2022年度第1回追加 地質調査研修終了報告

 2022年5月30日(月)〜6月3日(金)に、地質人材育成コンソーシアム(会長:田中裕一郎)主催で、2022年度第1回追加地質調査研修が実施されました。この研修は、本年5月16日〜5月20日に開催した2022年度第1回地質調査研修募集で想定より早く定員を上回る申込者があったため、急遽別日程で追加の研修を計画し募集したものです。第1回と同様、地質図を作成した経験はないが、今後業務として、その技術・知識や作成に関わる工程を知っておきたいといった方々、特に企業の地質初心者が対象の募集です。そして、その狙いは、室内で岩石や地層の見方等を理解した上で、野外での観察ポイントからまとめまで、地質図を作成するための一連の基本的事項を5日間の研修で習得していただくことです。
 基本的には事前学習を含めて第1回(5月16日〜5月20日実施)と全く同じ内容の研修です。まず対面式の研修初日は、茨城県つくば市の産業技術総合研究所第七事業所(地質調査総合センター)で行う座学研修に当て、それに続く4日間は、茨城県ひたちなか市および福島県双葉郡広野町といわき市周辺地域で野外実習を行いました。主講師を利光誠一、講師補助を兼子尚知が務めました。研修参加者は6名でした。地質・資源関係の企業の地質関連業務従事者などが大半でしたが、中には考古学分野の業務に従事している方もいました。  室内座学研修では、基礎的な地質調査の知識をスライドと資料で学び、合間に砂の粒度表の作成や地質図学の演習など、野外実習で必要となる幅広い基礎知識を習得していただきました。
 一方、野外実習では、室内での演習で経験した露頭記載や柱状図の作成を、実際の地層を観察しながら実践しました。次いで沢沿いや道路沿いを調査して得られた観察データから複数の地層に区分し、それらの境界についてどのように広がっていくかを各自で予測しました。そして、最終的に地層境界の位置を予測したルート上で確認し、調査のまとめとして各自で得た調査データを基に地質図を作成しました。こうした実践を通して、地質図作成の一連の技術を習得していただきました。

研修概要

5月29日以前:
e-ラーニングとして、地質調査および地質図作成のための基礎的な事項についての学習(5月20日まで)。簡単な地質図学の課題への取り組み。これを受けて、実習日の前週に事前課題の解法とその他の基本的事項の説明のリモートレクチャーを実施。
5月30日:
産総研内の講義室での講義と実習:「露頭観察とは」、「ルート調査とは」、「ルートマップ予習」、「対比・地質図」、「地質図学」、「地質図の読み方」、「粒度表の作成」など。
5月31日:
野外での地質調査の実地研修:ひたちなか市那珂湊海岸(平磯海岸)で、地層の観察と柱状図作成、走向傾斜の測定、地層の上下判定など。広野町で露頭に出ている断層の観察、歩測とクリノメーターを使ったルートマップ作成練習。夜間のまとめで、岩石標本の観察、昼間の調査データの墨入れなど。
6月1日:
野外での地質調査の実地研修:広野町土ヶ目木(どっかめき)地域の沢を歩いて、露出する地層の調査。地図に調査データを記入してルートマップの作成。夜間の調査データのまとめにより地層区分と境界位置の確認、各境界の広がりを予測。巡検。
6月2日:
野外での地質調査の実地研修:広野町長畑の北方にある沢を歩いて、露出する地層の調査。地図に調査データを記入してルートマップの作成。夜間の調査データまとめで、前日の調査データと合わせて2つのルートにおける地層境界線のつながりを地質図学的に描いて地質図作成。
6月3日:
野外での地質調査の実地研修:当地域の地質図作成に関連した地質露頭等の見学。1)広野町夕筋海岸で中新世の吉野谷層と鮮新世の大年寺層間の不整合露頭の観察、大年寺層中の生痕化石、堆積構造の観察。2)広野町小滝平で双葉層群と基盤の花崗岩類との不整合の観察。3)いわき市アンモナイトセンターで発掘体験露頭の観察と館内見学、その後、4日間の野外実習で観察した地層をもとに地史の復習と全体のまとめなど。

 研修期間中、天候面の心配もありましたが、結果として野外での研修中にほとんど雨に遭遇することもなく、無事に全日程を終了することができました。“地質図作成初心者”の募集でしたので大半の受講生にとっては不慣れな調査体験でしたが、地質調査で必要な露頭位置の確認や堆積岩の岩相識別についても実習しました。事前学習および5日間の対面式研修を通して、地質調査や地質図の作成がどのようにして行われているかを野外調査の実践の場で理解していただけたと思います。
 本研修の実施にあたり、広野町教育委員会、公益財団法人いわき市教育文化事業団いわき市アンモナイトセンターに大変お世話になりました。産総研地質調査総合センター地質標本館から教材提供などの協力を得ました。この場をお借りして御礼申し上げます。

2022年度第1回 追加地質調査研修
2022年度第1回 追加地質調査研修
2022年度第1回 追加地質調査研修
2022年度第1回 追加地質調査研修

2022年度第1回 追加 地質調査研修

日程 2022年5月30日(月)-6月3日(金)
補備日程 事前のe-ラーニング(約80分)、上記研修開催日の前週にリモートレクチャー(約40分)を予定
研修場所 室内座学:茨城県つくば市(産総研)
野外研修:茨城県ひたちなか市福島県双葉郡広野町・いわき市周辺
研修内容 最近はルートマップを書いたことがあっても地質図を書いた経験のない方、岩石の見方に不安がある方など、地質調査の基本である踏査に関し、大学で充分な経験が積めなかった方もいらっしゃいます。この研修では、まず室内で岩石や地層の見方等を座学で理解した上で、野外での地層・岩石の観察ポイントからまとめまで、地質図を作成するための基本的事項を事前のe-ラーニングと5日間の対面研修で習得します。対面研修は少人数でマンツーマンに近い形での研修となります。
※今回は特に企業の地質初心者が対象となります。
※経験者(卒論等で地質図を描いたことがある方)向けは秋を予定しています。
定員 定員 6名(最小催行人数:4名)
※定員になりましたので募集は終了しました
講師 利光誠一博士
地質調査総合センターにおいて、多くの地質図幅の作成を行い、白亜紀大型化石、層序の研究を行うと共に、地質標本館館長として、地質学の普及に努めてきました。
他1名
集合 産総研 5/30 9時30分(予定)
解散 産総研 6/3 17時(予定)
CPD 42単位 (事前のe-ラーニング等と合わせて42単位になるよう、時間を調整して指導を行います)
参加費 産総研コンソーシアム「地質人材育成コンソーシアム」に63口(1口1000円)の会費が必要です。
注意事項 現地までの交通費と宿泊代(4泊)・食事代は参加者負担となります。日程のうち、前半(1泊)は産総研内の宿泊施設(素泊まり;利用料金は予約確定後通知)、後半の野外研修では、広野町周辺の宿泊施設(1泊2食付き7000円〜8000円程度x3泊)を予定しています。(詳細は参加者に個別にご連絡いたします。)
参加には別途傷害保険をおすすめします。
お勤めの方は労災保険の対象となるよう職務として参加してください。
学生・院生の方で参加されたい場合は、別途お問い合わせください。
新型コロナウイルスワクチン接種(3回あるいは2回)済みであること、または接種できない方は研修直前に抗原検査等により陰性であることを求めます。
新型コロナウイルス感染防止の対策は行いますが、情勢を踏まえ、中止とさせていただく場合もございます。
申し込み・
問い合わせ
training-gsj-ml(a)aist.go.jp ※(a) 部分を @ に置き換えて下さい。
主催

産総研コンソーシアム「地質人材育成コンソーシアム」 運営会則(pdf:76KB)

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