モーリシャス大型貨物船座礁事故ASTER緊急観測

2020年9月14日:開設

 大型貨物船「わかしお」が、現地時間2020年7月25日夜にモーリシャス南東部沖付近で座礁し、生態系への影響が懸念されています。日本政府は、現地に国際緊急援助隊を派遣し、生態系への影響の把握などに関する支援活動を行いました。国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地質情報研究部門では地球観測衛星TERRAに搭載された経済産業省開発の光学センサーASTERで観測された衛星データを処理・配信していますが、緊急援助隊チームにASTER画像を提供いたしました。
 現在は、船体及び海上からは重油がほぼ回収されており、マングローブ林における重油回収が課題となっているものの、サンゴは生存しており、重油によるサンゴへの影響は現時点ではほとんど見られてはいません。しかし、新たな問題として広範囲な濁りの発生が確認され、複数の衛星画像から、濁りが座礁船によってもたらされていることが明らかになりました。この濁りはサンゴの呼吸や光合成へ影響を与え、長期的にはサンゴが死んでしまう可能性も指摘されており、長期的なモニタリングが必要と考えられています。そのため、ASTERサイエンスチームおよび一般財団法人 宇宙システム開発利用推進機構の協力のもとで、今後ASTERによる観測を長期的に継続して行いモーリシャス政府側に提供することといたしました。

モーリシャス大型貨物船座礁事故ASTER緊急観測

 図:複数衛星センサの画像による座礁船周囲の濁りの把握
(左図(a)は現地時間2020年8月14日11時9分に米国Landsat-8号OLIセンサが捉えた
座礁船付近のパンシャープン画像(1画素15m解像度に処理)、
右図(b)は現地時間2020年8月22日11時26分ASTERセンサが捉えた
座礁船付近の天然色処理済み画像(1画素15m解像度))