馬中村」によれば、JH地点の地質は鮮新世の仙台層群向山層の上に、鮮新世の大年寺層が重なる。地質図では向山層の汽水-内湾性の青灰色泥岩(Md) の上に大年寺層の海成の緑灰色泥岩(D2)が重なるように描いてあるが、研究報告書によれば、青灰色泥岩(Md) の上に厚さ数mの砂岩(D1)を挟んで緑灰色泥岩(D2)が重なる(この砂岩層は薄くて地質図に表現できないため描かれていない)。
 周囲の走向傾斜の値から推定すると、本地点付近の地層は15-20度程度東に傾斜する。この地域のすぐ西側には双葉断層(活断層)があり、JH地点のすぐ西では、断層の活動の影響を受けて地層が変形し、断層に沿った褶曲軸を持つ褶曲が仙台層群の地層に発達する。一方海岸沿いに近づくにつれて傾斜は緩くなり、次項で述べるもう一つの崩壊地点、松川浦付近ではわずかに東に傾斜するが、水平に近い。
 地表面には大年寺層の泥岩(D2)が分布するが、周囲の分布状況から堀割の法面には大年寺層の泥岩(D2)が露出し、下位の大年寺層の砂岩(D1)まで達していないと推定される。また崩れている岩石の写真を見る限り泥岩の可能性が高いことから、崩壊している岩石は、大年寺層の泥岩(D2)と考えられる。大年寺層の泥岩(D2)の下部には複数枚の火山灰層が存在するため、それらの火山灰層が滑り面となって、流れ盤となる西側の法面に崩壊が発生した可能性を考える必要があろう。

参照地質図1

参照地質図1

地質図Naviで表示
https://gbank.gsj.jp/geonavi/geonavi.php?lat=37.80957&lon=140.88259&z=18&layers=420&pin=1

2. 松川浦鵜の尾岬近傍(相馬市尾浜棚脇)の北東向き海食崖の崩壊地(MU地点)

松川浦鵜の尾岬のMU地点は仙台層群大年寺層の泥岩(D2)でSF-29のテフラが挟まれる。海食崖となっていて、泥岩(D2)の露出が良い部分である。層理面はわずかに東に傾く。Google Mapsのストリートビュー等で、崩壊前の露頭状態を見ると露頭に層理面に平行に凹んだ脆弱な面があることから、この面が崩壊の素因になった可能性がある。

参照地質図2

参照地質図2

地質図Naviで表示
https://gbank.gsj.jp/geonavi/geonavi.php?lat=37.82415&lon=140.97993&z=17&layers=420&pin=1

参照地質図

柳沢幸夫・山元孝広・坂野靖行・田沢純一・吉岡敏和・久保和也・滝沢文教(1996) 相馬中村地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),地質調査所,114p.

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更新履歴

  • 2021年2月16日:1. の 9行目「地表面には ~ 大年寺層の泥岩(D2)と考えられる。」の範囲を修正
  • 2021年2月15日:参照地質図1 の「地質図Naviで表示」のURLを修正
  • 2021年2月15日:開設

問い合わせ先

産総研地質調査総合センター