地質調査総合センター

第7回 鉱物肉眼鑑定研修終了報告

 第7回鉱物肉眼鑑定研修を2025年6月4日~6月6日に実施しました。産総研地質調査総合センターの坂野靖行が講師を務めました。本研修は鉱山会社等に勤務する地質技師を主な対象としたもので、地質標本館登録鉱物標本約90点を用いて、天然に比較的普通に産出する鉱物の肉眼的特徴を理解することを主目的としました。鉱物肉眼鑑定ではルーペによる標本の観察が主体となります。本研修では、目的とする鉱物の特徴がよく分かる標本を事前に準備し、それらを1鉱物種あたり約20~30分ほどかけて観察してもらい、その場で講師が研修生の疑問点に答える方法をとりました。この方法だと多くの研修生を受け入れることはできないため少人数(5名)での実施としています。
 初日は1)鉱物肉眼鑑定の難しさ(生物種の鑑定との違い)、2)水晶を用いた結晶の形・結晶面上に出現する条線、3)灰長石を用いた結晶面とへき開面、4)鉱物肉眼鑑定における観察ポイント(硬度、へき開、光沢等)に関する講義を、標本を見せながら行いました。鉱物種ごとに、講師が対象とする鉱物の肉眼的特徴及び鑑定ポイントを解説し、その後研修受講者がルーペを用いて標本の観察を行いました。そして観察しながら鑑定の決め手となる特徴を理解していただきました。
 2日目及び3日目は初日と同様なやり方で、天然に一般的に産する金属鉱物・非金属鉱物(黄鉄鉱・黄銅鉱・方鉛鉱・閃亜鉛鉱・長石・方解石等13種)、鉱石鉱物(磁硫鉄鉱・硫砒鉄鉱・鉄重石・濃紅銀鉱等13種)を観察していただきました。
 ルーペを用いる研修の欠点は講師と研修生が観察部分を同時に共有できないことです。この対策として、第3回の研修以降、必要に応じて実体顕微鏡下での観察像を大型モニターに表示させ、全員が同じ画像を見る方法を導入してきました。これにより、言葉(文字)での説明と実際の観察画像との対応が理解しやすくなっています。そして第5回の研修から鑑定のポイントとなる結晶の形やへき開面の写真を実体顕微鏡下で事前に撮影しそれらを印刷した別紙を配布して、観察ポイントを直感的に理解できるような工夫を行ってきました。
 鉱物肉眼鑑定では標本をハンマーで割り、新鮮な面を出して、へき開面を認識・観察することが極めて重要です。特に硫化鉱物は表面が錆びやすいため新鮮な面での観察が重要となります。そのため、第6回の研修から錆びた面と新鮮な面との違いが分かる硫化鉱物標本を用意し、錆び方により見た目が変化することを理解していただいています。
 研修で用いる標本の大部分は地質標本館からの借用標本のため、研修受講者が標本を割って観察することを殆ど行ってきませんでした。そのためへき開面を結晶面と勘違いしてしまう方もいらっしゃいました。そこで今回は研修の第1日目に割っても良い灰長石結晶の結晶形を観察し、その後その結晶を割ってへき開面を観察してもらいました。これによりへき開は破断面であることを認識して頂きました。今後もより研修に有益な標本を集めてより良い研修を行っていければと考えています。

第7回 鉱物肉眼鑑定研修 講義の様子 講義の様子
第7回 鉱物肉眼鑑定研修 標本を用いた観察 標本を用いた観察

第7回 鉱物肉眼鑑定研修

タイトル 第7回 鉱物肉眼鑑定研修
日程 2025年6月4日(水)〜6日(金)
研修場所 産総研つくば中央事業所7群
研修内容 鉱山会社に勤務する技術者が、金属鉱山等で産出する鉱物を肉眼で鑑定できるよう、実際の鉱物を用いてその特徴を理解し、判別可能な能力を身につけることを目的とします。
定員 4〜5名(研修生は鉱業系の会社 ( 商社含む )・組織の方に限っております)。
※申込み締切:4月30日(ただし定員に達し次第受付終了)※終了
講師 坂野靖行 主任研究員
集合 産総研 6/4 9時30分(予定)
解散 産総研 6/6 16時(予定)
CPD 24単位
参加要件(会費) 産総研コンソーシアム「地質人材育成コンソーシアム」に48口(1口1000円)の会費が必要です。なお、申し込みをいただいた方への会費の請求書発行は4月になってからの送付とさせていただきます。
注意事項 現地(産総研)までの交通費と宿泊代・食事代は参加者負担となります。
産総研の宿泊施設(素泊まり;利用料金は予約確定後通知)の利用が可能です。
詳細は参加者に個別にご連絡します。
申し込み方法 下記項目を記載したメールを事務局宛にお送りください。
  • 受講希望者名
  • 所属(企業名、部署、役職等)
  • 所属先住所
  • 連絡先メールアドレス
申し込み・問い合わせ先 training-gsj-ml(a)aist.go.jp ※(a) 部分を @ に置き換えて下さい。
主催 産総研コンソーシアム「地質人材育成コンソーシアム」 運営会則
備考 産総研構内は、喫煙所以外、すべて禁煙です。