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世界遺産「屋久島」周辺の地質図刊行
   −屋久島の地質の全貌が明らかに−

斎藤  眞・小笠原正継・長森英明・下司信夫・駒澤正夫
独立行政法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター

研究情報

   世界遺産で知られる屋久島を含む20万分の1地質図幅「屋久島」が刊行されました。この地域には屋久島のほか、種子島南半部と近頃火山活動が活発な口永良部島が含まれます。

   世界遺産に登録された屋久島の地質は、最新の知見に基づき、これまでにない高精度で詳細に書かれ ており、4000万年間を越える屋久島の歴史や、山や川、滝などの美しい風景をかたちづくる地層・岩石の分布が、正確にわかるようになりました。この地質 図は、屋久島の自然の理解に大きく貢献します。

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斎藤  眞・小笠原正継・長森英明・下司信夫・駒澤正夫 (2007)
20万分の1地質図幅「屋久島」より

この地質図は、国土地理院発行の20万分の1地勢図「屋久島」及び、海上保安庁大陸棚の海の基本図 (20万分の1海底地形図) 第6353号屋久島付近を複製して作成したもの (国土地理院、平17総使、第415号) (海上保安庁許可第182537号) の一部である。

20万分の1地質図幅「屋久島」は実費販売中

屋久島の地質の概要

   屋久島の中心部に赤く塗られている部分は屋久島花崗岩と呼ばれる花崗岩で、1600−1500万年前に地下深くにあったマグマだまりの化石です。大きな正長石を含むのが特徴です。屋久島の中央部にそびえる山々は、すべてこの花崗岩でできています。

   この周囲にある青色や黄色でぬられた帯状の地層は4000万年ほど前にできた、付加体*1と呼ばれる地層で、黄色は砂岩、青色は泥岩です。東部の田代海岸にはきれいな枕状溶岩も見られます。屋久島花崗岩の熱で焼かれ硬くなっています(赤点部分)。このため屋久島の周囲は海に切れ落ちる断崖が多いのです。

   屋久島花崗岩の上の地形の緩いところを、北側の海中にある鬼界カルデラから約7300年前に噴出した大規模火砕流堆積物が覆っています (オレンジ色)。この時に、屋久島は焼け野原になったと考えられ、樹齢数千年と考えられている屋久杉は、この火砕流襲来直後に成長したものかもしれません。

   * 1 付加体とは、海洋プレートの沈み込みによって、海洋プレート上の様々な年代の岩石が大陸プレートの縁にくっついてできる極めて複雑な地層です (解説は地質図のページへ)。

問い合わせ先

不在のこともありますので、お問い合わせは地質相談所にお願い致します。

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モッチョム岳 (花崗岩) とトローキの滝 (付加体の岩石 (砂岩・泥岩) )

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田代海岸の枕状溶岩 (付加体の岩石 : 玄武岩)

屋久島の地質−世界遺産の島、四千万年の歴史− (発刊5月10日地質の日記念) NEW: 地質ニュース 2008.7月号 no.647にこの内容に加筆して掲載しています。

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