岩石や地層

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岩石や地層のでき方

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火成岩のでき方

1) 火成岩をつくるもの〜マグマと元素

   火成岩は多くの種類の鉱物 (結晶) やガラスなどの物質からできています。ガラスには一定の内部構造はありませんが、鉱物は固有の分子構造をもっています。また、分子は複数の原子の組み合わせからなり、原子は陽子・中性子からなる原子核と電子からできています。

図:火成岩をつくるもの

   陽子・中性子及び電子の数の違いにより、いろいろな種類の原子ができます。これを元素と呼びます。鉱物やガラスはいろいろな種類の元素が集まったものです。各元素は固有の数の陽子と電子をもち、そのため原子のサイズも元素の種類によってすべて違っています。地球上には多くの元素がありますが、その存在量は元素によって極端に違います。地球の表面である地殻を構成する主要な元素は、

       O、Si、Al、Fe、Ca、Na、K、Mg、Ti
      (酸素、珪素、アルミニウム、鉄、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、チタン)

で、これだけでほぼ99%を占めると言われています。また、マントルは主に、O、Mg、Si、Feからなっていると考えられています。火成岩のもととなるのは、高温の流体であるマグマですが、日本列島のような島弧 (または火山弧) でマグマが発生するのは、マントル上部から地殻の範囲です。したがって、マグマを構成する元素もこれらの元素が主体であるといえます。厳密には、地殻やマントルを構成する鉱物の種類によって融点が違うことや、マグマのような液体に優先的に溶けやすい元素もあることから、マグマを構成する元素は地殻やマントルの平均とは少し異なります。

2) 結晶と温度・圧力の関係

   温度が上がるにつれて、氷が水に、更に水が水蒸気になるように、物質は高温状態ほど多くのエネルギーを確保しています。地下で発生したマグマの温度は1500℃以上にもなると考えられていますが、マグマの中に溶けている元素も、同様に高温のうちは多くのエネルギーを得て単独に存在することができます。地下の場合は温度とともに圧力も上昇し、圧力も物質にエネルギーを与えるので、地下の高温・高圧の環境では、物質は地表と比べてはるかにエネルギーを保持しています。

   しかし、マグマが上昇して温度・圧力が低下すると、元素はエネルギーを失い、単独では存在できなくなります。そこで、安定な状態になるために別の元素と結びついてできるのが結晶です。

図:結晶と温度

   結晶の安定性を決めるのは、その骨格となる構造です。結晶をつくるとき、元素はイオンとして電荷を持っていますが、全体の合計がプラスマイナス0にならなければなりません。また、元素はそれぞれ大きさが異なります。下の図では地殻に多く存在する元素のサイズを比較してみました。

図:元素のサイズ

   結晶の構造は、例えてみれば大きなボールの隙間に小さなボールが入り込むような形になっています。しかし、元素の大きさがさまざまなので、電荷の合計がプラスマイナス0でも隙間だらけの組み合わせもあれば、緻密な組み合わせもできることになります。結晶が安定なのは、なるべく緻密な構造をとれる組み合わせです。

   このように、結晶をつくる元素の組み合わせには電荷と構造の制限があるために、普通のマグマから出現する鉱物の種類はある程度限定されてしまいます。

   更に結晶にも温度・圧力との関係があります。つまり、高温で安定な結晶、高圧で安定な結晶など、結晶の種類によって性質が違うのです。たとえば、高温で安定であった結晶も、マグマの温度が更に下がると安定ではいられなくなり、分解してしまいます。そして、より低温でも安定な別の結晶をつくります。色の付いた鉱物 (有色鉱物) では、マグマの温度が下がるにしたがい、一般に次の順で晶出・分解します。

かんらん石 → 斜方輝石、単斜輝石 → 普通角閃石 → 黒雲母

色の付いていない鉱物 (無色鉱物) では、一般に次の順です。

斜長石 → 石英 → カリ長石

   このため、例えば高温のマグマが噴出してできた玄武岩と、それよりは低温のマグマからできた流紋岩では含まれる結晶 (鉱物の種類) が異なるのです。下の図にその一例を示します。

図:鉱物の温度変化と含まれる結晶の例
マグマから晶出する鉱物の温度変化と、岩石に含まれる鉱物の違いを示した例。
なお、ひん岩、石英斑岩は今後は使わないことになっています。

   サイズがほぼ同じで、イオンの電荷も同じ元素の場合、一種類の結晶の中でもお互いに置き換わることがあります。これは固溶体と呼ばれ、置き換わる割合は主に温度によって決まっています。

3) アルカリ岩と非アルカリ岩

   上に挙げたほとんどの鉱物はOとSiを含みます。ところが、何らかの理由でSiに乏しいマグマが存在することが知られています。このようなマグマはSiの不足のため、温度が下がっても斜方輝石や斜長石の結晶をつくることができません。代わりにSi含有量の少ない別の鉱物 (ネフェリンなど) をつくります。このようなSiに乏しいマグマからできる岩石の多くは、相対的にアルカリ (KやNa) を多く含んでいるため、アルカリ岩に区分されます。普通にSiを含むマグマからできる岩石の多くは、非アルカリ岩に区分されます。

堆積岩のでき方

1) 粒子の運搬と堆積

   堆積岩のもととなるのは、一般には砂や泥などの砕屑粒子です。これら砕屑粒子の起源は、特に標高の高い山岳地域で多く生産・供給されます。

   よく地球は水の惑星と言われますが、砕屑粒子の多くも水によって運ばれます。河川の運搬できる砕屑粒子のサイズは、流れの強さで決まります。山岳地域の速い流れは礫や砂を十分運べますし、平地の緩やかな流れは通常は細粒な砂や泥しか運べません。このため、供給源からの距離と堆積物中の粒子のサイズにははっきりした関係があります。近い山麓にできる扇状地の堆積物は粗粒な礫や砂などからなり、河川や海岸では砂や泥の割合が増え、大陸棚から深海平坦面にかけて更に細粒な泥の量が多くなります。

図:粒子の運搬と堆積

2) タービダイト

   日本のように雨の多い地域では年に数回程度、洪水が発生します。洪水のときにできるような濁った、すなわち土砂を多量に含んだ流れを混濁流 (乱泥流) と呼び、普通の流れよりも大きなエネルギーを持っています。これによって一度堆積した粒子も再び巻き上げられ、川から海へ、更に浅い海から深海へと運ばれます。そして混濁流から堆積した堆積物を タービダイト と呼びます。混濁流は土砂を巻き上げ、細粒な粒子ほどゆっくり沈むために、タービダイトは普通下部ほど粗粒、上部ほど細粒になります。

図:タービダイト   図:タービダイト

   タービダイトが海溝に達すると、その先は比高数1000mの登り斜面になっているため、運ばれた堆積物は大洋底側へはほとんど届かず、海溝に沿って流れるだけとなります。こうして、陸からの堆積物は海溝を埋め続けることになります。

3) 付加体

   タービダイトによって海溝に運ばれた堆積物がたまり続ければ、海溝は埋め尽くされてしまうように思えますが、実際にはそうなっていません。それは、海洋プレートの沈み込みに伴い、堆積物も引きずり込まれているためです。その一部はマントルまで沈み込んで行きますが、一部は大陸プレート側に押しつけられて残ります。また、海洋プレートには深海堆積物や海山も載っていますが、これらの一部も沈み込むときに大陸プレート側に押しつけられ、はぎ取られてしまいます。このような現象を付加作用といい、はぎ取られ、大陸プレート側に残った地質体を付加体といいます。

図:付加体

   付加体を構成する岩石は付加コンプレックスと呼ばれ、タービダイトで海溝に堆積した泥岩や砂岩、海洋プレートが海溝まで到達する間にたまった遠洋性の深海堆積物、そして海嶺で海洋プレートをつくった玄武岩などからなります。海洋プレート上に海山があれば、海山を構成する玄武岩やその上に形成されたサンゴ礁の石灰岩なども含まれます。これらのうち、海溝に直接たまった堆積物を原地性、プレートで運ばれてきた海山や石灰岩を異地性と呼んで区別します。現地性の堆積物を付加コンプレックスの基質、異地性の岩石を異地性岩体またはブロックと呼ぶこともあります。

   ただし、付加体の岩石は一度形成された後に大陸プレートと海洋プレートの間で大きな圧力を受けています。このため、普通の地層と違って連続性が悪く、一般に強く変形しています。このような産状の地層を メランジュ または 混在岩 と呼びます。メランジュの成因には、海溝斜面の地すべりや土石流など、もともとさまざまな岩石が混合していた場合と、付加作用の過程で引き延ばされたりちぎれたりして混合した場合が考えられます。

変成岩のでき方

1) 変質作用、続成作用と変成作用

   変成作用とよく似た現象に変質作用や続成作用があります。これらは主に温度条件や関係する水の種類と影響が異なるのですが、境界を厳密に区分することはできません。以下に、岩石の性質が変化する主な作用の特徴をまとめました。

作用起こる場所温度液体の存在備考
 
 変


風化 地表及び地殻表層 ほぼ常温 なし、または地表水及び地下水 続成と反対に固結物質がバラバラになる作用。
続成 地殻浅所 約200℃以下 温泉水〜低温の熱水 固結していない物質が固結する作用(石化作用)
熱水変質 地殻浅所 約200℃以下 温泉水〜高温の熱水 流体の影響で岩石の組成が変化する
変成 通常は地殻深部 約200℃以上 なし、または温泉水・熱水  

2) 温度圧力条件〜低圧型、中圧型、高圧型

   変成作用でどのような変成岩が形成されるかを決めるのは、一般には温度と圧力の条件です。隕石の衝突のような特殊な例を除いて、通常は地下深部ほど温度も圧力も大きくなりますが、地球上各地での観測から地球上に実現される温度と圧力の範囲はおおよそ分かっています。例えばマグマが存在する場所では圧力に比べて相対的に温度が高く、反対に大陸と大陸が衝突しているような場所では温度よりも圧力の影響が大きくなっています。広域変成岩は地下深くの温度・圧力がともに高い場所、接触変成岩はマグマの発生している場所、動力変成岩は断層の発達している場所で形成されると考えられます。

   下の図は、現在の日本列島のような沈み込み帯で、変成岩が形成される可能性のある場所を示したものです。時代と共にマグマの発生している場所や断層の位置は変化することがありますが、反対に変成岩の分布とその年代から、過去のマグマの発生場所や断層の位置を知ることもできます。

図:変成岩の形成されうる場所。
変成岩の形成されうる場所。

   変成岩には変成作用で新たに晶出した鉱物がしばしば含まれています。ある温度・圧力で生成される鉱物の種類は、これまでに詳しく調べられてきました。したがって、ある変成岩がどんな鉱物の組み合わせからできているか分かれば、その岩石がどのくらいの温度・圧力のもとで形成されたかもを知ることができるようになりました。

   広域変成作用では、このような温度・圧力関係の種類により、低圧型、中圧型、高圧型、超高圧型という区分が用いられます。これらは上の図のように変成岩が地球上のどのような環境でできたものかを推定するのに役立ちます。

   ただし、動力変成岩の場合は、断層活動などにより一時的に岩石の温度・圧力が上昇するものの、通常はすぐにもとの温度・圧力にもどってしまいます。したがって、新たな鉱物が生成する時間がないため、その温度圧力条件はほとんどの場合、周辺の岩石の状態から推定されています。

図:広域変成作用