2024年度第1回追加 地質調査研修終了報告

 2024年5月27日(月)〜5月31日(金)に、地質人材育成コンソーシアム(会長:田中裕一郎)主催で、2024年度第1回追加地質調査研修が実施されました。研修参加者は6名で、講師を利光誠一、講師補助を住田達哉が務めました。
 この研修は、本年5月13日〜5月17日に開催した2024年度第1回地質調査研修募集に対して、募集開始後、早い時期に定員を上回る申込者があったため、急遽別日程で追加の研修を計画し募集したものです。第1回と同様、地質図を作成した経験はないが、今後業務として、その技術・知識や作成に関わる工程を知っておきたいといった企業等の地質初心者が対象の募集でした。
 基本的には事前学習を含めて第1回(5月13日〜5月17日実施)と全く同じ内容・趣旨の5日間の研修ですが、研修最終日は雨天のため少し内容の変更がありました。まず対面式の研修初日は、茨城県つくば市の産業技術総合研究所地質調査総合センターの講義室で座学研修を行い、2日目の午前の1時間ほど地質標本館の見学を行いました。それに続く3日半の期間は、茨城県ひたちなか市および福島県双葉郡広野町といわき市周辺地域で野外実習を行いました。
 室内座学研修では、基礎的な地質調査の知識をスライドと資料で学び、合間に砂の粒度表の作成や柱状図の作成実習、地質図学の演習など、野外実習で必要となる幅広い基礎知識を習得していただきました。野外実習では、ひたちなか市海岸で室内での講義や演習で経験した堆積岩の観察や柱状図の作成を実際の地層を観察しながら実践しました。そして広野町において2つの沢を実際に調査して地層区分し、地層境界線の広がりの予測と地質図の作成などを行いました。こうした講義と実践を通して、地質図作成の一連の技術を習得していただきました。

[研修概要]

5月24日以前:
e-ラーニングとして、地質調査および地質図作成のための基礎的な事項についての学習(5月17日まで)。簡単な地質図学の課題への取り組み。これを受けて、実習日の前週に事前課題の解法とその他の基本的事項の説明のリモートレクチャーを実施。
5月27日:
つくば市の産総研地質調査総合センター内の講義室での講義と実習:「露頭観察とは」、「ルート調査とは」、「ルートマップ予習」、「対比・地質図」、「地質図学」、「地質図の読み方」、「粒度表の作成」など。
5月28日:
地質標本館:地質調査・地質図に関する展示の見学(日本周辺の地震の震源分布、日本列島大型模型へのプロジェクションマッピング、岩石・鉱物・化石の分類展示など)。
野外での地質調査の実地研修:ひたちなか市平磯の海浜公園で、歩測とクリノメーターを使ったルートマップ作成練習。磯崎の海岸で地層の観察と柱状図作成、走向傾斜の測定、地層の上下判定など。夜間のまとめで、岩石標本の観察、昼間の調査データの墨入れなど。
5月29日:
野外での地質調査の実地研修:広野町土ヶ目木(どっかめき)地域の沢を歩いて、露出する地層の調査。地図に調査データを記入してルートマップの作成。夜間の調査データのまとめにより地層区分と境界位置の確認の後、各境界の広がりを地図上で予測。
5月30日:
野外での地質調査の実地研修:広野町長畑の北方にある沢を歩いて、露出する地層の調査。地図に調査データを記入してルートマップの作成。その後、長畑の道路沿いの露頭に移動して断層の観察。夜間の調査データまとめで、前日の調査データと合わせて2つのルートにおける各地層境界線のつながりを地質図学的に描いて色鉛筆で地層ごとに着色し、地質図作成。
5月31日:
野外での地質調査の実地研修:当地域の地質図作成に関連した露頭等の見学。1)広野町上北迫上田郷の道路沿いの露頭で双葉断層を観察。2)広野町小滝平で白亜紀の双葉層群と基盤の花崗岩類との不整合の観察。3)いわき市アンモナイトセンターで発掘体験露頭の観察と館内見学。その後、4日間の野外実習で観察した地層をもとに地史の復習と全体のまとめなど。

 研修期間中、天候面の心配がありましたが、結果として2日目から4日目までの野外実習にはほとんど影響がない状況でした。唯一、最終日はあいにく朝から雨となったため当初予定の海岸での露頭観察を取りやめ、道路沿いの双葉断層露頭の観察に変更しました。全体を通して “地質図作成初心者”の受講生にとっては不慣れな調査体験でもあったため、地質調査で必要な露頭位置の確認や堆積岩の岩相識別について重点的に実習しました。事前学習および5日間の対面式研修を通して、地質調査や地質図の作成がどのようにして行われているかを野外調査の実践の場で理解していただけたようです。
 本研修の実施にあたり、広野町教育委員会、公益財団法人いわき市教育文化事業団いわき市アンモナイトセンターに大変お世話になりました。この場をお借りして御礼申し上げます。

2024年度第1回追加 地質調査研修
2024年度第1回追加 地質調査研修
2024年度第1回 地質調査研修
2024年度第1回追加 地質調査研修

2024年度第1回 追加 地質調査研修

日程 2024年5月27日(月)- 5月31日(金)
補備日程 事前のe-ラーニング(約80分)、上記研修開催日の前週にリモートレクチャー(約40分)を予定
研修場所 室内座学:茨城県つくば市(産総研)
野外研修:茨城県ひたちなか市福島県双葉郡広野町・いわき市周辺
研修内容 最近はルートマップを作成したことがあっても地質図を書いた経験のない方、岩石の見方に不安がある方など、地質調査の基本である踏査に関し、大学で充分な経験が積めなかった方もいらっしゃいます。この研修では、事前のe-ラーニングを含めた座学で岩石や地層の見方、地質図の描き方(地質図学)等を理解していただきます。そして、野外で地層・岩石の観察ポイントからまとめまでを体験し、地質図を作成するための基本的事項を習得していただきます。対面研修は少人数でマンツーマンに近い形での研修となります。
※今回は特に企業の地質初心者が対象となります。
※経験者(卒論等で地質図を作成したことがある方)向けは秋を予定しています。
定員 定員 6名(最小催行人数:4名)※募集終了
講師 利光誠一博士
地質調査総合センターにおいて、多くの地質図幅の作成を行い、白亜紀大型化石、層序の研究を行うと共に、地質標本館館長として、地質学の普及に努めてきました。
他1名
集合 産総研 5/27 9時(予定)
解散 産総研 5/31 17時30分(予定)
CPD 42単位(事前のe-ラーニング等と合わせて42単位になるよう、時間を調整して指導を行います)
参加費 産総研コンソーシアム「地質人材育成コンソーシアム」に84口(1口1000円)の会費が必要です。
注意事項 現地(産総研)までの交通費と宿泊代(4泊)・食事代は参加者負担となります。日程のうち、前半(1泊)は産総研内の宿泊施設(素泊まり;利用料金は予約確定後通知)、後半の野外研修では、広野町周辺の宿泊施設(1泊2食付き税込9000円弱 x3泊)を予定しています。(詳細は参加者に個別にご連絡いたします)
参加には別途傷害保険の加入をお願いします。
お勤めの方は労災保険の対象となるよう職務として参加してください。
学生・院生の方で参加されたい場合は、別途お問い合わせください。

※研修直前に体調不良となった方で、感染症などへの感染の疑いのある場合には、参加をご遠慮いただくこともあります。
申し込み・
問い合わせ
training-gsj-ml(a)aist.go.jp ※(a) 部分を @ に置き換えて下さい。
主催 産総研コンソーシアム「地質人材育成コンソーシアム」 運営会則(pdf:76KB)
協力 いわき市アンモナイトセンター 広野町教育委員会