活断層・古地震研究報告  第1号 トップへ

千島海溝沿岸域における津波堆積物の研究

   釧路市の春採湖など、道東地域の湖や湿原 (第1図) において、氷上ボーリングなどを行い、津波によって形成されたと考えられる堆積物 (津波イベント堆積物 ; 第2図) の同定・記載・対比を行った。その結果、最近の約9千年間に堆積した地層中に20層の津波イベント堆積物が見出された (第3図)。津波堆積物を形成した津波の繰り返し間隔は400〜500年程度と見積もられ、典型的な海溝型地震よりも長いことが分かった。また、17世紀の津波の痕跡と考えられるTs3堆積物や13世紀の津波の痕跡と考えられるTs4堆積物の分布は、1843年の北海道東方沖地震 (M8.4) の際の津波堆積物 (Ts2) の分布よりも広いことが確かめられた (第4図)。13世紀と17世紀の地震では、海岸の隆起を伴った可能性が指摘されており、巨大な津波と沿岸部の地殻変動を伴ったこれらの地震の実像解明が今後の課題である。

文献


第1図

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千島海溝のテクトニクス、海溝型地震の余震域と調査地域位置図


第2図

春採湖コアに認められる代表的な津波イベント堆積物の産状および5つの堆積ユニット区分


第3図

過去9000年間における千島海溝沿岸域における各津波イベントの年代と再来間隔および歴史地震津波との対応


第4図

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Ts2,Ts3およびTs4の遡上距離の広域比較