第6回 鉱物肉眼鑑定研修終了報告

 第6回鉱物肉眼鑑定研修を、2024年10月2日から10月4日に実施しました。講師は産業技術総合研究所地質調査総合センターの坂野靖行が務めました。本研修は、鉱山会社などに勤務する地質技師を対象としており、地質標本館登録の鉱物標本約90点に加え、本研修のために新たに購入した標本を用いて行われました。主な目的は、天然に一般的に産出する鉱物の肉眼的特徴を理解することです。鉱物の肉眼鑑定では、ルーペを使用した標本の観察が主体となります。本研修では、目的とする鉱物の特徴を明確に理解できるよう、事前に適切な標本を準備しました。それらを使用し、1鉱物種あたり約20~30分の観察時間を設け、研修生にはその場で講師が疑問点に答える形式を採用しました。ただし、この方法では多くの研修生を同時に受け入れることが難しいため、少人数(5名)での実施としています。
 初日は本研修の主催者である地質人材育成コンソーシアムの幹事からの開会挨拶の後、以下のように研修を進めました。1)鉱物肉眼鑑定の難しさ(生物種の鑑定との違い)、2)水晶を用いた結晶の形・結晶面上に出現する条線、3) 鉱物の肉眼鑑定における観察ポイント(硬度、へき開、光沢など)について、標本を用いながら講義を行いました。 引き続き、天然に一般的に産出する金属鉱物(黄鉄鉱・黄銅鉱など6種)の観察を行いました。鉱物種ごとに、講師が対象となる鉱物の肉眼での特徴や鑑定のポイントを解説した後、研修者がルーペを用いて標本を観察しました。観察を通じて、鑑定の決め手となる特徴を理解していただくことを目的としました。2日目及び3日目は初日と同様なやり方で、天然に一般的に産する鉱物(長石・方解石等7種)、鉱石鉱物(磁硫鉄鉱・硫砒鉄鉱・鉄重石・濃紅銀鉱等17種)を観察していただきました。
 ルーペを用いる研修の欠点は、講師と研修生が観察部分を同時に共有できない点です。そこで、第2回の研修からは必要に応じて、実体顕微鏡下での観察像を大型モニターに表示し、全員が同じ画像を確認できる方法を導入しました。この工夫により、言葉(文字)での説明と実際の観察画像を対応させて理解しやすくなったと考えています。さらに、第5回の研修からは、鑑定のポイントとなる結晶の形状やへき開面の写真を事前に実体顕微鏡下で撮影し、それらを印刷した資料を配布しました。説明時には、これらの写真をPC内の画像データから大型モニターに投影することで、観察のポイントを直感的に理解できるよう工夫しました。
 鉱物の肉眼鑑定では、標本をハンマーで割り、新鮮な面を出してへき開面を認識・観察することが極めて重要です。特に硫化鉱物は表面が錆びやすいため、新鮮な面での観察が必要不可欠です。今回は、錆びた面と新鮮な面の違いが分かる硫化鉱物の標本を用意し、錆び方による外見の変化を理解していただきました。また、初めての試みとして、基本的な鉱石6種の鑑定テストを実施しました。今後も、研修に有益な標本を収集し、さらに良い研修を実現していきたいと考えています。

第6回 鉱物肉眼鑑定研修
第6回 鉱物肉眼鑑定研修
第6回 鉱物肉眼鑑定研修

第6回 鉱物肉眼鑑定研修

タイトル 第6回 鉱物肉眼鑑定研修
日程 2024年10月2日(水)〜4日(金)
研修場所 産総研つくば中央事業所7群
研修内容 鉱山会社に勤務する技術者が、金属鉱山等で産出する鉱物を肉眼で鑑定できるよう、実際の鉱物を用いてその特徴を理解し、判別可能な能力を身につけることを目的とします。
定員 4〜5名(研修生は鉱業系の会社 ( 商社含む )・組織の方に限っております)。
※申込み締切:8月30日(ただし定員に達し次第受付終了となります)。受付終了
講師 坂野靖行 主任研究員
集合 産総研 10/2 9時30分(予定)
解散 産総研 10/4 16時(予定)
CPD 24単位
参加要件(会費) 産総研コンソーシアム「地質人材育成コンソーシアム」に48口(1口1000円)の会費が必要です。
注意事項 現地(産総研)までの交通費と宿泊代・食事代は参加者負担となります。
産総研の宿泊施設(素泊まり;利用料金は予約確定後通知)の利用が可能です。
詳細は参加者に個別にご連絡します。

※研修直前に体調不良となった方で、感染症などへの感染の疑いがある場合には、参加をご遠慮いただくこともあります。
申し込み方法 下記項目を記載したメールを事務局宛にお送りください。
  • 受講希望者名
  • 所属(企業名、部署、役職等)
  • 所属先住所
  • 連絡先メールアドレス
申し込み・問い合わせ先 training-gsj-ml(a)aist.go.jp ※(a) 部分を @ に置き換えて下さい。
主催 産総研コンソーシアム「地質人材育成コンソーシアム」 運営会則
備考 産総研構内は、喫煙所以外、すべて禁煙です(産総研構内は、2024年度内に、すべて禁煙となる予定です)。